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中小企業も注目 「カーボンニュートラル」解説

掲載日:2022/01/05

中小企業も注目 「カーボンニュートラル」解説

2015年にパリ協定が採択されて以降、世界的に「カーボンニュートラル」という考え方が注目されるようになった。日本では2050年までにカーボンニュートラルと脱炭素社会の実現を目指すと政府が宣言しており、中小企業もこれを意識して業務に取り組むことによって、地球温暖化防止対策に貢献しつつ、さまざまな経済的メリットを享受できるだろう。

カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとは、地球温暖化を防止するために、温室効果ガスの排出を実質的にゼロにする取り組みを指す言葉だ。具体的には、二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスを、人為的に排出と吸収を同じ量に調整することによって「実質排出量ゼロ」の状態を作り出す。

日本では、2050年までにカーボンニュートラルと脱炭素社会の実現を目指すと政府が宣言している。

カーボンニュートラルに取り組むワケ

今日、温暖化が世界中で解決に取り組むべき課題であることはあらためて言うまでもない。温室効果ガスの排出を抑制しなければ温暖化が進み、人々や生態系に深刻で取り返しのつかない影響を与える可能性が高まる。

また、短期的な視点においても温暖化がもたらす悪影響は計り知れない。例えば、近年は国内外でさまざまな気象災害が発生しているが、これらの原因は温暖化による世界的な気候変動にあると言われている。災害は時に経済への大打撃をもたらす場合もあり、安定したビジネスを進めるためにも一人一人が温暖化について意識を変えることが必要だ。

2015年に採択された気候変動に関する国際的枠組みの「パリ協会」でも、温暖化対策が重要視されている。この協定では「産業革命以前と比較して、平均気温上昇を1.5℃に抑える」という目標が設定されており、日本を含む187の国と地域が批准した。

しかし、産業革命以前に比べて2017年の世界平均気温はすでに約1℃上昇しており、今後も上がり続けることが予測されている。そこで、この厳しい状況の中でパリ協定の目標を実現するべく、2050年までにカーボンニュートラルを実現することが求められることになった。

カーボンニュートラル実現に向けて抱えている主な課題

現在、日本では石油や石炭、液化天然ガス(LNG)といったCO2排出量の多い化石燃料によって85%以上のエネルギーがまかなわれている。そのため、現状のエネルギー供給構成を維持したままでは、カーボンニュートラルを実現することは困難だ。

※四捨五入の関係で、合計が100%にならない場合がある
※再エネなど(水力除く地熱、風力、太陽光など)は未活用エネルギーを含む
資源エネルギー庁「日本のエネルギー2020」より抜粋

有効な対策の一つとして、国単位で再生可能エネルギーへ転換するという方法があるものの、国内では移行に向けた十分な体制が整っていない状態である。

また、日本の一大産業である鉄鋼業は製造時に大量の石炭を消費するため、二酸化炭素排出が膨大な量になるという問題もある。最近は石炭に代わるエネルギーとして水素を使用するべく研究が始まっているものの、実用化までには長い時間がかかるとされている。

日本での戦略
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

前述のように、2050年にカーボンニュートラルを実現することは決して容易ではない。そこで、日本政府は2020年に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定した。これは、エネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションの創出などを促すために、経済面における今後の見通しをまとめたものである。

「グリーン成長戦略」では、産業として今後の成長が期待され、なおかつ温室効果ガスの排出を削減する観点からも取り組みが不可欠と考えられる分野として、14の重要分野が設定された。この中では、発電や次世代燃料の開発といったエネルギー関連の分野はもちろん、自動車やライフスタイルといった生活に密接した分野まで、カーボンニュートラル実現のために取り組める行動の指針が記載されている。

実現に向けた企業の動き

近年は民間企業も、太陽光発電の活用や電気自動車の導入、電力使用量の可視化などといった脱炭素化に積極的に取り組んでおり、温室効果ガスなどの削減に力を入れる企業が増えている。また、サプライチェーン全体での脱炭素化を図るなど、横のつながりを生かしてカーボンニュートラルを目指す企業が増加した。これらの活動は、温暖化防止効果はもちろん、企業イメージの向上などの面でも大きなメリットがある。

もちろん、同様の活動は、中小企業にとってもメリットがある。例えば、水道光熱費や燃料費などを見直して不要な消費を抑えることは、エネルギーの無駄遣いを減らして温室効果ガス削減になるだけではなく、企業のコスト削減にもつながる。こういった取り組みに積極的な企業は社員のモチベーションアップを呼び起こし、優秀な人材獲得に結びつく可能性もあるだろう。

また、国や自治体がカーボンニュートラルに関わる多様な補助金制度を設けている。省エネ設備や再生可能エネルギーを活用することに対しての補助金なども存在するため、業務内容に適合する場合は積極的に取り入れたい。

カーボンニュートラルの知名度は広がり続けており、今後も取り組みが加速することが予測される。これからのビジネスのためにも、負担のかからないところから取り組みを始めていきたい。