製造業

半導体不足はいつ解消される?

掲載日:2022/01/05

半導体不足はいつ解消される?

世界半導体市場統計(WSTS)によると、世界の半導体市場は2020年以降拡大を続け、2021年は出荷価格ベースで前年比19.7%の成長が見込まれている。このように過去最高の水準となる数字が予測される一方で、現在世界中で半導体の生産が追いついていない状態だ。本記事では、半導体不足がなぜ発生し、どのような解決の糸口があるのかについて説明する。

半導体不足の理由とは?

半導体が不足する理由は、主に以下の2点である。

需要の急増

2020年以降のコロナ禍により、デジタル化やそれに伴うインフラ整備が世界的に加速した。テレワークや自動化が注目を増した結果、PCやスマートフォン、サーバーといった機器の需要も大幅に増大したため、これらに使用される半導体の生産が追いつかなくなったのである。また、「巣ごもり需要」によるゲーム機や家電の売り上げが増した影響も大きい。

さらに近年の自動車は、エンジン制御やパワーステアリングなどを電子的にコントロールするシステムを取り入れるようになった。このようなハイテク自動車は一台あたり数十個程度の半導体を搭載するため、業界内でも特に半導体の数を必要とする分野として大きな存在感を発揮するようになった。

供給体制のひっ迫

近年、半導体メーカー各社の工場で災害が頻発しており、それが製造数減少の原因となっている。特に、2021年には国内大手半導体メーカーの工場で火災が発生。国内の流通に大打撃を与えた。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大予防措置として稼働を停止した工場も多く、思うように半導体を製造できないケースが増加していた。

なお、半導体の製造には大量の水資源が必要である。しかし、半導体の製造が盛んな台湾では2020年に干ばつによる水不足が深刻化。工場の稼働停止が相次ぎ、これによる悪影響は極めて大きかった。

これらの原因に加え、米中の政治的関係も半導体製造に大きな影響を与えている。これは、アメリカが2019年よりエンティティ(制裁対象)リストに登録した国外の企業や団体に対し製品の輸出を制限しており、中国の大手IT企業などがこの対象となったためだ。中国ではこれまでアメリカ製の半導体製造装置が多数使われていたものの、リスト登録以降はこれを輸入できなくなったため、代わりに台湾に製造を注文する動きが加速した。しかし、前述のとおり台湾では水不足による製造数低下が発生していたため、当初の計画どおりに半導体を供給できないという事態を招くことになったのだ。

半導体不足の現状

帝国データバンクが2021年に発表したアンケ―ト調査によると、上場企業115社が半導体供給不足によって生産や商品・サービス供給面でマイナスの影響を受けたという。このうち、「売上高や利益などの業績面でマイナスの影響があった」「今後マイナスの影響が見込まれる」と回答した企業は60社に達しており、半導体不足が国内の広い分野に深刻なダメージを発生させていることが分かる。

同調査によると、半導体不足が直接の原因となって生産休止や減産を強いられたケースが22社。業種別では自動車関連産業での影響が目立った。この影響か、各自動車メーカーが一斉に半導体の確保に動いているため、深刻な不足は今後もなかなか解消されないという予想が立てられている。

半導体不足解消の見通し

一方で、ガートナーが2021年に発表した予測によると、半導体不足は2022年に解消の見込みが立つという。これは、ここ数年で操業に支障をきたしていた半導体メーカーの工場が2021年末より順次従来の状態に戻り、安定した生産量を確保するめどが立ったためである。ガートナー社の予測では、まず自動車分野から半導体不足が解消し、その後は2023年頃から他分野でも解消される可能性が高いようだ。

半導体市場の規模は、2025年までに6492億ドルへ膨れ上がると予測されている。需要が高まる一方で、製造が追いつかない限りはこの予測のような市場規模を実現するのは困難だろう。各メーカーがどのような製造力回復の手を打つのか注視しつつ、半導体不足解消の際にユーザーからどんな製品・サービスを求められるのかを意識し、ビジネスの計画を練りたいものである。