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システム災害復旧の新常識 「クラウドDR」とは?

掲載日:2022/01/11

システム災害復旧の新常識 「クラウドDR」とは?

企業にとって、システムにトラブルが生じてビジネスがストップするという事態はもちろん望ましくない。特にシステム停止によってデータが破損した場合には、早急な復旧が必要になる。しかし、コストを理由に十分なデータ復旧体制を整えていない企業が多いのが現状だろう。そんな企業におすすめしたいのが「クラウドDR」というソリューションだ。

DRとは?

DR(Disaster Recovery)とは、地震や風水害といった自然災害をはじめ、火災やテロ、サイバー攻撃などで異常が生じた際のシステム復旧を指す言葉。転じて、システム復旧を目指すための準備や設備全般をDRと呼ぶこともある。昨今、さまざまな業界でBCP(事業継続計画)の制定が求められているが、その中でもシステムを重視した復旧対策として、特に注目を集めているのだ。

システムの停止は、企業にとって大きな機会損失の原因となる。DRの目的は、その損失を最小限に抑えることだ。

DR対策のポイント

DR対策において、破損したデータを「時間」の観点からどのように復旧させるかを定めることが重要である。具体的に注意すべき内容は、以下のとおりだ。

RPO(Recovery Point Objective)とは、目標復旧地点という意味の言葉である。これは、災害などによってデータが破損した場合、どの地点まで戻ってデータを復旧しなければならないかを示す指標となる。RPOは早いに越したことはないが、ビジネスの種類によって、ある程度ゆとりをもって設定しても問題ない。

例えば、ECサイトのように24時間注文を受け付けるサービスでシステムが停止した場合、RPOは0秒であることが望ましい。これは、システム停止によって破損したデータの中に新規の注文記録が含まれている可能性があるからだ。この場合、システムが停止した瞬間までに記録したデータを復旧し、注文の有無を確認しなくてはいけない。

対して、例えば「毎日1回気温を自動測定するサービス」でシステムが停止した場合は、RPOは直近の測定時まででよいことになる。これは、直近の気温の測定以降のデータはサービス内容に関係なく、復旧する必要がないからだ。

RTO

RTO(Recovery Time Objective)とは目標復旧時間を意味する。これは、破損したデータをいつまでに復旧するのかを示す指標だ。こちらももちろん早い方が良いのだが、求められる時間はビジネスの種類によって異なる。

前述した24時間受付のECサイトの場合、早くシステムを復旧させなければそれだけ注文を受け付けられない期間が長引くので、RTOは限りなく0秒に近いことが望ましい。対して「毎日1回気温を自動測定するサービス」の場合は、次の測定を問題なくこなせればいいので、求められるRTOは「システムが停止した翌日の測定時まで」である。

復旧のスピードおよびコスト

RPOとRTOをできるだけ短い期間に設定し、実現するためには、データを複数の箇所で記録するのが効果的である。例えば、企業で取り扱うデータを社屋内のデータセンターAで記録しつつ、遠隔地にバックアップとして設置したデータセンターBでも同時並行で記録するという対策が考えられる。この場合、Aが災害などで喪失しても、Bのデータへすぐさま切り替えることによってRPOとRTO両方が限りなく早いスピードで復旧可能だ。

しかし、このような対策で気になるのがコストの問題である。遠隔地にデータセンターを作るとしても、建物の建設や維持などさまざまな費用が発生することは望ましくない。

クラウドDRのメリット

スピードとコストの問題を解決しつつDRを実現したい場合におすすめなのが、クラウドソリューションの活用だ。

スピード

オンプレミス環境でDRを実行する場合、機器の物理的な制約がスピードの妨げになる可能性がある。例えば、データを蓄積するサーバーが破損した場合、新たに機器を購入してシステムを再構築する作業が必要となり、求めるRTOよりも復旧までに時間がかかる。しかし、クラウド環境であれば必要なリソースをすぐに確保可能である場合が多い。リソース追加までのスピードアップにつながる。

コスト

オンプレミス環境でDRを実現する場合、機器などの購入や管理・運用を全て自社で行わなくてはならない。しかしクラウドであれば、ハードウェアもネットワークもクラウド事業者が管理する。その分、人的リソースやコストが節約できるのだ。

さらに、クラウドサービスのサーバーは一般的に専用のデータセンターに設置されている。多くのデータセンターは災害を想定した構造になっており、地震や火災に強い設備が整っていることが特長だ。しかし、自社でこのように特殊な設備をそろえることはノウハウ面でもコスト面でも困難である。対してクラウドサービスのサーバー用データセンターは複数の企業で利用することを前提としているため、当然のことながら1社が自社用に作るよりも技術的に優れているし、各社イニシャルコストを抑えて契約できるのだ。

『Acronis Disaster Recovery』ソリューションは、コスト効率の高いクラウドDRソリューションだ。これによってシステムの再稼働が簡単かつ効率的に実現し、高価なDRソリューションへの投資が必要なくなる。さらにソリューションは複数形態あり、企業のニーズに沿って提案可能だ。

また『Arcserve UDP Cloud Direct』は、オンプレミス環境上にバックアップ環境を持たずに、直接Arcserveのクラウドにバックアップを行ったり、オンプレミス障害時にはクラウド内でサーバーとして起動したりして、DRを提供するクラウドサービスだ。ネットワーク障害が起きても、自動リトライして未送信分の転送を再開でき、データ暗号化による転送・保存による安心感もある。(特集記事はこちら)

企業に合ったソリューションの選定が求められる「クラウドDR」提案の際に、これらの情報をぜひお役立ていただきたい。