マーケティング
Cookieレス時代のキーワード
「データクリーンルーム」
掲載日:2022/01/11
これまで、Webマーケティングにおいて広く、そして中心的に活用されてきた「サードパーティーCookie」。しかし世界的にCookieレス化が進み、これまでのような活用が難しくなっている。そんな中、注目を集めているのが「データクリーンルーム」というソリューションだ。本記事ではCookieレス、そしてデータクリーンルームについて解説する。
Cookieとは?
そもそもCookieとは、Webサイトを閲覧する際、ユーザーのブラウザに蓄積される情報のことを指す言葉だ。ECサイトやSNSといったさまざまなWebサービスは、このCookieを基に利用者について判別している。
マーケティングのポイントだった「サードパーティーCookie」
また、Cookieの一種である「サードパーティーCookie」は広告配信のコンバージョン計測やターゲッティングなどに活用されている。サードパーティーCookieは複数のドメインをまたいで利用者の情報を判別することにも流用できるため、リサーチ幅が広く信頼性の高い情報として、多くの企業がマーケティング施策に活用している。また、利用者側としてもさまざまなWebサービスが自動的に自身の求める情報やサービスを提示してくれるようになるため、インターネットの利便性が向上するというメリットがある。
Cookieレス化の影響
しかし現在は、サードパーティーCookieの活用を制限する「Cookieレス」が業界の主流になりつつある。これは、Cookieが便利な存在である一方で、Webサービスの運営側が過剰に利用者の行動をトラッキングし、必要以上に煩雑な広告を提示する原因になるためだ。またCookieを収集すると、Webサービスの運営側は、利用者が把握を望まない個人情報まで特定できてしまう(または、特定のヒントになってしまう)可能性がある。
そのため近年は、Cookieを個人情報の一種として保護・規制することを希望する声が増加。日本でも個人情報を保護する動きが強まっており、第三者がCookieを利用することに対してさまざまな規制がかけられるようになった。
Cookieレス化が進むことにより、個人情報の保護は強化される。しかし、Webサービスの運営者・利用者共に、これまでのようなメリットが享受しづらくなってしまうのも事実だ。特に、サードパーティーCookieをマーケティングの軸に据えていたWeb広告業界にとっては大きな痛手であり、これに代わる方法を模索する必要がある。
データクリーンルームとは?
Cookieレス化が進む昨今において注目を集めているのが「データクリーンルーム」だ。データクリーンルームはサードパーティーCookieのように複数のドメインで収集した情報を統合して分析できるうえに、Webサービス利用者の特定を防げる。そのためCookieレス化以降のWebにおいて、広く使われることが期待されているのだ。
データクリーンルームが個人情報をどのように取り扱うのか
データクリーンルームでは、データは匿名化・統計化された形で扱われる。そのため、企業はユーザーのプライバシーに配慮しつつ、効率的なマーケティング活動を実施可能だ。また、データクリーンルームはデータ統合/分析のスキルセットを保有した任意のデータサイエンティストのみがアクセスできるよう制限をかけられるため、不審な人物による個人情報の不正利用目的でのデータアクセスを防げる。
さらに、データクリーンルームで取り扱うデータについては、Webサービスの利用者へ行動をトラッキングしても問題ないか確認をしたうえで収集することが一般的だ。そのため、Cookieレス化以前のように、利用者が知らない間に望まない情報を収集されることが、極力発生しないようになっている。
データクリーンルーム活用の具体例
例えば、Aさんという人が、とあるECサイトで食パンを購入したとする。この場合、ECサイトはCookieの購入履歴を基にAさんはパンが好きな顧客と分析し、リスティング広告などの運用型広告にパンの購入をすすめる内容を優先して表示することになるだろう。
このように、Cookieレス化以前は利用者に提示する情報を最適化する際、個人情報のひも付け基盤としてCookieが利用されていた。そのため、Aさんは望んでもいないにもかかわらずさまざまなWebサービスで延々とパンの広告を見せられることになっていた。また、ECサイトのデータを不正に利用する人が現れた場合、このひも付け関係をさえぎることで、Aさんの「パン好き」という情報や、住所や電話番号などの公にしたくない情報を把握されてしまうという事態も起こる可能性があったのだ。
しかし、データクリーンルームを活用した場合、Webサービスの運用側は「パンが好きなAさんという人がいて、この人にはさまざまなパンをおすすめするのが望ましい」という情報を把握しないまま、Aさんに最適なパンの広告を表示できる。また、Aさんは事前に購入履歴をWebサービスに活用されることを承知しているので、納得してパンの広告を見ることになるだろう。つまり、ユーザーのプライバシーを保護して納得をしてもらいつつ、Webサービスの運用側としては従来の「サードパーティーCookie」と同等以上の広告配信や効果測定が可能になるということだ。
2021年8月にネオマーケティングが実施したマーケティング担当者へのアンケートによると、Cookieレスへの対策を行っている企業は33.6%にすぎない。すなわち、大多数の企業はこれからデータクリーンルームを含むソリューションを導入して、Cookieレス時代に備え始めるということだ。これからのITベンダーにとって、この大多数の企業が求める製品やサービスを適切に提供できるかどうかがビジネスの重要なポイントになりそうだ。