組織改革

企業の未来を変えるCX
(コーポレート・トランスフォーメーション)

掲載日:2022/01/18

企業の未来を変えるCX(コーポレート・トランスフォーメーション)

最近、グローバル市場で日本の企業が苦戦するというニュースをよく目にする。その原因は、企業の改革が進んでいないことにあるのかもしれない。そのような企業が将来的にビジネス界で生き残るために取り組むべきは「CX」。今回は、注目の高まる「CX」という概念について説明する。

CXとは?

2020年から続くコロナ禍。多くの企業がこれまでの働き方ではコロナ禍における課題に対処できないことに気が付き、業務の電子化やリモートワークなどを推し進めている。一方で、部分的な変革のみならず、企業全体が根本から業務の形を作り変えることが必要だと語る声も増えてきた。

そんな近年、CX(コーポレート・トランスフォーメーション)という言葉に注目が集まってきている。これは、経株式会社経営共創基盤(IGPI)グループ会長の冨山 和彦氏が提唱し、話題となった概念だ。冨山氏によると現代の企業は多くの課題を抱えており、これを解決しないことには未来のビジネスで生き残ることが困難になるという。

CXで変革すべきポイント

CXによって目指すべき目標は、日本的経営モデルからの脱却だ。

高度経済成長以降、日本では大量生産・大量消費を大前提として経済活動が行われていた。しかし、こういった大前提は国全体の経済が成長する環境であったからこそ成り立つものであり、現代の日本において同様のアプローチで成功することは難しくなっている。また、グローバル化によりビジネスに関わる人々は過去とは比較にならないほど増加し、デジタル化により業務の形態はさまざまに変化している。

このように社会情勢が変化したことにより、現代において旧来の日本的経営モデルが選ぶべき最適なものとは言えない。それでは、CXにおいて具体的に変革すべき問題とはどのようなものだろうか。注目すべきは以下の二つである。

採用・雇用形態

近年は多様な働き方が求められるようになったものの、いまだに多くの企業では新卒一括採用によって大多数の人的リソースを確保している。そして、一括採用によって入社した社員は年功序列の人事モデルで登用されていき、定年までの約40年間を一つの企業で勤め上げるという終身雇用制度が日本社会の根強いベーシックスタイルだ。このような形式の企業においては、社員は自身の雇用を守るため、あるいは縦割りの組織構造のため、トップが抜本的な変革を起こすことは難しい。

経営戦略の変化

近年、海外の企業が事業のライバルとして立ちはだかり、ビジネスに苦戦する国内企業が多い。そこで求められるのが「既存事業の深化」と「新たな成長機会の探索」という二つの変化である。

「既存事業の深化」とは、これまで経営において主力となっていた分野をさらに強化し、国内外の同業企業との競争を勝ち抜けるよう成長することを指す。一方で「新たな成長機会の探索」とは、イノベーションを活用してこれまでとは異なる分野での主力分野を見つけることだ。

CXにおいては、「深化」よりも「探索」の方が困難だといわれている。「探索」はこれまで培ってきたものとは異なる分野での活動が必要となるため、人的にも時間的にもコストの見積もりが難しいことが理由だ。また、未知の領域に挑むために不確実性や失敗率が高く、対応が及び腰になってしまいがちという特徴もある。

しかし、冨山氏は、困難であっても両利きの経営を成立させることこそが重要だと指摘する。これは、新しいサービスの出現によってどの業界も大きく力関係が崩れるという事態が発生したためだ。今後も新しいサービスの影響により、既存のビジネスを続けるだけでは将来的な生存を担保できない可能性が高い。従って、今後の企業には、まず「深化」を進めて余裕を育んだうえで「探索」にリソースを割き、両方の分野で得た知をバランス良く統合する経営戦略が求められるという。

CX実現のための手段「DX」

「深化」を進めて余裕を育むにあたり、欠かせないのがDX(デジタル・トランスフォーメーション)の存在だ。企業のデジタル化による業務効率改善や多様な働き方の促進は、リソース確保の際に大きな力を持つ。

例えば企業が自社サイトを更新する際、担当社員が本社に出勤して手作業で情報を書き換えるというケースがあったとしよう。この場合、サイトのコンテンツをクラウドサービス上で管理できるCMSを導入することにより、社員は自宅や出張先からも簡単に同様の業務をこなすことができる。

このように、デジタル化によって人的リソースを活用する自由度が広がったり、担当社員を減らしても問題なく業務を進められたり、といったメリットが期待できる。このようなメリットによって生じた余力を使って「新たな成長機会を探索」し、企業の改革を進めることも可能だ。

コロナ禍以降の企業が避けては通れない道として存在するCXと、それを推進するためのDX。効率的に推し進めるためには、ITベンダーの製品やサービスの提供が欠かせない。CXの概念が浸透するのに先駆け、適切な紹介ができるよう、準備をしておきたい。