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デジタル社会実現に向けた羅針盤
「デジタル重点計画」まとめ

掲載日:2022/02/01

デジタル社会実現に向けた羅針盤「デジタル重点計画」まとめ

政府がデジタル社会の実現に向けて策定した「デジタル重点計画」。2021年12月に閣議決定されたこの計画だが、発表時、マイナンバーカードのさらなる活用や産業全体のDX推進などの具体的な目標が注目を集めた。では、これらの目標がどのような理念や方針に裏付けられて推進されることになったのか。ビジネスにおいての注目点も交えて説明する。

デジタル社会実現を目指す日本

以前より、日本のデジタル化が他国と比較して大幅に遅れていることが指摘されてきた。コロナ禍によって生じたさまざまな問題は、デジタル化に対応できていない日本の現状を浮き彫りにしたと言えよう。そんな中、2021年9月にデジタル庁が新設されたのは記憶に新しい。官公庁をはじめとした国全体のデジタル化に向けたデジタル庁の設立は、大きく話題になった。

ただ、日本を一気にデジタル社会へ移行させるためには基本方針が重要になってくる。そこで2021年12月24日、政府はデジタル社会の実現に向けて「重点計画」を閣議決定したのだ。

重点計画の概要

実は、この重点計画が策定されるのは2回目だ。今回発表されたものは、2021年6月に閣議決定した重点計画をバージョンアップしたものである。

今回の計画の概要は「デジタル社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策等を定めるもの」とされており、デジタル庁をはじめ、各省庁の取り組みも含めて内容や工程表が明らかになった。直近の目標には、マイナンバーカードのさらなる活用や産業全体のDX推進といった、具体的な目標が掲げられている。

なお、計画の内容はこれで確定したわけではなく、今後の情勢の変化に応じて必要な施策の追加・見直しが行われ、随時バージョンアップされるようだ。

今回策定された重点計画では、今後日本が目指す社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」が掲げられている。この理念は「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」という言葉でも強調されており、年齢や居住地に関係なく利益を受けられる社会の実現が期待できる。

デジタル社会形成のための基本(10)原則

重点計画を実現する際の基本原則として掲げられているのが「デジタル社会形成のための基本(10)原則」だ。これは、2020年より進められていた「デジタル改革関連法案ワーキンググループ」の中で検討された、デジタル社会についての10の項目から望ましいアプローチを提案したものである。

この10原則の中では、「オープン・透明」「公平・倫理」「安全・安心」といったデータなどの取り扱い方法についての項目や、「浸透」「新たな価値の創造」「飛躍・国際貢献」といった将来的なビジョンについて触れた項目が含まれており、具体的なデジタル活用の方針を読み取れる。

ビジネスの観点から注目すべきは、「社会課題の解決」という項目だ。この項目では、「制度・ルール等の再構築」や「国・地方・民間の連携強化・コスト低減による、成長のための基盤整備」といった内容が設けられており、官民を問わず設備や環境の刷新を目指すという方針が分かる。ベンダーとしては新たな製品やサービスを紹介するチャンスとして、機会を見逃さないことが求められるだろう。

「迅速・柔軟」「包摂・多様性」といった2項目では、デジタルの活用による新たなニーズへの対応や多様な働き方への貢献も目標としている。コロナ禍において大きく社会の仕組みが変わり、以前とは異なる製品の需要が高まったことはご存じのとおりだ。これら2項目が重要視される未来でも、従来の形にとらわれない、さまざまな需要の創出が期待できる。こちらについても、ビジネスのチャンスとして見逃さないことが重要だ。

実現に向けた施策(デジタル原則)

また、重点計画においては、2021年12月22日のデジタル臨時行政調査会で定められた「デジタル原則」の内容も盛り込まれている。これはデジタル社会の実現に向けた構造改革のための原則で、官公庁がデジタル社会に最適化した構造に生まれ変わるに当たって、どのような方向性を目指せばよいのかをまとめたものである。

デジタル原則は「デジタル完結・自動化原則」「アジャイルガバナンス原則」「官民連携原則」「相互運用性確保原則」「共通基盤利用原則」の5項目からなる。いずれも、民間企業においてここ数年で多く取り入れられるようになったIT活用の方法を取り入れたと思われる内容だ。従って、民間企業との関係でこれらの内容についての経験を培ったベンダーであれば、官公庁向けにも同様に展開することにより、新たなビジネスの領域としての活用が期待できそうだ。

政府は、デジタル化はあくまでも手段であり、その目的はわが国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現だとしている。従って、国民に新たな問題や需要が発生した場合には、さらにデジタル化へのアプローチを増やしてくることだろう。IT企業のビジネスにも大きく関わるだろうデジタル社会の実現に向けて、政府の対応にも引き続き注目する必要がある。