セキュリティ

セキュリティテクノロジーでつくる、こらからのビジネス

掲載日:2022/02/08

2セキュリティテクノロジーでつくる、こらからのビジネス

ビジネスにおいて注意すべきポイントの一つに、情報漏えいがある。他社との積極的なコラボレーションを計画していても、情報漏えいを懸念して断念するケースが多数存在することは想像に難くない。しかし、このような課題を解決するテクノロジーに注目が集まっていることをご存じだろうか。本記事では、そんなセキュリティテクノロジーを紹介する。

近年のトレンド
「プライバシー強化コンピューテーション(PEC)」

IT業界では、米IT調査会社のガートナー社が発表する「テクノロジ・トレンド」の内容がよく話題になる。2022年のトレンドを予想した発表では「プライバシー強化コンピューテーション」というキーワードが注目を集めた。これは、使用中のデータの機密性を保持しつつ処理や分析を可能にするテクノロジーだ。

ガートナー社は、2025年までには大規模組織の60%がこのテクノロジーを活用すると予測している。データのさらなる活用と強固なセキュリティ環境の構築を両立することは世界的に求められる要素であり、今後さらにこのテクノロジーの注目度が増す可能性が高いといえるだろう。

「プライバシー強化コンピューテーション」の処理 秘密計算

「プライバシー強化コンピューテーション」の処理において話題に挙がるのが、秘密計算技術だ。秘密計算とは、データを暗号化したまま計算するプライバシー保護技術である。万が一データを盗み見られたとしても、あらかじめ暗号化されているため、情報の流出を防げるというメリットがある。

この技術を使うことで、これまでよりさらに情報漏えいに対するセキュリティレベルを向上できる。秘密計算技術は、これまでなかなか進まなかった企業間でのデータ流通・活用の促進にも貢献すると考えられており、同業他社や他業種とのコラボレーションで飛躍的に生産性の向上が期待できそうだ。

秘密計算の活用事例

秘密計算は、さまざまなシチュエーションで活用されている。

Cookieレスマーケティング

Cookieを利用したマーケティングは長らく一般的であったが、近年は個人情報保護の観点から、Cookieレスによるマーケティング施策が求められるようになった。

秘密計算の活用は、Cookieレスマーケティングにおいても有効だ。例えば、国内大手通信会社では、複数企業から顧客情報を暗号化したまま提供してもらい、秘密計算を活用して統括的なマーケティングデータとして分析する研究を行っている。暗号化した情報を利用するため、秘密計算を請け負う通信会社はもちろん、情報提供した企業も他社の情報を把握しない。しかし、分析結果は複数社のデータを基に算出されるために信頼性が高いのだ。

このように、サードパーティCookieを利用したマーケティングの代替物として秘密計算を活用して、個人情報を高いレベルで保護しながらも信頼性の高い分析データを得ることが可能だ。

セキュアオークション

秘密計算の技術を用いることにより、参加者同士がお互いの情報を開示せずに行う「セキュアオークション」の開催が可能になる。

セキュアオークションは、ほかの入札者に入札金額や入札者名などの情報を知られないまま参加できる。そのため、これまでは「オークションに参加していることや入札額が第三者に把握されることによって、自身の資金力などを推察されるのは業務上不都合だ」といった課題を抱えていた企業や個人も、オークションに難なく参加できるようになった。

暗号鍵の管理と認証

Web上で情報をやりとりする際には暗号通信が一般的だが、この場合に用いられるのが暗号化したデータを復元する「秘密鍵」だ。情報の受発信者は、秘密鍵の使用によって第三者の盗み見を防ぎつつ、スムーズなやりとりを実現している。しかし、秘密鍵を不正に入手された場合には第三者に情報が盗み見られてしまうため、リスクと表裏一体なのだ。

そこで、近年注目度を増しているのが、秘密鍵の保管に秘密計算を用いる方法である。秘密鍵自体にもあらかじめ暗号化を施すため、万が一流出してしまったとしても、秘密鍵を使って情報を盗み見ることはできない。さらに、情報の受信者にも秘密鍵を秘密計算で暗号化してから共有するため、適切に認証した者のみが情報を入手可能。セキュリティ向上が期待できる。

必要なのは、進化するセキュリティテクノロジーへの対応

リモートワークの浸透によって情報をやりとりする需要が増した一方、漏えいなどのセキュリティリスクも増加する傾向にある。そのため、セキュリティを高めつつスムーズなやりとりを実現するテクノロジーへの注目度は、今後も高まり続けるだろう。

今回紹介したテクノロジーが浸透して複数企業のコラボレーションが一般化すれば、ビジネスの内容が変わり、ベンダーに求められる需要も変化する。その際に最適な提案ができるよう、周到な準備を心がけたい。