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新たなデータ管理「データファブリック」

掲載日:2022/02/22

新たなデータ管理「データファブリック」

データ管理に頭を悩ませている企業は多いだろう。適切なタイミングでデータの分析や利活用をしたいのに、データや管理方法が複雑化し過ぎたため、思うようにデータが活用できない、という事態は避けたいものだ。そんな悩みを持つ企業に紹介したいのが、「データファブリック」という新しい概念である。

近年のデータ事情

近年、多くの企業が製品やサービス、顧客などに関する膨大なデータを蓄積している。データは高度な分析をかけることで幅広い活用が可能であり、最適な企業活動を導き出す土台となっている。

一方で、データの形式が多様であるために取り扱い上の課題が発生しているのも事実だ。これらのデータは多くの場合、複数のフォーマットで作成されており、サーバーやクラウド、ドキュメントなど、さまざまな場所に保管されている。データの分散によって、分析の際にどのようなデータを参照すればよいのかが把握しづらい、というのは多くの企業に当てはまる状況だろう。さらに取得したデータが最新のものではないとすると、分析結果に悪影響が出ることも考えられる。

このように、データやその管理が複雑化した企業では、必要なデータにすぐアクセスできないという事態に頭を悩ませることになる。データ活用時代の今、企業には単純かつ包括的なデータベースの運用が必要不可欠だ。

新しいデータ管理の基盤の登場「データファブリック」

そこで注目が高まっているのが、これまでとは違ったデータ管理の方法である。その基盤となるのが「データファブリック」だ。データファブリックとは、データの統合・展開を管理し、自動化する環境のこと。複数のデータソースを一元的に管理できるよう、ファブリック(布目)のように連携させたものだ。

データファブリックを実装すれば、オンプレミスやクラウドに点在するデータを最適な場所へ配置したり、アプリケーションやサービスからのデータを利活用したりできる。ニーズに適したフォーマットで、あらゆるデータをスムーズに提供可能だ。

データファブリックの活用で、データの統合・変換・準備・選別・セキュリティ・ガバナンス・オーケストレーションの手順を自動化できる。これによって、不正の検出やリスク分析など、より高度な分析が実現するのだ。

データファブリックで何が変わる?

データファブリックの導入によって、さまざまな効果が期待できる。

業務が効率的に

前述のとおり、データファブリックを導入することでデータのバックアップや管理・更新などの作業の多くが自動化できる。さらに、作業量が減ることで業務が簡略化され、システム運用者の負担を大幅に削減できることが魅力だ。

また、企業によってはオンプレサーバーやクラウドなどに、それぞれ異なるデータが蓄積されているケースもある。このような場合はそれぞれに互換性がないのでサイロ化が進んでしまい、統括的なデータ分析が困難だった。しかし、データファブリックの活用によってデータの処理・管理がハイスピードで実行可能になるのだ。

また、例えばサーバーごとにデータを蓄積している企業の場合、それぞれのサーバーのバックアップを行わなければならない。しかし、データファブリックであればバックアップ作業も一度で済むため、作業の簡略化かつ人為的なミスの減少というメリットも期待できる。

セキュリティ向上

データファブリックは、蓄積したデータを操作(コピー・共有など)する際の機能制限を設けられる。ユーザーの不適切な操作をあらかじめ防止しておくことで、データ漏えいなどのリスクを軽減可能だ。

また、データファブリックで一カ所にデータを集約することで、ユーザーのアクセスをコントロールしやすくなるというメリットもある。前述の機能制限も含め、データの扱いに関するポリシーを定めることによって企業全体のセキュリティレベル向上が期待できる。

データドリブンな経営の実現

データドリブンな経営を目指す企業にとっても、データファブリックを導入する効果は大きい。最も大きなメリットは、データ流通プロセスを最適化できることだ。参照データの一元的な管理によって迅速で正確な意思決定が可能になる。

現場でも、データ活用が容易になるというメリットは大きい。マーケティングにおいて参照元の選択肢が広がることで、これまで以上に自由な発想による施策が可能になる。さらに、開発現場でもテストデータなどへの接続がスムーズになるため、業務効率化が期待できる。

データ活用を加速させるデータ管理を

現代のビジネスでは、データをいかに活用できるか、ということで企業の競争力が変わってしまう。データの量と複雑さが加速する昨今、その適切な管理と活用は欠かせない。

データファブリックという概念はまだまだ一般的な知名度が低いものの、データがますます重要視されていくにつれ、その市場は拡大していくだろう。優れたソリューションの紹介ができるよう、今のうちから準備しておきたい。