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DX時代の今知っておきたい「リスキリング」

掲載日:2022/03/08

DX時代の今知っておきたい「リスキリング 」

近年、DXの発展や新型コロナウイルスによるオンライン業務の浸透など、今までどおりの知識・スキルではビジネスに対応できないようなシチュエーションが増えてきた。そんな状況の打開策として、「リスキリング」という言葉が注目を集めている。そこで本記事では、なぜ今日においてリスキリングが求められているのかを説明しよう。

リスキリングとは?

経済産業省によると、リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されている。2020年1月に開催された世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)において、「リスキリング革命」を推進すると表明されたことで日本でも注目を集めるようになった。

注意すべきは、「働く→学ぶ→働く」のサイクルを回し続けることである「リカレント」とは異なる意味の言葉であるということだ。リカレントは、学ぶために職を離れることが前提になっている。それに対してリスキリングは、これからも職業で価値を創出し続けるため、今後必要な、新たなスキルを獲得するという意味合いが強い。

DX時代にリスキリングが必要な理由

このリスキリングという言葉は、DXが標準となった近い将来、今まで以上に重要な言葉として注目を集めることになるだろう。なぜならば、DX時代においてリスキリングは必須の概念であるためだ。

従業員の場合

DXは単なるデジタル化・効率化ではなく、企業の製品やサービス、そして組織そのものを変革させるものだ。したがって、企業がDXを実現するために、これまでとは異なるスキルが従業員に求められることが十分に考えられる。そこで必要になってくるのが、さまざまな環境変化に適応するためにデジタル技術を取り入れ、企業価値を生み出すリスキリングなのだ。

もちろん、リスキリングはシステムエンジニアやDXのプロジェクト関係者といったIT・システム担当者だけに求められるものではない。営業やマーケティング担当者なども含め、全ての人材に対して求められるものだ。

今日、社会の流れに応じて企業戦略が大きく変わることはそう珍しくない。たとえそれまで花形とされた部署であっても業務内容を変更し、人員を削減するといったことも考えられるだろう。つまり、現代において安定して業務を続けるためには、誰しもがオルタナティブな仕事を務められるようなスキルを獲得しておくことが重要なのだ。

企業の場合

もちろん、リスキリングは企業にとっても大きなメリットをもたらす概念である。例えば従業員がリスキリングによって新たなスキルを身に付けた場合、それを生かして既存の業務を効率化するなどの効果が期待できる。

実際、とある製造業の企業で生産部門の従業員がデータ分析関連のリスキリングを受講したところ、生産性が大きく向上したという事例が報告されている。報告によると、受講以前の従業員は工場で紙とペンを使いながらデータを管理するレベルだったものの、現在は生産プロセスのデジタル化をIT部門の従業員に任せることなく自主的に進めているという。

このように新しい知識を取り入れて業務内容の改善を図る場合、これまでは専門に知識や経験のある人材を社外から呼び寄せることが一般的な対処法だった。しかし、この方法では大なり小なり従業員の入れ替えが発生し、将来的に企業文化の継承ができなくなることを懸念する声もあるだろう。しかし、リスキリングによって在籍している従業員が新しい知識を取り入れると、人材を確保しつつ新しい風を呼び込むことができるのだ。

DX化が求められる今「ほかの業務では優秀だが、ITの知識や対応力だけが不十分な従業員」を切り捨てることはやむなし、という状況に遭遇することも多いだろう。しかし、リスキリングを推進することによって、このような従業員を失うことなくDX化に対応することが十分可能だ。

DX化は、どんな企業にとっても避けられない課題である。まずは従業員へのIT講習から始めるなどして、さらに時代の変化に応じたさまざまなスキルを取り入れる企業を目指したい。