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「ゼロベース思考」でビジネス改革!?

掲載日:2022/05/24

「ゼロベース思考」でビジネス改革!?

斬新なアイデアや、大きく効果をもたらすような施策を創造するのは、誰にとっても難しいこと。いつも同じようなアプローチに終始してしまい、ビジネスの停滞に頭を悩ませている企業は多いだろう。そんな方におすすめしたいのが、「ゼロベース思考」という考え方だ。本記事では、現状を打破し、本質的に重要な要因を見つけ出すポイントになるだろうこの考え方について説明する。

ゼロベース思考とは?

ゼロベース思考とは、知識や思い込みなどを「なかったこと」にして、白紙の状態から物事を考えることを指す言葉。既存の概念や経験にとらわれない新しい発想を求められる環境で効果的な考え方だ。

なぜ、ゼロベース思考が必要なのか

一般的に、人は知識や経験を基に効率的な手段やアイデアを導く。例えば、どのような会社においても、業務に長い期間携わっている人ほど効率的に仕事を進められることだろう。しかし、この知識や経験といった要素からくる「慣れ」が固定観念を生んでいるという状況に遭遇したことはないだろうか。慣れは斬新なアイデアの創造を抑え込み、本質的に重要なことを覆い隠すことがある。このような状況で効果を発揮するのが、ゼロベース思考だ。

現在、ゼロベース思考は多くの企業において必要な考え方とされている。その理由は、刻々とビジネスを取り巻く環境が変化して、従来の方法では対応できないほど複雑化しているからだ。経済はグローバル化が進んでおり、国内向けに限ったビジネスは先行きが怪しい。また、国を挙げて働き方改革が進んでいることもあって、個人個人に合わせた自由な労働環境の整備が求められている。

分かりやすい例が、昨今のコロナ禍で急速に浸透したテレワークだ。従来どおり対面のコミュニケーションを重視したビジネスを進めていたら、新型コロナウイルスの感染はますます進んでいっただろう。「会社に人が集まれない状態でもビジネスを止めてはいけない。だから、社員が離れた環境から自由に働けるよう、業務をWeb上で完結できるようにする」というのは、従来の考え方にとらわれていると不可能な発想だったはずだ。多くの人が抱いていた「仕事とは会社に集まるもの」という先入観を捨てたからこそ、現在のテレワークに対応した社会が成り立っていると考えられる。

また、ゼロベース思考は顧客目線で企業価値を向上させるためにも有効な手段となる。製品やサービスを提供する側は、つい目先の利益効率化に走りがちだが、それは顧客にとって不利益な改変であるという状況はしばしば発生する。顧客にとって本当に必要な要素が何なのかを考えるためにも、いったんは利益のことを忘れ、客観的な視点を取り入れることも時には重要だ。

ゼロベース思考のポイント

とはいえ、何の工夫もせず勘でアイデアを探すような状態ではゼロベース思考を実践できているとは言えない。ゼロベース思考において重要なポイントは、最終的な目標達成に対して本質的に重要な要素が何であるのかを見極めることだ。

そのために必要なものとして、調査や分析に基づいた現状分析が挙げられる。大前提として自社がどのような価値を提供できており、社会がどのような状況にあるのかを数字に基づいて正確に分析できなくては、適切な発想を生み出せない。

さらに、既に定着した手法が本当に有効なのかを見極める意識も持たなければならない。定石とされる方法を批判的に再検証し、問題をあぶり出す。「そもそも現状の選択肢だけが有効なのか?」を口癖に、あぶり出した問題を解決できるようなアイデアを探すことが必要だ。

逆に、未来志向で物事を考えることも重要である。目先の利益だけではなく、数十年先の成功を目指すことで、定石を外れたアイデアを思いつくことが可能となる。現状では達成不可能と思われるような目標を立てることで、それを実現するためにどのような土台作りが必要か、というレベルから手段を考えられるのだ。資源、人員、組織といった各分野をどのように強化していけば高い目標に手が届くのかを考え、その中から現実的なアプローチを探っていくという方法でも目の前のビジネスを活性化させるヒントが手に入るはずだ。

ビジネスでのゼロベース思考の活用方法

近年、実際に多くの企業がゼロベース思考を取り入れて斬新なアイデアを創造している。

例えば、国内の大手化学会社と大手アパレルメーカーは、大規模なパートナーシップを結ぶことで革新的なインナーの開発に成功した。全く業種の異なる両社だが、将来的に世界レベルで事業を拡大するに当たり、互いの知見や技術力で協力し合うことが有効という考えでパートナーシップの締結に至ったという。

仮に、それぞれが自社の持つリソースだけで事業を拡大しようとすれば、この発想には至らなかったことだろう。足りないものを完全な別業種から得るという判断は、ゼロベース思考で視野を広げたからこそ発想できたものだ。

ゼロベース思考は、大きなプロジェクトに限らず身近な業務でも取り入れられる。例えば営業業務においては、対応中の内容を全て「ない」状態として考えればよい。当たり前のように行っている営業手法や、顧客とのやりとりの手段、ほか、社内のさまざまな部門との連携などを「ない」ものとしてみる。そうすると新しい発想が生まれて、営業業務の質の向上や、業務効率化にもつなげられることだろう。

このように、想定外の業種や困難なチャレンジが大きな成功を呼び込んだ例は多々存在する。ぜひ、ゼロベース思考で斬新なアイデアの創出を実現していきたい。