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クラウド活用の落とし穴とは?

掲載日:2022/06/28

クラウド活用の落とし穴とは?

数年前から、業務システムをオンプレミス環境からクラウド環境へ移行するブームが続いている。特にコロナ禍に入ってからは、そのブームが一層加速したように見えた。しかし、実際にクラウドを運用する企業が増加したことで、今までは見えてこなかったポイントが注目されるようになってきた。クラウド移行前に気をつけなければいけない問題とは何なのだろうか?

クラウドサービスの動向をチェック

2022年5月に総務省が発表した調査によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は68.7%に上った。そのうち87.1%の企業がクラウドサービスの導入は「非常に効果があった」または「ある程度は効果があった」と回答している。

中でも特に利用の多いクラウドサービスは「ファイル保管・データ共有」や「電子メール」だ。これらのサービスは初期費用が少なく済み、インターネットさえあればどこでもサービスが利用できることや、運用が難しくないということが主な利点だと考えられる。

このように、企業のクラウドサービス利用は実に一般的なものになった。しかし、クラウドサービスにはリスクが全くないというわけではない。特に業務システムをクラウドに移行するような場合には、想定しなければならない問題もある。

クラウドに移行すると企業の抱える問題がなくなる?

それでは、クラウドサービス導入において注意すべきポイントを見ていこう。ポイントは、主に以下の4つだ。

高コスト

多くのクラウドサービスは、従量課金制でサービスを展開している。そのため、使用量が増えると当然請求金額が増え、クラウド移行前よりもコストが高額になってくることを考えなくてはいけない。特に注意すべきは、通信量の増加だ。オンプレミス環境を引きずってしまい、同じ感覚で使い続けると膨大な数値になる。

さらに、オンプレミスの環境をクラウドに移行した際に想定以上のコンピューティングリソースを必要とする、という事態にも陥りがちだ。実際に運用する段階になって初めて「サーバーのスペックが業務内容に対して不十分」「ストレージ容量が全く足りない」といった問題に気が付き、プラン変更を余儀なくされるような状況は避けたいものである。

従業員の負荷

クラウドサービスを導入した場合、サーバー管理やセキュリティ監視などの対応はクラウド事業者に任せられ、社内の情報システム担当者の負担を減らすことが期待できる、と考えられている。しかし、業務で利用するための最適化作業や設定ミスなどについての問い合わせには社内の管理者が個別に対応するしかない。

中小企業の中には、情報システム担当が一人しかいない、という企業も少なくないだろう。そのような状態で新たなサービスを取り入れてしまうと、おのずと管理者の負担が増えることになる。特に移行当初は、問い合わせが激増することもしばしばだ。このような事態を避けるため、クラウド移行に先立って研修やトレーニングを備えておく必要がある。

通信トラブル

クラウドサービスを利用する場合、インターネット回線の速度が遅いと業務に悪影響が生じる。遅い回線では大容量のデータをやりとりする際に大変な時間がかかるほか、サービスのレスポンスが悪くなり、操作が遅れるといった問題も生じる。

クラウドサービス利用時はオンプレミスの環境に比べて必然的に通信量が増えるため、合わせて回線を強化しておくことで、被害拡大を防ぎたい。

セキュリティリスクや連携不備

最後に考えられる問題として挙げられるのが、管理不足によるセキュリティリスクだ。「クラウド事業者側の管理に期待して安心していると、社内で不適切なサービス利用をしていたために情報が漏えいした」といったケースもあるため、利用ルールを徹底周知するなどの対策が必要だ。また、クラウド移行によって仕様が大きく変わり、社内システムとの連携に不備が生じるといった声もよく聞こえてくる。契約前にはクラウドサービスとの互換性の有無を確認しておこう。

オンプレミスからクラウドへの移行には、それなりの手間と費用が必要だ。移行後、トラブル対応に手間取ることのないよう、入念に対応を検討しておかなければならない。また、最近は企業が「脱クラウド」に考えを改める流れも感じられる。ベンダーとしては流れを注意深く見守り、需要に対応した商材を提案したい。