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いま、宇宙ビジネスが熱い

掲載日:2022/07/12

いま、宇宙ビジネスが熱い

宇宙ビジネスと呼ばれる市場が存在することをご存じだろうか。「宇宙」と聞くとロケットの開発などをイメージしがちだが、実際の内容はそれ以上に幅広いものだ。最近は日本の大手企業が宇宙ビジネスへの参入を発表するなど、その注目度は上がる一方。モルガン・スタンレー社が公表した調査によると、2040年代には120兆円規模にまで成長すると分析されている。なぜ、これほどまでに宇宙ビジネス市場が盛り上がっているのだろうか。

宇宙ビジネスを知ろう

宇宙ビジネスは、「製造」・「宇宙利用」・「宇宙探査」という3つの分野に分けられる。まずはその3分野について理解して、宇宙ビジネスを知っていこう。

製造・インフラ

宇宙ビジネスとして一番有名なのは、ロケットや人工衛星などを製造する分野だろう。そんな製造分野のほか、宇宙ビジネスを促進するためのインフラ整備も盛んに行われている。

近年は小型のロケットや人工衛星の開発企業が続々と登場し、衛星データを実利用につなげるためのシステムを開発・整備する企業の存在感も強くなってきている。

宇宙利用

我々が日々スマートフォンのGPS機能で現在位置を把握したり、生中継される海外の様子をテレビで見たりできるのは、人工衛星の電波を活用しているためだ。このように宇宙を利用したサービスを提供するビジネスも存在している。

宇宙を利用したサービスは、その規模故に広い範囲で活用されている。前述のとおり位置情報や、気候変動などを調べる人工衛星を利用したサービスのほかにも、「雲や天候に影響されない太陽光発電」などといったサービスの開発も進められている。

宇宙探査

近年最も話題に上がることが多いのが、宇宙旅行や宇宙研究といった、人類が宇宙へと活動範囲を広げることを支えるビジネスだ。今後は航空会社を利用する感覚で宇宙旅行を利用するなど、身近なビジネスになることも予想されている。

人がロケットなどに乗船して宇宙探査を行う場合のほかに、無人の探査機を打ち上げて探査を行う場合もある。人の移動を介さないビジネスについても、宇宙探査のカテゴリに分類されるのだ。

宇宙ビジネス注目の理由とは

近年宇宙ビジネスに注目が集まっているのには、宇宙に対する考え方や、求められるサービスの内容に変化が起きていることが影響していると考えられている。

民間企業の参入が容易に

かつて宇宙は国家規模の組織でなければ関係できない場所であり、当然そこで生まれるビジネスにも限られた人間しか参加できないものであった。しかし、2005年にアメリカ政府がスペースシャトル後継機の開発を民間に委託したことが象徴するように、今日の宇宙は以前とは比べ物にならないほど門戸を開いている。

従来のように機器のメーカーだけではなく、さまざまな分野の企業が宇宙ビジネスに参入できるようになったのだ。

「地球ビッグデータ」の注目度向上

ビッグデータの活用が現代のビジネスにおける最重要ポイントであることは、言うまでもない。もちろん、宇宙から地球の動向を計測したデータ(地球ビッグデータ)は誰しもの生活に関わる情報として非常に価値が高い。

例えば、観測衛星から得られる気象データは正確な天気予報にとって必要不可欠なものであり、重要な情報として取引される。このような場合、これまでは大規模で高性能な衛星を打ち上げて情報を得ることが重視されていた。

しかし、近年は複数の小型衛星を打ち上げてそれぞれの得たデータを複合的に活用することが重要とする見方も強くなっている。小型衛星は比較的コストが低く打ち上げも容易なため、国内企業もビジネスに参加しやすい。このように、地球ビッグデータの価値上昇と市場参入へのハードルの低下によって、これまで以上に注目されるようになった。

宇宙インターネットの発展需要

世界中でIT化が進んでいるものの、人口が少なく採算の取れない国や発展途上国ではサービスが提供できないということも多々あった。そこで、衛星を利用したインターネットサービス(宇宙インターネット)を高性能化することでこの問題を解決する糸口にしたいと考える企業が増えてきている。

例えば、アフリカ大陸の国々にはケーブル網の未発達な地域が多く、多くの人々がインターネットを利用できていない。既に多くの国では宇宙インターネットのサービスが用いられているものの、現状はアクセスを介する人工衛星が地表から離れた軌道を通っているため、著しく通信速度が遅いという問題を抱えている。そこでこの問題を解決しようと、より低軌道の衛星を介する高速インターネットの研究が進められている。世界の情報格差を埋めるために重要な分野なため、その意味でも参入価値の高いビジネスと言えそうだ。

このように、宇宙ビジネスは単に利益の追求に限らずとも、多くの魅力がある領域だ。企業価値を見定める一つの指針として社会貢献力に注目が集まる昨今、アピールの手段として目を向けてみるのも良いかもしれない。