マーケティング

消費者行動モデル「DECAX」解説

掲載日:2022/07/19

消費者行動モデル「DECAX」解説

高度経済成長期を経て、日本が大量消費社会に突入してから約40年。新たな販売チャネルの登場により、消費者の購買行動は複雑化してきている。そんな中、2015年に提唱された消費者行動モデル「DECAX(デキャックス)」は、コンテンツマーケティング時代に見られる代表的な消費者行動モデルを指す言葉だ。情報で溢れかえる現代社会におけるDECAXの有用性を解説する。

DECAXの5フェーズ

DECAXは、「Discovery(発見)」「Engagement(関係構築)」「Check(確認)」「Action(購買・行動)」「Experience(体験と共有)」という消費者行動の5フェーズから成る。それぞれの段階について、具体的な内容は以下のとおり。

Discovery(発見)

SNSやインターネットでの検索など、企業の商品やサービスを消費者が「発見」するフェーズのこと。DECAXにおいては、消費者が能動的に情報を発見することを指すため、TVCMを流す、ダイレクトメッセージを送るなど、企業側からのアクション(宣伝)は含まない。

Engagement(関係構築)

消費者がたどり着いたWebサイトやSNSなどを通して、企業との関係性を築くフェーズのこと。消費者はSNSの投稿を見たり、サイトのコンテンツを楽しんだりすることで、企業への印象を強めていく。時には広報アカウントの投稿に「いいね」をしたり、メールマガジンに登録したりすることで、その企業の発信する情報を信頼するようになっていく。

Check(確認)

企業に好印象を抱いた消費者が、本当にそこから提供される情報を信頼してよいのか確認するフェーズのこと。具体的には、消費者が「どういった企業が販売しているのか」「ほかにはどんな製品を取り扱っているのか」「専門家や有名人はこの商品やサービスをどう評価しているのか」といった観点から情報を精査していく。

Action(購買・行動)

消費者が情報に納得した後、購入に踏み切るプロセスのこと。

Experience(体験と共有)

消費者が購入した商品やサービスを体験するフェーズのこと。その結果、有益な商品やサービスだと判断した消費者は、しばしばSNSや口コミでその体験を周囲へ拡散する。この拡散した情報をまた新たな消費者が発見することで「Discovery」が始まり、サイクルが循環していく。

DECAXとほかのモデルを比較

これら5フェーズによって成り立つDECAXだが、ほかの代表的な消費者行動モデルとはどのような違いがあるのだろうか。

比較すべきモデルとして、例えばAIDMAが挙げられる。これは企業がマスメディアを使って商品やサービスを宣伝し、消費者の購買行動を促すというモデルである。DECAXと比べると、初めに企業側の強いアクションがあってこそ成り立っているモデルであることが分かる。さらに、購入行動を終着点とし、次回の購入行動サイクルに結びつくプロセスがないことも分かる。

また、SIPSというモデルと比較した場合はどうだろうか。SIPSは商品やサービス、あるいはそれを手掛ける企業イメージなどといった価値に、消費者が共感することから始まるモデルである。その後、消費者は価値の内容について調査し、納得した場合は購入行動を取る。

ただし、SIPSにおいては購入を取らなくても、消費者が情報の共有や拡散といった行動を取れば成功とみなしている。これは、共有・拡散された情報は、別の消費者が購入行動あるいは共有・拡散するきっかけになるためだ。DECAXと比べた場合、SIPSも当初は企業側がアクションすることによって成り立つモデルであると言える。

このように、ほかのモデルと比較した場合、DECAXは消費者側からのアクションをきっかけとする点が特徴といえる。また、EngagementとExperienceという2フェーズで企業や商品・サービスについてよく理解してもらい、消費者による好意的な拡散による次のサイクルを重要視する点も特徴だ。

DECAXはなぜ重要なのか

では、なぜ消費者側からのアクションをきっかけとするDECAXが重要視されているのだろうか。それは、近年は消費者の発信がマーケティングにおいて極めて大きな影響力を持つようになったためだ。

今日の情報化社会において、情報は飽和状態にある。企業側からアプローチしただけでは意図どおりに商品やサービスの情報が消費者に届くとは考えづらい。そんな状況で世間の関心を商品やサービスに結びつけるためには、企業に関連付けた有益な情報を消費者に発信させ続ける必要がある。

そこで重要になるのが、DECAXにおけるEngagementである。情報に何度も触れてなじみを深めた消費者は、商品やサービスに対して好意的な感情を持ちやすくなる。例えば、同じ値段の同じ商品が複数の店舗で販売されていた場合、多くの消費者は漠然となじみのある店舗で購入しようと考えることが多い。あるいは、印象的なTVCMや仕掛けに富んだサイト構成、店員と顔なじみの店といった特徴のある店舗で買おうと考えるはずだ。

このように優れた顧客体験を味わった消費者は、その商品やサービスの購入行動に結び付けやすくなる。また、購入行動後にその体験を周囲へ広めようと、ポジティブな内容の情報を拡散してくれることも期待できる。

これまでのマーケティングに課題を持っている企業において、参考にしてもらいたい。