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デジタルファーストの進め方

掲載日:2022/08/02

デジタルファーストの進め方

デジタルテクノロジーが日々進歩し、生活や業務スタイルが大きく変わって情報化社会とまでいわれるようになった昨今、「デジタルファースト」という考え方に注目が集まっている。元々は出版業界から生まれたこの考え方だが、ほかのビジネスでも「業務でITを活用することは当たり前」「デジタル化を優先して業務を行う」などの考え方に応用されている。そんなデジタルファーストを実現するために必要なのは、どのようなことなのだろうか。

デジタルファーストとは?

デジタルファーストとは、書籍や新聞といった紙媒体のメディアを初めから電子出版形式で提供することを指す言葉だ。しかし近年は転じて「ビジネスや行政を電子化し、業務効率やサービスの品質を向上すること」を指す言葉としても認識されている。

デジタルファーストという言葉の意味が拡大したきっかけは、2019年12月のデジタルファースト法施行にある。

正式名称を「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」、別名を「デジタル手続法」というこの法律は、行政手続きのデジタル化を目的としている。

具体的には、①デジタルファースト(手続きやサービスを一貫してデジタルで完結すること)、②ワンスオンリー(情報は一度だけの提出で済むようにすること)、③コネクテッド・ワンストップ(民間サービスを含め、複数の手続きやサービスをワンストップで実現すること)の3原則をもとにしてデジタル技術を活用し、行政手続きなどの利便性の向上や行政運営の簡素化・効率化を図るものだ。最近は行政に限らず、民間企業でもこの考えを適用しようという考えが広まっている。

デジタルファーストはなぜ注目されるのか

それでは、デジタルファーストの具体的なメリットともに、注目が集まる理由について見ていこう。

業務効率化・資源やコストの節約

これまで紙ベースで対応していた業務をデジタルに移行することで、労力や時間の大幅削減が期待できる。例えば、これまで複数人が参加する会議では当然のように人数分の資料を紙に印刷して配っていたが、資料をデジタル化し、参加者のPCやスマートフォン、タブレットなどで確認できるようにすれば、印刷や配布の手間を省ける。また、資料の中から参照すべき内容を検索したり、コピーして業務中に引用したりといった作業もデジタルベースの方がずっと簡単だ。

もちろん、紙を大量に使用することは資源やコストの無駄遣いという意味でも望ましくない。サステナブルな企業を目指すためにも、デジタルファーストでこのような浪費をやめるべきだ。

働き方改革の促進

紙ベースのやりとりが主という状態では、多様で柔軟な働き方を選択することは困難だ。例えば、リモートワークは電子的なやりとりがベースだからこそ実現したものであり、毎度紙で業務内容を郵送していたら、あまりの煩雑さにどんな企業も受け入れられなかっただろう。

今日まで長時間労働や休日の勤務といった、労働者に敬遠されがちな働き方を日本企業が選ばざるを得なかったのも、紙ベースによるやりとりが根底にあったことが影響している。外出中の上長が帰社してハンコを押してくれるのを待って夜中までオフィスに残る、などはナンセンスな働き方だ。時間や場所に縛られることなく勤務し、必要なデータはオンラインで送付できるようにならなければ、働き方改革の実現は厳しい。

DXの推進

従業員全体がデジタル環境を生かした働き方を第一とすることは、DXを推進するうえでも大きな原動力となる。これは、デジタルファーストでの業務効率を最大化するためには自ずと企業全体がデジタル環境であることが望まれるためだ。

なかなかDXに踏み切れない企業こそ、まずはデジタルファーストを取り入れることから意識を変革することをおすすめする。

デジタルファースト実現に必要な条件

実際にデジタルファーストを進めるにあたって、注目すべきは以下の2点だ。

情報整理

デジタルファーストは、単に職場でデジタル機器を多く導入すれば実現できるというものではない。企業の状況や抱える問題、導入すべきソリューションなど、さまざまな情報整理が重要だ。

具体的には、現場で働く従業員の持つ情報を吸い上げるというアプローチをおすすめする。社員が日々の業務で感じている不満や要望をまとめ、これを解決できるためのデジタル施策を打つことからデジタルファーストの実現を目指したい。

セキュリティ対策

デジタルファーストの弊害として、社内の重要な情報に社外からアクセスしやすくなるという点が挙げられる。例えば、社員が情報を社外に持ち出せるということは、紛失や盗難のリスクが高まるということだ。また、紙資料に記載していた情報を電子化するということは、不正アクセスによる情報漏えいのきっかけを生むことにほかならない。

だからこそ、デジタルファーストを実現するために一層力を入れなければいけないのがセキュリティ対策である。社員研修などで情報管理の重要さを徹底して共有し、セキュリティソリューションを導入するなどして対応を進めたい。

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デジタルファーストから得られるメリットはもちろん多くあるが、企業にとって重大な落とし穴になり得るということも重要なポイントだ。ベンダーとしてはデメリットの部分も十分に説明し、その点を補ってデジタルファーストを進められるようなソリューションの提案が求められることだろう。