テレワーク

リモートワークが人材不足を救う?

掲載日:2022/08/09

リモートワークが人材不足を救う?

人材不足が叫ばれる昨今、そう簡単に望ましい人材が集まるわけではなく、採用活動に頭を悩ませる企業は多い。コロナ不況も重なって、悩みは強まるばかりだろう。そんな中、リモートワークが浸透したことによって人材採用に変革が起き始めていることをご存じだろうか。これまでの採用活動とは何が異なるのか、そのポイントを解説する。

中小企業から切り離せない、人材採用という課題

国内企業、特に中小企業にとって、人材採用はコロナ禍以前から続く大きな課題だ。とある大手リサーチ会社が2017年12月に発表した調査では、従業員の数について「不足」と回答した企業の数が「過剰」と回答した企業の数を上回っている。そのような状況でコロナ禍に突入したこともあり、多くの企業が業態やサービス、働き方の抜本的な変化を求められている。

変化に対応するための人材を採用できないとなると、以前から在籍する社員の働き方を変えるよりほかに手段はない。そうでなければ社員が背負う負担は大きくなる一方で、退職増加のリスクも考えなければいけないだろう。当然、退職者が増えた企業はさらに大きな人材難を抱える……という負のスパイラルが続いている。

リモートワークの浸透による考え方の変化

このような状況を打破する手段として注目が集まっているのが、リモートワークだ。大手転職サイトが2022年6月に発表した調査によると、「勤務地を問わない新規求人数」の数がコロナ禍以前に比べて約11倍に跳ね上がっているという。

言うまでもなく、コロナ禍でリモートワークが浸透したことによって、従業員が勤務先近辺に住む必要があった状況が大きく変化し、どのような場所に住む人でも働くことが容易になった影響が見て取れる。

また、同調査では「勤務地不問の求人(完全リモートワーク)であれば、会社の所在地にかかわらず前向きに検討しますか?」という質問に対し、約85%の人が検討に前向きだと回答している。地方在住者が首都圏や大都市の企業とマッチングすること、あるいはそれぞれの所在地が逆の関係も実現可能というわけだ。

このように、リモートワークの浸透で場所を問わず優秀な人材を採用できるようになった恩恵は、企業にとっても雇用者にとっても大きい。これまでは通勤圏内に在住する人材の中から採用する人間を選ばなくてはいけなかった。今後は全国(あるいは全世界)から最適な人材を登用できる。選択の幅は大きく広がり、多様で個性を生かした採用活動が可能になる。求める人材のレベルを下げず、視野を全国規模に広げることで、最適な採用活動を実現しよう。

また、リモートワークの浸透が、社員の流出防止につながる可能性もある。これまでは転勤を望まないことを理由に優秀な社員が流出するというケースも無数に見受けられたが、リモートワークベースの企業ならばこのような心配は無用である。また、家族の介護や進学、結婚などを理由に居住地が変わり退社する社員についても同様の効果がある。

副次的な効果にも期待

リモートワークの浸透は、単に採用活動の意識を変えるだけではない。ほかにもさまざまな効果をもたらしている。

例えば、リモートワークの導入を機にオフィスの規模を縮小したという企業は多いだろう。社員が出社しないのであれば、オフィスの床面積はこれまでに比べ大幅に削減してもかまわない。事業が問題なく進むのであれば、逆説的に削減したオフィス規模こそが適切であったとも言える。さらに、オフィス規模が小さくなった分、家賃や光熱費といった軽費の削減も可能だろう。このように、リモートワークによって事業の最適化や効率化の実現も望めるのだ。

また、リモートワークを前提とした事業を進めるためには、全社的なIT対応が必要不可欠である。これは、コストや手間が発生するという点では問題だが、これまで「DXを進めたいものの、社内の理解が得られず難航している」などと考えていた企業にとって渡りに船の状況なのではないだろうか。

先に述べた採用活動や事業最適化・効率化などのメリットを絡めつつ、このタイミングのうちに社内のIT改革を大きく進めて、より効果的な人材採用を行いたい。