中小企業

2030年には79万人のIT人材が不足する!?
その理由と対策とは

掲載日:2022/08/30

2030年には79万人のIT人材が不足する!?その理由と対策とは

以前から指摘されてきた、IT人材不足問題。2019年に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によると、IT人材が2030年には最大で79万人不足する可能性があることが分かった。DX推進の加速やコロナ禍によるリモートワークへの移行対応などの影響で、ここ数年でさらにIT人材不足を実感する企業が増加したことだろう。暗雲が立ち込めるIT人材不足問題に、解決の糸口はあるのだろうか。

IT人材不足の現状

現在、日本国内ではIT人材不足が深刻な課題となっている。IT技術は発展を遂げる一方であるのに、なぜ人材が不足しているのだろうか。その理由は大きく分けて以下の3つだ。

拡大する需要に人材の数が追いつかない

人材確保を大きく上回るペースでIT需要が拡大していることは、人材不足の原因の一端である。分かりやすい例としてテレワークの普及を挙げよう。

コロナ禍をきっかけに多数の企業がテレワーク環境を整備した。それに当たって、新たにグループウェアやWeb会議ツール、チャットツールなどのITソリューション導入を検討した企業もあるだろう。ITソリューションの選定から導入、そして運用には、専門的な知識が求められる場合がある。特にトラブル発生時には、その対応のためのIT人材が必要だ。

利用するITソリューションが増えると、その分トラブルも増える。加えてテレワーク環境だと従来のような対面でのトラブルシューティングが難しいためにリソースが不足し、社内のIT人材に負担がかかってしまっている、というわけだ。

とある調査研究会社の発表によると、2019年までにテレワーク制度が導入されていた企業が約20%であったのに対し、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が解除された2020年5月には約60%に跳ね上がった。

テレワークは、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(通称:働き方改革関連法)」が施行された2019年から推奨されていたものの、当時はそこまで注目されていなかった。ここ数年のコロナ禍が大きなきっかけになったことが分かる。

また、AIやIoTといったこれまでにない技術や概念を活用しようという動きもここ数年で活発化している。コロナ禍のようにあまりにも急激な変化が続く限り、十分な人材を確保することは一筋縄ではいかないだろう。

IT人材の「質」が不足している

IT需要が高まり、多様な技術や概念の活用が加速すると、自ずとエンジニアの技術向上が求められる。前述の「IT人材需給に関する調査」では、先端ITと呼ばれる分野における人材不足が特に指摘されている。

先端ITとは、AIやビッグデータ、IoTなどの専門的な知識・技術を必要とするような分野だ。先端ITの分野は現在急成長しているため、その分の人材確保が必要だが、従来のIT人材よりも高度な技術が求められることもあって、その需要と供給の差は今後ますます深刻化していくと考えられている。

労働人口の減少が止まらない

そもそも少子高齢化の進行によって日本の労働人口が減少しているということも、人材不足に影響を及ぼしている。

総務省の発表によると、2021年の労働人口は平均6,860万人。前年より8万人も減少している。どの業種にも言えることだが、まずは十分な頭数がそろわなければ、需要に対して適切な人材を配分することは難しいだろう。

現実的な対策とは

これらのような、さまざまな原因に対して、国や企業はどのような対策を講じているのだろうか。

経済産業省は、2016年にIT人材の充実を目標に「より多様な人材の活用促進」「処遇・キャリアの改革(産業の魅力の向上)」といった要素を盛り込んだ提言を発表している。これは現在のIT人材において、割合の少ない女性や高齢者なども積極的に登用し、他業種からの転職も積極的に受け入れるべきという旨の提言だが、この内容を基に国が具体的な施策を打っている様子は見受けられない。

また、文部科学省は、2020年度から小学校のプログラミング教育を必修化した(中学校は2021年度から)。プログラミング技術を身につけることはもちろん、プログラミング的思考を基に、より論理的な考え方の習得を目指したことによる必修化だという。直接的に将来のIT人材を増やすものではないが、義務教育の頃からIT機器やその活用に慣れ親しむことで、進路の選択肢としてエンジニアなどを選びやすくなる程度の効果は期待できそうだ。

さらに民間企業でも、採用年齢を引き上げてエンジニアの待遇を改善する、IT業務をアウトソーシング化するなどの動きが活発化している。

今すぐに人材不足を打破できるような対策は官民共に講じられていないものの、自社の社員を活用できるように育成するか優秀なIT人材を確保する、もしくはアウトソーシングなどの自社外のリソースを活用するといったように、企業自ら環境を整えることが求められる。そんなときに必要とされるのがITベンダーの力だろう。このビジネスチャンスを逃さないようにしたい。