業務改善

プロセスマイニングを探る

掲載日:2022/08/30

プロセスマイニングを探る

プロセスマイニングは、データを基に業務を可視化・分析して最適化につなげるための新しい手法だ。日々の業務のデジタル化が進む今、RPAに続く成長分野として大きく注目が集まっており、実際に業務改善に向けた第一歩として多数の企業がプロセスマイニングツールを活用している。今回はその重要性や、具体的な効果について見ていこう。

プロセスマイニングが重要だと考えられるワケ

プロセスマイニングとは、従業員の業務活動を機械的に収集・分析することによって業務改善を目指す手法だ。高度なアルゴリズムを利用して業務プロセスの分析を行うことで、漠然と従業員の働きぶりを見ているだけでは気付かなかった課題を発見し、その改善内容のモニタリングまでも可能になる。

プロセスマイニングの効果

プロセスマイニングを実行する際は、従業員がそれぞれ業務で活用するシステムやアプリケーションのログを分析する。多くの企業では大手サービスの提供するERPシステムや、各社ごとにカスタマイズした独自のシステムを業務に活用していることだろう。一般的には、これらのログをプロセスマイニングツールに読み込ませることで分析を行う。

例えば「見積り提出→注文書受け取り→契約書締結……」などの業務プロセスのログを、プロセスマイニングツールで取得。そうすると対象業務が可視化できるため、プロセス上のどこで問題が発生し、どのような課題があるのかを特定可能、というわけだ。

このようにあらゆる業務を可視化することで、課題を具体的に特定し、最適な解決策を導き出せる。これは生産性向上やコスト削減にもつながるだろう。さらにプロセスマイニングツールは、一度導入するだけで継続的に分析対象の業務プロセスを監視する役目も果たす。事前に定義した条件に基づいて、問題がありそうな業務プロセスが発生した場合にはすぐに通知し、対処してくれる。

業務最適化までの手順をチェック

プロセスマイニングの分析において重要なのは、どの従業員が業務フローをどのように進めているのかを特定するためのデータだ。

例えば営業担当者であれば「顧客に接触→顧客の要望をヒアリング→見積書を制作→顧客と契約」という業務フローが一般的だが、それぞれのプロセスにおいてどれだけの手間とコストが発生しているのかを外部から確認することは難しい。そのため、例えば「この従業員はこの日に顧客へ面談のアポイントを取り、メールを送ったデータが存在するので、その瞬間からヒアリングのフローが始まったとみなす」といったように各プロセスの内容を特定するためのデータをログから見つける必要がある。

データを基に業務内容を分析した後は、その従業員のプロセスが適切であったのかを確認する作業に移る。従業員によっては本来あまり効果のないプロセスに長時間取り組んでいたり、あるいは同じプロセスをフローの中に何度も組み込んでいたりすることなどが分析できるだろう。このような問題を改善・省略することで、業務の最適化を図れるのだ。

副次的な効果にも期待

プロセスマイニングに注目が集まる理由は、単なる業務最適化に限らず、それに付随する形で顧客満足度向上や働き方の改善といった効果も期待できることにある。

例えば、とある企業では従業員がマニュアルどおりに業務を進めないという問題を抱えていた。これは、現場の判断でマニュアルの内容を勝手に簡略化することが常態化していたためである。そこで、同企業ではプロセスマイニングによって各従業員の業務内容を確認。コンプライアンス上問題のあるプロセスについては、その改善に努めた。結果的に従業員の業務を正常化できたほか、そもそも当初のマニュアルで指示していた無駄な作業や不必要な手順を省き、より洗練された業務プロセスを制定することに成功したという。

このように業務の根本であるプロセスを見直すことで、幅広い分野で肯定的な変化を発生させる手段として、プロセスマイニングに注目が集まっている。

複雑な組織であるほど、各従業員の働き方を適切に管理運営することは難しい。だからこそ技術の力を借りた、抜本的な改革を加えることによる効果は大きい。人の目で眺めているだけでは気付けないような問題をプロセスマイニングによって可視化し、企業の持つポテンシャルを引き上げていこう。