中小企業

データエコノミー社会の今、求められること

掲載日:2022/09/20

データエコノミー社会の今、求められること

2021年5月に「デジタル改革関連法」が成立し、同年9月にはデジタル庁が発足するなど、日本政府もデジタル化、そしてデータの利活用を後押ししている。このような状況下で注目したいのが、既に我々の生活を支える多くのサービスで取り入れられている概念「データエコノミー」だ。今後さらにデータエコノミーの浸透が進むことにより、どのようなメリットが得られるようになるのだろうか。データエコノミーの概要とともに解説する。

データエコノミーの正体

データエコノミーとは、膨大なデータを企業・個人の価値や競争力の向上に活用する経済のことを意味する言葉だ。具体的には、個人情報やビッグデータなどをAIなどで解析して、ビジネスの原動力とすることを指している。

言うまでもなく、現在のWebサービスはデータエコノミーの概念によって成り立っている。Webサービスの構造上、データ収集が容易なことがその下支えとなっていることだろう。例えばECサイトの多くは利用者の年齢や性別といった属性情報、あるいは購入履歴や検索履歴といった情報をAIで分析して最適な商品をレコメンドするわけだが、これは実にデータエコノミー的な現象だ。このように、ビジネスでのデータ活用は実に一般的なものとなっている。

一方で、まだまだデータエコノミーの概念が浸透していない業界も多数存在する。例えば、接客業や建設業、医療といった現場での活動を重視する分野は比較的デジタル化と相性が悪い。データエコノミーを積極的に取り入れるべきではないという風潮があるようだ。

ただ、コロナ禍以降はさまざまな業種でデジタル化実現に向けた対応が求められるようになってきた。ここ数年でDXは飛躍的に進み、現場仕事でもデジタル化に踏み切る企業が増えている。こうなると、どのような業種でもデータの収集が容易になり、データエコノミーが今まで以上に浸透するようになるだろう。社会全体がオンライン化し、データエコノミーが大前提となる未来もそう遠くはないように考えられる。

データエコノミーの影響とは

データエコノミーが広く浸透した社会は、現状と比較したときにどのように変化しているのだろうか。まず予測できるのは、選択の迅速化だ。これは、データエコノミーが浸透した社会では、利用者が何を求めているのかを容易に把握可能になるためである。

先に述べたように、多くのECサイトは利用者へ購入してもらいたい商品をレコメンドする。その際、わざわざECサイトの売り場担当者が利用者に「次はどんなジャンルの商品をお求めの予定ですか」と直接メールで調査してからレコメンドする商品を決めることはないだろう。AIによるデータ分析は、このような手間を大きく省くことになる。

このような特徴は、例えば医療の現場、特に診察などに大きなメリットをもたらすだろう。データエコノミーが浸透した社会では、患者の体温推移や排泄回数などの生活データをIoT家電が記録してカルテに反映するということも容易になる。また、過去の通院歴や手術歴といったデータを医師がいつどこでも確認可能だ。このような効果によって、問診の時間短縮が期待できるほか、病院へ行く前に受診すべき科目を指示してもらったり、診察を受けずに適切な薬を処方してもらったり、という未来が実現するかもしれない。

また、AIのサポートによってサービスの品質向上や効率化といったメリットが生じることも期待できる。これについても医療機関での例を挙げるならば、診察時に医師が判断する内容の正確性を向上させる効果を発揮するだろう。

例えば医師が患者を診察した際、AIに症状を分析させることで過去の症例を判断時の参考にできる。あるいは患者の立場としても、診察の内容をAIに分析させることで最適なセカンドオピニオンを探し出してもらうことが可能だ。サービスを提供する側も利用する側も、常にAIに補助してもらうことにより、より納得感のある結果を得られるようになるだろう。

データエコノミー浸透による問題をチェック

一方、データエコノミーのさらなる浸透に当たって解決すべき課題は数多くある。大きな壁となっているのは、日本にはいまだにアナログなスタイルの企業が多く、データを利活用するための環境整備が途上であるということだ。また、既にデータエコノミーの実践へ積極的に取り組んでいる国内企業でさえ、多くは投資に見合った利益を得られていないという実情がある。

さらに、データビジネスに対する信頼性の低さも課題だ。とりわけ日本では個人情報保護の意識が高く、データの取り扱いが難しい。

いわゆるCookieレスの概念が重要視されるようになったことからも分かるように、個人を特定しない形でデータを取得することが求められている昨今、IoT機器などから利用者の情報を過剰に収集してビジネスに活用することは避けたい。いかに個人のプライバシーを守りながら情報を取得し、また流出などのトラブルを防ぐセキュリティ対策をとれるかがポイントになりそうだ。

データのトレンドには、ここ数年で大きく動きがある。トレンドの影響とその対策をチェックして、ユーザーニーズを前もって把握しておきたい。