業務改善

2023年4月改正!月60時間超の時間外労働へ
中小企業の取るべき対策とは

掲載日:2022/10/11

2023年4月改正!月60時間超の時間外労働へ中小企業の取るべき対策とは

働き方改革が進む昨今、働きやすい環境が社会に浸透していることを実感する機会が増えてきた。一方で、このような望ましい改革が経営者の頭を悩ませることもしばしばである。特に、2023年4月から月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率引き上げの対象が拡大することは、多くの中小企業に影響を与えることだろう。そこで、「月60時間超の時間外労働割増賃金率引き上げ」の詳細と、その対策についてまとめる。

時間外労働の割増賃金とは

労働基準法の32条を見ると、使用者(※)は労働者に法定労働時間(1日8時間かつ1週間に40時間)を超えて労働させてはならないという取り決めが記載されている、この法定労働時間を超えて働くことを時間外労働と呼ぶ。時間外労働については、法定労働時間を超えた分量に応じて賃金を割増しすることが定められているため、経営者としては優先的に見直しの対象とする必要があるだろう。

なお、割増賃金の割合は、対象労働者の1カ月の時間外労働が60時間超であるか否かで異なり、時間外労働が60時間以下の場合は25%割増、60時間超の場合は50%割増となる。ただし、中小企業の場合は労働現場の実情などを踏まえ、2022年10月現在は猶予措置として、時間外労働が60時間超の場合でも割増率は25%とされている。

※労働基準法では、使用者は「事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」と定められている。

2023年4月からの適用拡大

しかし、2023年4月からは前述の猶予が撤廃され、中小企業であっても時間外労働が60時間超の場合は50%割増が適用される。

なお、今回の適用対象拡大において、特に注目すべきポイントは以下の二つである。

深夜労働との関係

月60時間を超えて深夜労働(22:00~5:00の時間帯の労働)を行わせた場合、深夜割増賃金はさらに25%追加される。この場合、割増賃金率は25%(深夜割増の割増賃金率)+50%(時間外割増賃金率)=75%となる。

休日労働との関係

法定休日(労働者に原則週1日与えられる休日)に出勤した場合は、35%以上割増した賃金を支払う必要がある。ただし、法定休日の労働時間は時間外労働にカウントしない。そのため、月の時間外労働が60時間を超えた後に労働者が法定休日に出勤した場合、割増賃金率は35%となる。

ただし、法定休日以外の休日に出勤した場合は時間外労働にカウントされる。仮に「毎週土曜日と日曜日が休日の会社」の労働者が土曜日と日曜日の2日間休日出勤した場合、どちらか1日の勤務時間のみを時間外労働としてカウントすることになる。

適用拡大に伴い企業に求められる対応

今回の適用対象拡大を受けて、第一に中小企業が取るべき対応は、人件費を抑えるためにも労働状況を見直すことだろう。多くの場合、業務フローの見直しやシステム導入による業務効率化への注力が求められる。また、社員の労働時間を正確に把握することも重要だ。特に休日労働に関しては、法定休日に勤務したか否かを管理できなければ正確な賃金を支払うことが困難になってしまう。

管理ツール

そこで効果を発揮するのが、社員の業務管理を徹底するための「管理ツール」の導入である。どの社員がどのように働き、どの程度会社に貢献したのかを正確に把握するためにも、印象に基づく漠然とした評価ではなく、具体的に数字やグラフで可視化できるツールの活用が効果的だ。

株式会社PR TIMESの『Jooto』ではプロジェクトやメンバーのタスクが管理できるほか、プロジェクト・タスク管理ツールの中にはどの社員がどのような仕事にどれだけの時間をかけているのかを集計する機能が備わっているものもある。集計された情報は、分析することで業務・社員の状況を客観的に判断する材料にできる。改善できる業務は改善し、キャパシティを超えている社員の業務配分を考え直すなど、具体的な対応に役立たせたい。

コミュニケーションツール

また、こなすべき業務量に対し、そもそものマンパワーが絶対的に不足しているという企業も多いことだろう。業務処理が終わらない限り仕事は長引き、結果的に時間外労働の増大につながる。このような状況で効果的なのが、コミュニケーションツールの導入だ。これは、あらゆる企業にとってコミュニケーションは必要不可欠なものであり、必然的に業務時間の何割かを担っているからである。コミュニケーション環境を改善することにより、業務時間を縮める効果もある。

おすすめしたいのは、Microsoftの『Microsoft Teams』などのビジネスチャットツールだ。文書や画像のやりとりに使えることはもちろん、メールで送ることははばかられるような短文のやりとりにも適している。また、スタンプがプリセットされているツールであれば、文章で確認のメッセージを送らずとも素早くレスポンスを返せる。

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2023年4月の労働基準法改正に向けて、中小企業は業務の管理や効率化など、その対策に追われている。多様なソリューションそれぞれの特性を把握して、適切な提案につなげたい。