建設・土木業

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掲載日:2022/10/18

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2021年12月、国内で初めて10㎡以上の建築物を3Dプリンターで施工することに成功したとのニュースが報じられた。このプロジェクトは、専門技術による製造を3Dプリンターで代替することによって将来的な建築業界の人手不足などに対策したものであり、他業界においても必要とされるアプローチとして注目されている。では、実際に業務で活用する際はどのようなポイントに注目して3Dプリンターを選べばよいのだろうか。

3Dプリンターの選び方

3Dプリンターとは、3D CADや3D CGなどで作成した3次元データを基に断面形状を積層し、3次元の立体造形物を出力(プリント)する装置だ。3Dデータさえあれば複雑な立体物を短期間かつ容易に製造できるため、複数人で製造ラインを共有する際も役立つ。これまで立体物を作る際は、ある程度特別な技術や経験が必要だったため、業務で使う模型を準備する際には専門家に外注する必要があった。しかし3Dプリンターを使用することで、内製が可能になり、コスト削減に結びつけられるようになった。

企業が使用できる3Dプリンターは家庭用と業務用の2種類がある。業務用は高価だが、3Dモデリングの再現性が高いことを特長とした製品が多い。また、使用できる材料や造形方式の種類が多様なので、幅広く対応できるのが魅力だ。対して家庭用は低価格ではあるものの、造形中に「反り」が発生しやすくきれいに仕上げることが難しいなどのデメリットがある。

業務用3Dプリンターは値段を基にさらに2種類に分類できる。20万円程度から購入可能なミドルクラスモデルはFDM方式と呼ばれる造形方式が一般的ではあるが、造形物の表面に積層痕と呼ばれる樹脂の段差が目立ちやすい。それに対して、250万円程度から購入可能なハイクラスモデルは光造形法やインクジェット方式といった造形方式の物が多い。こちらは比較的滑らかな出力が可能なほか、同一の部品を複数製造する際にも個体差のばらつきが小さい。そのため、製造業の現場や精密な医療産業物の製造などに適していると言えるだろう。

実際に3Dプリンターを選ぶ際には、予定している用途に適した素材がその3Dプリンターで使用可能かどうかを確認することが重要である。例えば、プレゼンで使用する模型や商品のサンプル(卓上のゴミ箱や筆記用具立など)を製造する場合は、安価で加工も楽なABS樹脂の出力に対応したFDM方式の機器を選ぼう。それに対して、精密な立体物を短期間に複数製造する際には、光硬化性アクリル樹脂に対応した光造形方式に対応した機器の購入をおすすめする。そのほか、機械の内部構造部品のように長期間の利用を前提とした耐久力の高い立体物を製造する場合は、チタンやナイロン12といった素材に対応する特殊な3Dプリンターの購入が必要である。

なお、3Dプリンターの導入を検討しているもののコスト面での不安を感じている企業には、中小企業庁が実施する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称ものづくり補助金)」への申請がおすすめだ。これは革新性や拡張性、持続性を有するビジネスモデルの中小企業の構築を支援するもので、所定の審査を通過した場合は最大1億円の補助金が交付される。3Dプリンターを活用した試作品開発や小ロット生産なども交付の対象となるため、積極的に活用したい。

3Dプリンターの一般化が業界に与える影響

業務上の3Dプリンター活用は、幅広い業界で一般的になっている。例えば、アパレル業界ではナイロンやTPUといった素材を3Dプリンターで出力して服を作ることが試みられており、これは製造上で手作業の負担を軽減する効果が期待されている。

また、食品業界ではペースト状にした食材を3Dプリンターで出力することにより、新しい食品を製造する試みが進んでいる。3Dプリンターで異なる食材を高い精度で積み重ねられるため、病院食や介護食のように、ハンディキャップを抱える人々に対して、個人個人に合わせた噛みごたえや喉の通りやすさが求められる食品の製造も可能だ。

一方、医療業界においては、今後は義手・義足や臓器モデルの製造などに3Dプリンターを活用することが検討されている。ただ、手術のシミュレーションに用いる臓器モデルは極めて複雑かつ精密であることが求められるため、現状3Dプリンターで作成するコストが高くつき過ぎてしまい、積極的な活用が難しいのが現実だ。

今後、さらに高機能な3Dプリンターが安価に流通するようになれば、より幅広い分野での活用が期待できる。矢野経済研究所による3Dプリンター材料の世界市場に関する調査では、3Dプリンターの市場規模は2026年には2021年の3倍以上である約1兆円規模に成長すると予測されている。

市場のニーズもさらに多様なものに変化していく可能性が高いので、ベンダーとしてもリサーチやヒアリングに力を入れて、個別に最適なものを準備しておくことが重要だ。