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画像生成AIから考える、AIの魅力と課題とは

掲載日:2022/10/18

画像生成AIから考える、AIの魅力と課題とは

もはや生活の中で利用しない日はなくなったと言ってもよいほど、AIの発展は目覚ましい。近年は特に画像生成AIが急激に発展を遂げ、今まで以上に注目を集めるようになった。画像生成技術に限らず、AIは日々進化を続けている。ただ、発展途上のものが多いこともあり、たびたび課題が指摘されているのが現状だ。そこで今回は、画像生成AIを通して、AI全般の抱える課題を読み解いていく。

なぜ画像生成AIに注目が集まるのか

画像生成AIとは、単語や文章を入力するだけで自動的に画像を生成してくれるAIサービスのことだ。

例えば、「印象派風のラーメンが爆発している」と入力すれば、丼から飛び散るラーメンの画像がクロード・モネのような色使いとタッチで生成される。このように多様で複雑なキーワードにも対応可能な理由は、AIがディープラーニングと呼ばれる手法で膨大な画像データを機械学習しているためだ。

このような特徴を持つ画像生成AIだが、最近は注目度が急激に高まっている。その理由は、2022年8月に『Stable Diffusion』という画像生成AIが公開されたためだ。このAIはオープンソース化されており、個人がローカルな環境で容易に運用できる。また、生成した画像は無料で商用利用可能だ。

これまでも高性能なAIは存在していたが、生成した画像を商用利用する際は別途料金を支払う必要があるなど制限があるものが多かった。Stable Diffusionはこのような制限がないため、飛躍的に利用の幅が広がる。今後は「Web記事に挿入するようなちょっとしたイラストや写真は、わざわざ購入せずにStable Diffusionで無料生成する」ことが一般化するかもしれない。

懸念されるAIの悪用とは

一方、画像生成AIが発展したことによる悪影響も顕在化してきた。特に注目が高まっているのが、AIで作成したフェイク画像や動画による「ディープフェイク」の問題である。一般的に、ディープフェイクはAIで生成した偽物の動画を指す言葉として認知されている。しかし本来は、ディープラーニングによって偽物の画像や動画を生成し、本来の画像や動画の一部へ上書きして、全く異なる内容に変化させることを指す言葉だ。

精巧に作られたディープフェイクが本物かどうかを、人間の眼で見分けることは難しい。また、偽物の画像や動画が「本物ではない」と証明することは究極的には不可能(いわゆる「悪魔の証明」になる)であるため、一度ディープフェイクが広く出回った場合、それを後から訂正することは困難になってしまう。

近年はディープフェイクによる被害が増加しており、有名人の画像データを利用した偽物の動画や会見動画が出回っていることも報道された。国内においては、ディープフェイクによって生成された偽物の音声が振り込め詐欺に使われるのではないかと懸念する声もある。

著作権を踏まえてAIとどう付き合うべきか

また、ここ最近のトピックとして、画像生成AIを利用したイラストメーカーの国内製サービスの著作権問題がある。該当のサービスは、ユーザーが任意の画像を学習させることにより、画風や特徴をまねたイラストを生成できるというもの。しかし、イラストの悪用を懸念する声が殺到したこともあり、運営会社は公開の翌日にサービスの終了を発表した。

このような画像生成AIの利用について、法的な問題はあるのだろうか。「著作物の私的使用のための複製」について定めた著作権法30条の4第2号を見ると、「著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。(中略) 二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合」とある。

すなわち、前述のサービスを使いAIで私的にイラストを生成することについて、少なくとも著作権における問題はないと考えられる。

法的な問題がない一方、クリエイターの立場を尊重し、適切に権利を保護することが重要だという意見も多い。しかし他方では、イラストに限らず幅広い分野の制作物は将来的にAIによる生成が容易になるため、現行のビジネスモデルを続けていくことは困難になると予想されている。現在AI開発者やテック企業は、自主的に規約を設ける、利用に制限をかけるなどしてこのバランスを取っているが、今後は政府による規制が必要になるかもしれない。

ビジネスとしてAIの活用を考えている場合は、まずは直近で注目が集まっている画像生成AIに対する世間の声を注視し、社会においてどのような振る舞いが求められるのかを分析することが重要になるだろう。