営業支援

営業支援ツール最前線

掲載日:2022/10/25

営業支援ツール最前線

営業の世界ではいまだに「足で稼ぐ」「セールスマンの勘で稼ぐ」といった考え方が根強く残っている。このようなやり方に限界を感じている企業におすすめしたいのが、AI営業支援ツールだ。もちろん、旧来どおりのやり方で成果を得られるならば、それに越したことはないが、その成功率を上げるためにも適切なツールの活用は重要である。今回、AI営業支援ツールにどのようなメリットがあり、どう選べばいいのか解説する。

AI営業支援ツールとは何か

これまでセールスの現場においては、営業支援システム(SFA:Sales Force Automation)が幅広く活用されてきた。SFAは、訪問履歴や訪問実績といった営業活動に必要な情報をスケジュールやタスクと共に管理できるツールだ。それに対してAI営業支援ツールは、SFAの持つ管理機能に加え、営業活動に役立つ提案機能も兼ね備えたサービスである。

具体的には、訪問時の情報をAIが分析してインサイト営業(見込み顧客の潜在的な課題や悩みを発見して解決策を提案する営業)の最適解を提案したり、それまでの営業実績を基に当期の成果を予測したりするなど、複雑な要素を読み解いて難しい判断を助けてくれる。

導入のメリット

AI営業支援ツールを導入する最大のメリットは、データ分析に必要な時間や手間を大きく削減できることだ。これは単に業務負荷を下げると同時に、AIの支援によって生み出された余力を別の仕事に向けられるという意味でも非常に効果的である。

また、営業活動において、偏見や思い込みなどによる、誤った判断を防ぐという点もメリットの一つだ。例えば、慣れた業務に対しては、「この項目は参考にする必要がない」「この方法が最も効率的だ」と思い込んでしまいがちだ。それが本当に最適な形であるならば望ましいことだが、人間の限られた思考の中で結論を出すことは難しい。そこでAIを用いると、思い込みではなく過去のデータ結果を基に判断するため、正誤を客観的に見直すうえでは大いに参考になるだろう。

さらに、AIの支援を受けることで営業全体のパフォーマンスが向上し、社員が対応できる業務の幅を広げられるというメリットがあることも重要だ。これにより、以前は技術的・経験量的に特定の社員しか対応できなかったような業務にも多くの人間が関われるようになる。これは結果的に特定の業務がブラックボックス化することを防ぎ、属人化を解消するきっかけとなる。

導入のデメリット

これに対して、AI営業支援ツールを導入することによるデメリットにも注目したい。最も気をつけるべきは、トラブルが発生した場合に原因の特定が困難ということだ。AIの判断は人間では思いつかない独創的な面を持つが、これは人間が事象からその原因を探るのが難しいということと表裏一体である。先に述べた「属人化を防ぐ」というメリットがある一方で、「AIに依存しかねない」という点にも目を向け、マネージャーは営業業務がどのように進行しているのかを常に注視してトラブルを防止する必要がある。

また、AI営業支援ツールは業務にまつわる多くのデータを収集して活用する。すなわち、顧客の個人情報や社外秘の機密情報が集中するということだ。そのため、AI営業支援ツールにまつわる情報セキュリティリスクについては、これまで以上に注意しなくてはいけない。

AI営業支援ツールの選び方

では、実際にAI営業支援ツールを選ぶ際はどのような点に注意すべきなのだろうか。重要なのは、導入する企業がどのような営業体制であり、今後どの要素を伸ばすのかを考えることだ。

例えば、設立間もないスタートアップ企業では、少ない人的リソースをどのように割り振って営業活動を効率化させるかに頭を悩ます場合が多いのではないだろうか。この場合は、メールの自動取り込みや営業フロー進捗(しんちょく)状況の可視化といった機能で業務のスピードアップに有用なツールを選ぶべきである。

対して、ある程度成熟した営業組織を持つ企業の場合は、「部署を構成する多数の従業員に対し、理念やナレッジを正しく共有したい」といった悩みを抱えるケースが考えられる。このような場合は、従業員の業務内容を分析し、適切に働けていない際には自動的に問題を指摘してくれるような機能を有するツールの選択をおすすめする。

複数社のAI営業支援ツールを見比べると、SFA的機能や営業データの分析機能といった基礎的な機能に加え、名刺の自動スキャンや管理といった機能に特化したものや、外出先での利用を想定してさまざまなデバイスへの最適化に力を入れているものなどそれぞれに特色があることが分かる。より具体的な活用シーンを想定して最適なツールを選ぶことで、人間の力だけでは実現不可能だった成果を得たいと考える企業が多くなる可能性が高い。今後も、このようなAIツールに関する最新ニュースをぜひ注目したい。