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中小企業向け補助金制度をチェック!

掲載日:2022/11/08

中小企業向け補助金制度をチェック!

ここ数年、中小企業や個人事業主の多くが資金面のやりくりに頭を悩ませていることだろう。コロナ禍や急激な円安の進行が追い打ちとなり、いよいよ経営に限界を感じている方もいるかもしれない。そのような中で政府も事態を鑑み、苦しい状況の事業者向けにさまざまな補助金制度を設けている。ここでは、特に幅広い事業者が申請可能な補助金を中心に紹介する。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、商業・サービス業(常時使用する従業員が5人以下)や宿泊業・娯楽業・製造業など(同、20人以下)の小規模事業者を対象に支援する制度である。この取り組みは、近年増加したさまざまな新制度に対応する事業者を支援するもの。申請類型によって割合や上限額が異なるが、1事業者当たり最大200万円が補助される。

また、2022年9月からは枠組みが拡充され、さらに多くの事業者が対象となった。追加された枠組みのうち、特に注目すべきは以下の2点である。

賃金引上げ枠

従業員賃金の引き上げに積極的な事業者に対し、最大200万円を補助する枠。具体的には、補助事業が終了した時点において、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上上回ることが可能な事業者が対象となる。また、申請以前に前述の条件を満たしている事業者は、さらに30円以上賃金を上げることによって補助の対象となる。

インボイス枠

2021年9月30日から2023年9月30日に属する課税期間のうち一度でも免税事業者であった、もしくはそれが見込まれる事業者のうち、インボイス発行事業者の登録が確認できた事業者に対し、最大100万円を補助する枠である。

なお、2022年からは対象を広げ、賃金引き上げやインボイスへの対応に取り組む事業者向けに新たな類型が追加されている。ちなみに、インボイス対応を見据えて事業者がデジタル機器を導入するなどの経費については、中小企業庁が別途実施する「IT導入補助金」の適用が可能である。

「インボイス制度」についてのトレンド記事(2021年7月掲載)をチェック!

「IT補助金」についてのトレンド記事(2022年4月掲載)をチェック!

事業再構築補助金

事業再構築補助金とは、中小企業がウィズコロナ・ポストコロナ時代の社会変化に対応するための事業再構築を支援する制度である。複数の枠組みが用意されており、コロナ禍による売上減少などの条件を満たす場合は、通常枠として最大8,000万円が補助される。

ただし、補助を受ける条件として、経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った3~5年間の事業計画書を認定経営革新等支援機関(税理士や公認会計士、商工会、金融機関などの国の認定を受けた支援機関)と共同で策定することが求められている。具体的には、補助事業終了後3~5年間で付加価値額の年率が平均3.0%以上増加すること、または従業員1人当たり付加価値額の年率が平均3.0%以上増加することを見込む事業計画書の提出が必要である。

グリーン成長枠

なお、同事業には通常枠以外にも複数の枠組みが設けられており、取り組み内容が適している企業はそちらでの申請を検討したい。これらのうち、他の補助金に見られない特徴的な内容の枠組みとしては「グリーン成長枠」が挙げられる。これは、研究開発・技術開発または人材育成を行いながらグリーン成長戦略「実行計画」14 分野の課題の解決に資する取り組みを行う中小企業などの事業再構築を支援するものだ。

グリーン成長戦略「実行計画」14 分野とは、経済産業省が2020年に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を指している。これはカーボンニュートラル実現のために各業界が取り組むべき指針を定めたものであり、具体的には電気自動車の業務活用やドローン物流の実用などが求められている。

なお、前述した事業再構築補助金の通常枠は「コロナ禍による売上減少等」という条件が課されていたため、コロナ禍以降に創業した事業者は申請対象外(コロナ禍より前の売上が存在しないため『減少』が証明できない)である。しかし、グリーン成長枠はこのような条件がないため、より幅広い事業者が申請できるという点でも注目すべきだろう。

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継などの理由を契機として経営革新などを行う事業者を対象に最大600万円を補助する制度である。対象は大きく3つに分類されており、名称以上に幅広いアプローチに対応していることが魅力的だ。

経営革新事業

事業継承を契機に新商品の開発や生産、新しい販売方式の導入といった経営革新を行う事業者は、経営革新事業の枠に申請できる。なお、事業継承の形によって申請する形式が異なる。Ⅰ~Ⅲ型の3つの形式があり、創業支援によるものはⅠ型、経営者交代によるものはⅡ型、またM&AによるものはⅢ型が対応している。

注目すべきは、事業承継対象期間内における法人の設立や個人事業主としての開業による事業引継ぎにも対応している点であり、この場合はⅠ型に申請する。Ⅰ型の場合は、いわゆる第二創業の場合も対象となるため、引き継ぎを機に大きく事業内容を変更したいと考えている事業者にとっては利用価値の高い補助金だ。

専門家活用事業

M&Aによる事業承継を計画している企業は、手続きの際に契約する専門家(ファイナンシャルアドバイザーなど)の費用を補助する専門家活用事業の枠に申請可能だ。この枠は売り手・買い手の両方が利用可能であり、それぞれが対応する型式を選んで申請する。

  

廃業・再チャレンジ事業

事業継承を契機に廃業あるいは廃業後の新規事業での再チャレンジを計画している事業者は、その手続を補助する廃業・再チャレンジ事業の枠に申請できる。なお、この枠は前述した経営革新事業または専門家活用事業との併用が可能だ。

例えば、事業承継によって事業を譲り受けた事業者が新たな取り組みを実施するに当たり既存の事業の一部を廃業する場合は、廃業・再チャレンジ事業と経営革新事業の併用ができる。

来年度の中小企業向けの補助金情報に今のうちから注意したい。各補助金の申請期限を確認したうえで、最適なタイミングで、最適なソリューションを提案する準備をしておきたい。