ワークスタイル改革

データ大量消費時代の今、ストレージ仮想化を考える

掲載日:2022/11/22

データ大量消費時代の今、ストレージ仮想化を考える

PCやスマートフォンにおいて、データを長期間保存するために必要な場所と言えば「ストレージ」である。今日のように大量のデータを消費する社会においては、ストレージの容量確保は死活問題だ。しかし、最近はこれまでのストレージ運用に限界を感じる声も多くなってきた。そこで注目されているのが、仮想化技術を用いたストレージの運用である。

ストレージ仮想化に関心が高まる理由

仮想化とは、メモリやストレージといったITリソースをソフトウェアで統合・分割する技術を指す言葉だ。仮想化技術により、端末は物理的に搭載するリソース以上の能力を発揮できる。例えば、手元に1台のPCがあるとする。この場合、そのPCの処理能力は物理的に搭載しているCPU(Central Processing Unit)の性能に依存する。しかし、仮想化したCPUを用いることにより、物理的に搭載した以上の処理が可能になるのだ。

2022年7月、とあるIT系人材派遣サービスが「今後、現場においてニーズが高まると予想されるIT技術やサービス」について、企業のエンジニア担採用担当社に調査した結果を発表した。この発表によると、「OSやサーバ、ストレージ、データベース」の項目において「ストレージ仮想化」という項目が2番目に注目を集めているという。ストレージ仮想化は、前年に発表された同調査では14番目だったため、多くの企業において急激に関心が高まっていることが分かる。

関心が高まった理由として、コロナ禍でテレワークが浸透し、それに伴って世界的にデータ流通量が増加したことが考えられる。また、誰もがスマートフォンを持ち、大量のデータの消費が一般的になったことも影響を与えているだろう。

実際、2020年にとあるアメリカの市場調査会社が発表した内容によると、全世界の生成・消費されるデータの総量は年間でおよそ59ゼタバイトにのぼり、これは2010年時点の約60倍だという。データ消費量は今後も増える一方だろう。

このような状態になると、近い将来に世界中の企業がデータの保存場所であるストレージを奪い合うことになると考えられる。もちろん、物理的なサーバーを大量に保有できれば競争に勝てるのだが、それが可能な企業は一握りである。そこで求められるようになったのが、ストレージ仮想化というわけだ。

ストレージプールのメリットとは

複数のストレージを仮想化し、統合した単体の巨大な格納庫として扱うことを「ストレージプール」と言う。このストレージプールには複数のメリットがあり、ストレージ仮想化の中でも特に利便性の高い活用法と言える。

例えば、複数のシステムにそれぞれ個別のストレージを接続した場合、必然的に容量が余るものと足りないものが発生する。余った場合はもったいないし、足りない場合は別途ストレージの追加が必要だ。しかし、これらのストレージでストレージプールを構成し、複数のシステムを接続した場合には前述のような問題が発生しないため、ストレージ容量の効率化が図れる。

そしてストレージ容量の効率化により、必要な物理ストレージの数も大きく削減できる。すなわち、購入すべきストレージの数も減り、コストの削減が期待できるというわけだ。

また、容量が余っていたとしても、ストレージは所定の電力を消費する。そのため、ほとんど容量を消費していないストレージを大量に使用することは電力効率の面から見ても無駄が多い。

ストレージプールの特徴として、統合したストレージのうち、不要になった分を適宜排除できる点がある。利用状況に対して不要なストレージを統合している場合は排除することで消費電力を抑えることが可能だ。消費電力を抑えられるということは、単なるコスト削減だけではなく、グリーンIT(環境負荷を低減できるITの活用法)の観点でも重要である。

2019年に国立研究開発法人科学技術振興機構が発表した資料によると、2050年には世界の情報量(IPトラフィック)が現在の4,000倍に跳ね上がり、最悪の場合は世界の年間消費電力が情報関連だけでも5,000PWhにまで達するとも予想されている(なお、2019年時点で世界の年間消費電力は24PWhである)。すなわち、ストレージの確保と効率化、省電力化はどの企業にとっても直面する課題なのだ。ストレージ仮想化もこの課題を解決する手段の一助として効果的に利用していくことが重要だ。