業務改善

業務の属人化をどう解消するべきか

掲載日:2022/11/29

業務の属人化をどう解消するべきか

「今日は〇〇さんが休みだから、この仕事は後日に回そう」といった会話を聞くことは多いだろう。このような状況を「業務の属人化」と言う。属人化とは、業務を特定の社員のみが把握し、他の社員に十分に情報が共有されていないなどの状況を指す言葉だ。「この機器はこの人しか使えない」や「この企業との取引はこの人しか担当できない」などといった状況が、業務の属人化の典型的な例である。今回はいかにこのような状況を防ぎ、どうやって業務を効率化していくべきかについて解説する。

属人化のデメリット&メリット

属人化による最大のデメリットは、担当者の替えが利かないために、トラブルが発生したときの対応が困難になることだ。属人化した業務は、担当者の休暇や出張によってしばしば停滞してしまうことがある。あるいは、担当者の転職によって、会社の財産である業務に関する知識やノウハウが永遠に失われる状況もこれに類する問題だろう。重要な業務の進め方がブラックボックス化すれば、その企業の事業継続が困難になる可能性も考えられる。

また、他の社員が詳細を把握できないために、業務内容を客観的に判断することが不可能な状況の発生も考えられる。この場合、業務品質が不安定になるばかりではなく、トラブルが発覚しないまま時が経ち、いずれ巨大な不正となって企業に大きなダメージを与えかねない。

さらに、業務が属人化しているということは特定の社員に特定の仕事が集中するということなので、長時間労働の原因にもなり得る。このような状況はワークフローの中においてもボトルネックになりやすく、全体の業務を効率化するという観点でも望ましくない。

ただ、悪い点ばかり目に付く属人化だが、メリットも存在する。特定の個人が担当するということは、業務内容が専門的な方向で研ぎ澄まされるということだ。あるいは、顧客が「この仕事は毎回、慣れ親しんだ〇〇さんが担当してくれる」という状況を肯定的に捉えてくれることもあるだろう。また、担当する業務に対して絶対的な裁量権が与えられていると考えることもできる。優秀な人間がスムーズかつモチベーション高く仕事を進めることに適した環境とも言えるだろう。

属人化解消のポイント

単に文字どおりの意味で属人化を解消したいのであれば、社員の担当業務をシャッフルすれば解決する。しかし、それだけではトラブルが発生するだろうし、前述したメリットも失われるだろう。専門的なノウハウを他の社員に共有可能か、他の社員でも顧客にとって最適な担当者になれるのか、優秀なプレイヤーのポテンシャルを殺してしまわないか、という点に注意しながら役割を再配置することが求められる。これを実現するためには、まず現在の「属人化状況」がどのようなものなのかを十分に把握することが必要だ。

属人化の解消におすすめのツール

一口に属人化と言っても、それが個人にとって望ましくて発生したものとは限らない。その業務が過度に専門的であるため他人に任せられなかったり、他の社員に仕事を引き継ぐためのシステムがなかったりと、どうしようもない状況が発生していることもあるだろう。このような状況の場合、求められる改革は業務の標準化である。すなわち、マニュアルを整備することや、特定の業務に必要な知識やノウハウを学ぶための社員教育の機会を設けることが必要だ。

マニュアルを整備するにあたっては、専用の作成ツールを活用することが効果的である。例として、あるクラウドサービス企業が開発した業務マニュアルの作成と共有に特化したソフトが挙げられる。このソフトを利用すると動画や画像、文書などを用いた電子マニュアルを作成し、そのデータをQRコード化したりタスクに組み込んで表示させたりと、適切な形で共有できる。

また、共有後のマニュアルがどのように使われているかソフトが分析し、改善点を指摘するといった機能も備わっている。これにより、せっかく作ったマニュアルが形骸化して現場の判断が優先されるようになり、再び業務が属人化する……といった事態を防ぐことが可能だ。

さらに、例えば仮に「属人化していることでうまく業務が回っているように見える職場」があった場合、それが本当にベストな形式であるとは言い切れない。逆に、属人化によってうまく業務が回っていない職場があるとしたら、言うまでもなく早急に改善すべきだ。このような属人化の悪影響を客観的に分析するためには、その業務を含むワークフロー全体の分析が必要になる。あるいは、企業によっては、「自分の地位を守るために意図的に業務の属人化を続けている」という悪い人員がいるかもしれない。当人にとっては望ましいことでも、組織としてはなくすべき考え方である。公正な判断を行うためにも、誰がどのようにワークフローへ貢献しているのか、それは他の人員に担当させた方が効果的ではないかという厳しい分析が求められる。

ここで重要なのが、人間の判断は先入観や偏見によって、必ずしも最適な分析ができるわけではないということだ。そこで求められるのが、ツールを活用した客観的な分析である。ツールを活用すると、業務責任の最適な分散が望める。

2020年以降、新型コロナウイルスに感染したこと、あるいは濃厚接触者に認定されたことなどを理由に同僚が仕事を休むということが身近なものになった。属人化していた業務の担当者が急に休み、仕事が予定どおり進まないという状況も多くの人が経験したことだろう。コロナ禍をチャンスと捉え、属人化解消を目指す企業の期待に応えるサービス紹介を検討してほしい。