IoT・AI

IoTを内包し、その先を行くIoBの魅力とは

掲載日:2022/12/06

IoTを内包し、その先を行くIoBの魅力とは

ビッグデータを基にビジネスを進めることは、多くの企業においてすっかり一般化している。そのような中、このような形式のビジネスを大きく促進する概念として「IoB」に注目が集まっている。これまでとは比べ物にならない網羅性でデータを収集できるこの概念の魅力について解説する。

IoBの持つ二つの意味

IoBという言葉は「Internet of Bodies(身体のインターネット)」の略語として使用される場合と「Internet of Behavior(行動のインターネット)」の略語として使用される場合がある。

「身体のインターネット」とは、人間の身体がインターネットに接続され、さまざまな情報が収集・記録されることを指す言葉だ。例えば、「脈拍や睡眠状況などを検知し、インターネット経由でPCに記録するような機能を有した腕時計デバイス」を使っている人は、「身体のインターネット」の状態であると言える。

対して「行動のインターネット」とは、GPSや顔認証、Webサイトの利用履歴といった多方面のデータをインターネットで収集し、個人の行動を分析することを指す言葉である。もちろん、「身体のインターネット」で収集したデータを「行動のインターネット」の分析に役立たせることもある。

近年、IoBという言葉は「行動のインターネット」の意味で使われることが多くなり、それに伴って注目度も上昇するようになった。これは「行動のインターネット」のために「身体のインターネット」の情報を内包することが一般的になったためであり、また将来的な発展性も「行動のインターネット」の方が優れていると考えられるようになったためだ。

IoBとIoTの違い

IoBに似た概念の言葉として、連想されるのが「IoT」だ。IoTとは「Internet of Things」の略であり、「物(一般的にはより広義の意味を含み『モノ』と表記される)のインターネット」という意味の言葉だ。具体的には、自動車や家電がインターネットに接続し、利用状況や周辺環境などのデータを伝送するサービスなどを指している。例えば、IoT冷蔵庫は中に入っている食材の種類を検知し、スーパーにいる利用者のスマートフォンに何を買って帰ればいいのか通知する機能などが備わっている。

IoTとIoBの違いは、インターネットに接続する対象が「モノ」であるか「個人」であるかという点にある。ただし、前述したIoT冷蔵庫の例のように、最終的に個人の行動に関わる情報を取り扱う場合もあるため、明確な区別は困難だ。また、IoTが接続した「モノ」のデータを個人の行動分析に活用する状況もしばしば存在する。そのため、今日においてIoBは、実質的にIoTを内包して機能する概念だと考えれば分かりやすいだろう。

IoBのメリットとリスク

IoBのメリットは、莫大な情報を基に生活や仕事を分析し、最適化できるという点である。例えば、ヘルスケアや医療においてIoBの効果は非常に大きいとされている。「食事や運動量といった限られた情報をノートに記入して分析・管理する人」に比べ、「あらゆる行動の情報をIoBで記録・分析する人」は得られる情報の量や網羅性が遥かに優れているのだ。結果的に、取るべき対応の正確性にも大きな差が開くだろう。

また、IoBはビジネスにおいても大きな効果を発揮すると言われている。店をIoB化し、顧客の行動を網羅的に収集することで、潜在的な需要や問題を発見できるだろう。人間が眼で見ただけでは分からないポイントを推察できることは、ビジネスを駆動するための概念としても役立つ。

一方で、IoBは莫大な情報を有することによるリスクも抱えている。重要な情報が集中しているからこそ、不正アクセスやサイバーテロに遭った場合の被害は莫大なものになる。個人情報やビジネス上の重要機密が一挙に流出することは、絶対に避けなければいけない。

また、機器の不調や故障による被害が極めて大きくなりやすいということもIoBの特徴だ。例えば心臓が正常に動いていることを注視し続けるIoBサービスがあったとして、突然インターネットがつながらなくなった場合はどうだろうか。医療や介護の現場でこのサービスを利用していた場合、重要な情報源を絶たれてしまうと現場は大混乱に陥ることだろう。

IoBの活用事例

まだまだ国内での認知度が低いIoBだが、専門的な業務を支える新概念として、近年は少しずつ活用が広がり始めている。例えば、とある大手ソフトウェア開発企業では、工事現場で作業員がどのような状態で働いているのかをモニタリングするIoBサービスを提供している。これは作業員の健康状態を分析するもので、異常を察知した場合は速やかに警告してくれる。これにより、例えば高所作業中に作業員がふらついたり判断ミスを起こしたりする、という状態を事前に察知し、事故を防ぐ効果が期待されている。

また、IoBについての研究が盛んなアメリカでは、人間の脳に直結するインターフェイスの開発が進んでいる。とある先進的技術の開発企業では、インターネットを通じて脳の思考を分析し、その働きをAIが補佐する技術のプロジェクトが進められているという。このような場合は活用レベルが高度であるためあまり実感が湧かないが、IoBが持つポテンシャルを生かせばSFの世界に手が届く日は、そう遠くないのかもしれない。

IoBが当然のように生活の下支えになっている未来を見据え、ぜひ今のうちから情報を集めておきたい。