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AI翻訳ツールの目覚ましい進歩がビジネスをどう変えているのか

掲載日:2022/12/13

AI翻訳ツールの目覚ましい進歩がビジネスをどう変えているのか

グローバル化が進み、ビジネスにおいて外国語は年々重要性が高くなっている。そのような中で注目が集まっているのがAI翻訳ツールだ。ここ数年で驚くほど精度が上がったAI翻訳ルールが、どのようにビジネスで活用されているのかについて解説する。

AI翻訳の発展

AI翻訳はAI自動翻訳とも呼ばれ、その名のとおりAIを用いて翻訳することを指す言葉である。この技術は1950年代から本格的に研究されていたものの、機器の性能不足などを理由に長らく不完全にしか翻訳できない時期が続いていた。しかし、2010年代にディープラーニングを活用した「ニューラル機械翻訳」が登場すると、途端に翻訳精度が大きく上昇し、多くの注目を集めるようになる。

2020年代に入り、AI翻訳はさらに身近な存在になった。無料のAI翻訳ソフトや検索エンジンのAI翻訳機能や音声を認識するハンディ型のAI翻訳機などが幅広く使われるようになり、もはや他言語を使用する人とコミュニケーションを取る際や海外旅行では、必須の存在になっていると言える。

ビジネスによるAI翻訳の利用増加

近年はAI翻訳をビジネスに活用する機会も増えてきている。2022年にとある翻訳ツール開発企業が調査した内容によると、「業務において日本語以外の言語を利用する機会がある」と答えた20~60代のうち、75.34%がAI翻訳ツールを使うことがあると回答したという。

同調査では、コロナ禍によって日本語以外の言語でのリモート会議やビジネスチャットが増えたことによりAI翻訳ツールのニーズが高まっているとまとめられている。

AI翻訳のメリット

ビジネスにAI翻訳を使う最大のメリットは人件費節約である。一定の料金を支払えば優秀な翻訳家を雇える、という意味での費用対効果は非常に大きい。

もちろん、翻訳は対応する業務の内容や言語の種類によっては必要な費用が異なる。一概には言えないものの、例えば人間による日本語から英語への翻訳外注費用は1文字当たり10円程度、あるいは1単語当たり20円程度といった料金が一般的な最安値である。対して、例えば買い切り型のAI翻訳ソフトであれば1製品当たり2万円程度、クラウド型のAI翻訳ソフトであれば月額1000円程度から文字数の制限なく利用可能だ。

ただし、技術が発展しているとはいえ、AIで翻訳した内容をそのままビジネスで用いることは、正確性という点で難がある。対外的な業務にAI翻訳を用いる際は、別途人間による校正を入れることが望ましい。社内に専門の校正担当者がいない場合は外注の検討をする必要もあるだろう。

AI翻訳を使ってコストを下げながら別途校正を外注してコストを発生させるということは、一見すると本末転倒である。しかし、例えば前述した「1文字当たり10円程度の日英翻訳」はあくまでも最安値であり、その品質には難があるため、やはり別途校正を入れることが望ましいとされている。つまり、ある程度正確性を担保するためには、初めから高品質で高いコストのかかる翻訳を依頼するか校正を入れる必要があるのだ。

結果的に、あらゆる翻訳業務をAI翻訳で代替するのではなく、用途に合わせて使い分けることが重要と言える。社内向けのリモート会議やビジネスチャットといった(最悪、意味さえ伝われば問題ないような)翻訳はAI翻訳に任せ、もう少し正確性が求められる場合はAI翻訳と校正の併用、社外向けの大々的な発表の際は初めから専門の翻訳家に依頼……などといった役割分担が望ましいだろう。

AI翻訳ツールの使い分け

AI翻訳の性能は日進月歩しており、また最近は用途に応じて多様なサービスが展開されている。

口頭での会話、特にリモート会議で外国語話者と接する場合は、音声を認識して自動翻訳するツールの使用をおすすめする。リモート会議でしばしば用いられるビデオ通話サービスには標準で音声認識と自動翻訳の機能を備えたものがあり、これを使うことによって翻訳されたお互いの会話がリアルタイムに字幕で表示される。

文章のみを翻訳したい場合は、テキスト入力型の翻訳ツールを使おう。これらはWeb上で無料サービスとして展開しているものも多く、ブラウザでアクセスするだけで簡単に利用できることが強みだ。

また、最近はAI翻訳ツールがOCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)に対応するという例も見受けられる。これを使うことで、外国語の文章を撮影する、あるいはスキャンすることで日本語に翻訳可能だ。これまでは「翻訳をしたいけれど、そもそもキーボードに何と打てば翻訳ツールに外国語の文字を入力できるのか分からない」というケースも多かっただけに、この問題を解決する機能として期待がかかる。

AI翻訳は今後も進歩し、外国語を使用することへのハードルは大きく下がっていくことだろう。これは大変望ましいことだが、逆に言えば、これまで地位や価値のあった人的資源や製品の需要が下がっていくということも意味する。ベンダーにとっては、「何に見切りを付けるか」という苦しい判断が求められる時代になったことも踏まえておかなければいけない。