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クラウドサービスの多様化を探る

掲載日:2023/01/17

クラウドサービスの多様化を探る

総務省が発表した「令和3年情報通信白書」によると、国内における「クラウドサービスを一部でも利用している企業」の割合は68.7%であり、前年度より4%上昇しているという。今や過半数の企業がクラウドサービスを必要としており、今後も利用が広がり続けるだろう。クラウドサービスが多様化していく中で、その分類や選定ポイントなど、その実態を把握している方は少ないのではないだろうか。

クラウドサービスの種類と活用

ひとくちにクラウドサービスと言っても、その種類は大きく分けて三つに分類できる。それぞれ相性の良い提供サービスが異なるため、利用前に特徴を把握しておくことが重要だ。

SaaS

SaaSとは、クラウド上のコンピューティングリソースを活用してサービスを提供する形式を指す言葉である。より分かりやすく説明するならば、これまでCD-ROMやダウンロードソフトとして販売されていたサービスを、インターネット上で提供できるようにした形式であると言えよう。

SaaSの特徴は、利用者を想定してある程度作り上げられたサービスを提供することだ。したがって、ITの知識がなくても簡単に利用でき、場合によってはサービスの開発が一切必要ないというメリットがある。対して、構成が整っている分利用者が後から手を加えられる領域が少なく、自由度が低いというデメリットもある。

PaaS

PaaSとは、サービスの稼働に必要なインフラやサーバーなどが全てクラウド上でプラットフォームとして提供される形式を指す言葉である。PaaS利用者は、サービスの稼働に必要なプログラムとデータベースのみを用意すれば良いので、それを実行するための環境を構築する手間がかからないというメリットがある。

任意でプログラムやデータを設定しやすいため、SaaSと比べ自由度が高いという点もメリットだ。業務内容に応じたカスタマイズが必要で、かつ開発全般に必要な時間や手間を短縮したいという場合はPaaSを選ぶことが望ましいだろう。反面、知識や技術を持たない人にとっては運用が難しいとも言える。

IaaS

IaaSとは、サービスの稼働に必要なインフラやサーバー、プログラムなどが全てクラウド上で提供される形式を指す言葉である。IaaS利用者は、クラウド上で提供されるITリソースを自由に組み替えることで、柔軟に環境構築することが可能だ。そのため、IaaSで構築されるサービスには高いカスタマイズ性があるにもかかわらず、利用者はデータ以外を準備する必要がないというメリットがある。アプリやゲームのように高い自由度を持って環境構築したい場合は、IaaSを選択することが最適だ。

クラウドサービスの選定ポイント

では、実際にクラウドサービスを業務で使う場合はどのようなポイントに注意して選定するべきなのだろうか。前述した分類ごとの特徴に加えて、以下に注目する必要がある。

データ容量

選定において最も重要なポイントはデータ容量だ。特に、画像や動画、音楽などを多用する分野の業務でクラウドサービスを利用する場合は、一般的に数TBのデータ容量が求められる。

ただし、クラウドサービスによっては契約後にデータ容量を追加することが可能な場合もある。まずは少ない容量のサービスを契約し、使い勝手を確かめながら随時追加していくというアプローチであれば無駄がない。

セキュリティ

クラウドサービスには業務上重要なデータが集約されるため、サイバー攻撃の格好の標的となりやすい。従ってセキュリティ対策の充実性は選定における重要なポイントとなる。IPアドレス制限や端末認証といった機能が備わっているか必ずチェックしたい。

サポート体制

システムを構築する際や運用中にエラーが発生した際にスムーズな相談ができるよう、サポート体制についても事前に確認しておきたい。これは、クラウドサービスはサービス提供側が何らかの形で必ず保守や運用を担うものであり、トラブルが発生した際に利用者側だけでは問題の解決が困難であるためだ。もちろん、サイバー攻撃が発生した際もサポートとの相談は必要不可欠である。

クラウドサービスの選定においては、予算の範囲内で求める条件がそろっているかを吟味する必要がある。当然、コストは低いことが望ましいが、それによって想定よりもサービスの性能が低くビジネスに悪影響が及ぶことは避けたい。

本質的に重要なことは、ビジネスを円滑に進めつつ、トータルのコストを抑えることだ。クラウドサービスを利用することで、人件費や機材費はオンプレミス環境よりも抑えられる。クラウドサービス自体のコスト高騰はある程度許容し、ほかの部分のコスト削減で埋め合わせることでトータルの最適化を目指したい。