製造業

製造業こそメタバースを取り入れるべき?
「産業用メタバース」とは

掲載日:2023/01/24

製造業こそメタバースを取り入れるべき?「産業用メタバース」とは

Facebookが社名をMetaに変え、メタバースに年1兆円投資をすると発表したのが2021年10月。それをきっかけに、メタバースが大きく注目されるようになった。しかし、メタバース=アバターという認識が強く、ビジネスと結びついていない企業もまだ多いのではないだろうか。製造業においてメタバースはどう生かされるのか。現状を見ていこう。

メタバース×デジタルツインとは?

メタバースは、インターネット上に構築された3次元の仮想空間。利用者はアバターを用いて仮想空間で交流・活動をする。メタバースという言葉が初めて登場したのは、1992年に発表されたSF小説『スノウ・クラッシュ』の中。そして、2000年代半ばにリリースされた3次元仮想空間「Second Life」がその走りと言えるだろう。

Second Lifeのときはまだスマートフォンが出ていなかったため、アクセスできるのはPCユーザーのみ。しかも、今よりPC性能も通信速度も現在と比べて劣っていたため、きれいに3DCGを表示できるのはハイスペックPCを持つ利用者に限られていた。そのため大きな流行は続かなかったが、Second Lifeはコアな利用者がいて、現在もサービスは続いている。

人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森(あつもり)」や「フォートナイト」などもメタバースの一種だ。ゲームを用いて説明すればメタバースをイメージしやすい人も多いのではないだろうか。

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キーポイントは「デジタルツイン」との融合

ビジネスでメタバースを活用しようと考えたとき、思い浮かぶのはゲーム以外にバーチャルイベントなどのエンターテインメント業界や、バーチャルで製品を試用する小売業、バーチャルモデルルームをのぞける不動産業界、バーチャルトリップを楽しめる旅行業界だろうか。

しかし、実際にはメタバースの可能性はもっと多種の分野に広がっている。ただし、メタバースという仮想空間3DCGだけではできることにも制約がある。その限界を取り払ってくれるのがデジタルツインだ。

デジタルツインとは、現実世界にあるものを、仮想空間に双子として再現し、そこでシミュレーションを行って最適化し、現実世界にフィードバックするものである。

例えば、実際に稼働している工場でのデータをIoTでリアルタイムに収集し、仮想空間上に再現してシミュレーションを行う。稼働中の部品の摩耗や破損がその時点で起きていなくても、バーチャル内のシミュレーション中にトラブルが起きたら、現実世界の工場では事前に対策がとれる。なお、広義の意味で、デジタルツインまで含めてメタバースと呼ぶこともある。

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製造業でのメタバース×デジタルツイン活用

では、メタバースとデジタルツインがどのように製造業で活用されているのか、または期待されているかを見ていこう。

新製品の開発

製品の設計やプロトタイプの制作、シミュレーションを仮想空間で行う。開発段階で熱や衝撃などの耐久性や使い勝手を確認し、試作や試験の回数を減らすことにつなげる。これによってリードタイムやコストを削減できるだけでなく、プロトタイプやモックアップの数を減らすことで環境負荷も減らせる。

工場の生産ラインシミュレーション

遠隔にいる技術者が、仮想空間に再現した工場でシミュレーションし、作業指示やプログラミング、予知保全などを行うことが実際にできるようになった。従来、生産ラインでの工程や保守などは、熟練の技術者の経験に頼るところが多かった。しかし、メタバースで工場を再現できることで、幅広い層のスタッフが目で見て確認することが可能だ。

独BMWはNVIDIAが発表した「Omniverse」で自動車工場を仮想空間に再現し、シミュレーションを行うことで生産にかかる時間を短縮したと発表した。また、川崎重工株式会社も米Microsoftと提携し、複数拠点にいる作業者を仮想空間上で共同作業を実現する技術を開発している。

プロモーション

製品プロモーションはメタバースが得意とする分野で、かつ取り入れやすい。バーチャルショールームは日産をはじめとする自動車メーカーや、キッチン、スマート家電、オフィスインテリアなどで既に設置されている。

今までショールームや展示会に足を運ぶことが難しかった遠方の顧客にもアピールできる機会が増える。仮想空間なら、海外向けにもショールームや展示会を展開できるため、大きな商機をつかむ可能性もある。

国土交通省の「Project PLATEAU」、スマートシティ、MaaS(Mobility as a Service)、医療、物流、小売り、農業などなどあらゆる分野でメタバースは取り入れられようとしている。この流れに乗り遅れることなく、顧客にどういう提案ができそうかを見極めていきたい。