中小企業

令和5年度の増税注目ポイントと税制改正のプロセスを知ろう!

掲載日:2023/01/24

令和5年度の増税注目ポイントと税制改正のプロセスを知ろう!

既に多くのメディアで報道されているように、令和5年度は多方面で増税が行われる。しかし、実際にどのようなプロセスで税制が改められるのかを把握している方は少ないだろう。そこで、今回はそのプロセスと改正内容のポイントについて紹介する。

税制改正のプロセス

そもそも、税制はどのようなプロセスで改正されるのだろうか。日本国の税制改正には、租税法律主義(税制の改正を行う場合は議会の制定する法律に基づかなければならないという考え方)により、立法手続きが必要とされている。具体的には、改正までに以下の手続きを経る必要がある。

税制改正の要望を提出

税制の改正はあらゆるビジネスにとって重要なファクターだ。そのため、多くの業界団体は業務内容を所管する各省庁に対し、どのような改正内容が望ましいかを提言する。各省庁はこの内容をまとめ、国税を担当する財務省および地方税を担当する総務省に「税制改正要望」として提出する。

政府税制調査会での審議

税制改正要望はそれぞれの省庁で確認され、その後、政府による税制調査会で内容が調査・議論される。この税制調査会では、税制改正要望の内容を中心に、社会や経済の状況を踏まえた中長期的な計画を基に税制改正の方針を決定する。

与党税制調査委員会での審議

政府による税制調査会で取り決められた方針は、与党による税制調査会で再び内容を調査・議論される。この税制調査会では、より短期的な目線での税制改正事項について内容が精査され、ヒアリングや再審議を踏まえたうえで最終的な改正案としてまとめられる。この最終的な改正案を「税制改正の大綱」と呼ぶ。

国会審議後、改正法案を成立

税制改正の大綱は閣議決定された後、与党からその内容が発表される。そして、財務省と総務省は大綱の内容に基づいて改正法案を作成し、衆参両院で審議が採択される。両院で可決されると改正法案は成立し、翌年度より施行される。これにより税制は改正される。

税制改正要望の注目ポイント

税制改正要望は、各業界がビジネスにおいてどのようなポイントで変革を求めているのかを探るうえでも重要な指針となる。例えば、令和5年度の税制改正要望では、中小企業などの法人税率の特例が延長されたことに注目したい。このことにより、中小企業が苦しい状況にあること、そして国としてもこの状況を打破するために支援したいという意向があることを読み取れる。

現在、中小企業者などの法人税率は年800万円以下の所得金額について15%に軽減される措置が適用されている。この措置は以前の税制改正により令和3年度から2年間延長されることが決まっていたが、令和5年度の改正においてもさらに2年間延長されることが要望された。この措置はもともと、「中小企業の税負担を軽減することにより、継続的・積極的な賃上げが可能な体質への転換を促す」などの理由によって設けられたものだ。しかし、依然としてこの目的が実現したとは言いづらい状況が続いており、さらなる延長が求められたと考えられる。

税制改正が与える影響

2022年12月23日に令和5年度の税制改正大綱が閣議決定され、その内容が公開された。中小企業の経営者が注目すべきは、法人税の引き上げだろう。具体的には、法人税額に対し4~4.5%の新たな付加額が課されることになった。ただし、この引き上げは課税標準となる年の法人税額が500万円を超えた部分にのみ対象となる。従って利益が約2400万円を超える企業のみ対象になることに留意したい。

また、令和4年度の大綱において義務化の具体的内容制定が先送りされていた電子帳簿保存に関する制度についても、内容を緩和して設定されることが発表されている。例えば、これまで国税関係帳簿書類は電子データについて、売上高1,000万円以上の事業者は検索機能を備えた形で保存することを義務付ける見通しとなっていた。しかし、令和5年度の大綱ではこの条件が緩和され、検索機能を備えた形での保存は売上高5,000万円以上の事業者のみに課す義務とする方針が発表された。

令和5年度の税制改正大綱は、防衛費財源の確保を目的におおむね増税傾向の内容となった。今後この大綱は国会審議を経るわけだが、これまでのケースを鑑みるに、基本的にはほとんどの内容は変わらないまま改正法として成立するだろう。中小企業にとっては苦しい増税となることが考えられる。