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Wi-Fi 6Eの登場がビジネスに与えるインパクトとは

掲載日:2023/01/31

Wi-Fi 6Eの登場がビジネスに与えるインパクトとは

Wi-Fiで利用可能な周波数帯は約20年もの間拡張されていなかった。しかし、2022年発表の総務省の省令により、ついにWi-Fi 6の拡張版、Wi-Fi 6Eの利用が可能になる。2023年は日本でもWi-Fi 6Eが飛躍する年になるだろう。IT業界の悲願とも言われていたWi-Fi 6Eは、旧来のWi-Fiと何が違うのだろうか。

Wi-Fi 6EはWi-Fi 6と何が違うのか

2022年9月2日に総務省「電波法施行規則等の一部を改正する省令」を発表し、Wi-Fiで利用可能な周波数帯に6GHz帯を追加した。これにより、国内でもWi-Fi 6Eが利用可能になる。このWi-Fi 6Eにはどのような特徴があるのか、旧来のWi-Fiと比較しながら紹介する。

Wi-Fi 6

Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)は、2019年にリリースされたWi-Fiの国際標準規格である。Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)は最大速度が6.9Gbpsだったが、Wi-Fi 6で9.6Gbpsまで上がった。用途に合わせて2.4GHz帯と5GHz帯の二つの周波数帯を選択して利用可能なことも特徴だ。それぞれの周波数帯について具体的な特徴は以下のとおりである。

2.4GHz帯

2.4GHz帯は、周波数が低く、障害物に強いこと、電波が遠距離まで届きやすいことがメリットだ。実際、家具などの障害物が多い部屋でWi-Fiの接続が途切れやすい場合は、ルーターの設定を変更して2.4GHz帯を選択すると接続が安定する。

反面、2.4GHz帯はBluetoothの接続などに使用されたり、電子レンジやIHクッキングヒーターなどの家電が発する周波数帯であったりするため、ほかの機器と電波が干渉しやすく通信速度が落ちやすいというデメリットがある。

5GHz帯

5GHz帯は、もともと気象レーダーや航空無線航行システムなどに用いられており、2000年には室内Wi-Fi用に、2002年には屋外のWi-Fiにも使用が可能になった周波数帯である。2.4GHz帯よりも安定して高速度の通信が可能なことがメリットだ。一方、電波の直進性が高く、2.4GHz帯に比べると障害物の有無や距離の遠さに弱いというデメリットがある。

Wi-Fi 6E

Wi-Fi 6Eとは、Wi-Fi 6で選択可能な周波数帯に加え、6GHz帯も選択可能になったWi-Fiだ。「E」はExtendedの頭文字であり、Wi-Fi 6を拡張することを表している。

6GHz帯は、安定した高速通信が可能だ。独立した24チャンネルを利用可能なため、より多数の機器を干渉なく接続できるというメリットがある。また、利用可能な160MHzのバンド幅が3本に増加したことで、さらに快適な通信速度の安定を期待できるようになった。

Wi-Fi 6Eへの注目が高まる理由

このようにWi-Fi 6以上の性能が魅力的なWi-Fi 6Eだが、6GHzの開放以来、国内での注目が高まり続けている。

5GHzが追加されて以降、PCやスマートフォンはもちろん、インターネット接続が可能な家電やゲーム機などが次々と発売された。しかし、その間も周波数帯の拡張がなかったために干渉なく同時に接続可能なチャンネル数は限られており、通信速度に不満が残る場面もしばしば見受けられた。インターネットの通信速度が遅いことは、生活において不便なだけではなく、時としてビジネスの成否も左右する。Wi-Fi 6Eはこのような状況を打破する大きな転機として期待がかかっている。

Wi-Fi 6Eの開放で何が変わるのか

では、Wi-Fi 6Eによって我々の生活やビジネスはどのように変化するのだろうか。消費者としてこれまで以上に快適なインターネットを使えることはもちろん、ベンダーとしても大きなビジネスのチャンスを得られるだろう。

日本に先んじて2020年に6GHz帯を開放したアメリカでは、Wi-Fi 6Eの浸透が顕著だ。Wi-Fi Allianceの発表によると、2022年の時点でWi-Fi 6およびWi-Fi 6Eの市場浸透率は50%を超えており、2025年には80%超えが予測されているという。同団体の社長補佐は急速な浸透の理由を「多人数・複数機器で安定接続できるWi-Fi環境の需要増が起因している」と分析する。この需要の高まりは日本においても同様だと考えられる。

また、IDC Japanによる国内企業向けネットワーク機器市場動向と予測でも、Wi-Fi 6Eへの期待が報告されている。Wi-Fi 6Eの開放やハイブリッドワークに対する企業の適応がネットワーク機器市場の成長を後押しするほか、2026年までにWi-Fi 6およびWi-Fi 6Eが旧規格の規模を逆転すると予測しているとのことである。

実際、リモートワークの浸透により家庭のWi-Fiルーターを買い替える需要や、GIGAスクール構想に対応するため学校内の無線環境を整える需要など、これまでとは異なる需要の出現も顕著だ。ベンダーとしてはこのタイミングを逃さず、適切な製品・サービス提供の準備を進めたい。