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カスタマイズできるクラウド「インダストリークラウド」とは?

掲載日:2023/02/07

カスタマイズできるクラウド「インダストリークラウド」とは?

企業が業務にクラウドを活用することが一般的になった今日だが、その機能や利用環境に満足できていないという企業は多くあることだろう。この問題を解決するには、業務の特色に合わせてクラウドに適切なカスタマイズを施すことが必要だ。カスタマイズ可能なことで、より利用者の需要に応えられるようになったクラウドサービス「インダストリークラウド」の特徴を紹介する。

インダストリークラウドとパブリッククラウドの違い

インダストリークラウドとは、業種や業界の特徴に合わせて個別にカスタマイズされたクラウドサービスを指す言葉だ。対して、個別のカスタマイズがなく、クラウド事業者があらかじめ構築したクラウドサービスのことをパブリッククラウドと呼ぶ。

ガートナージャパン株式会社が2023年に発表した「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」によると、「2027年までに企業の50%以上は、ビジネス・イニシアチブを加速させるためにインダストリー・クラウド・プラットフォームを利用する」と予測されている。これほどまでにインダストリークラウドが注目されている理由は何だろうか。

企業がインダストリークラウドを選ぶメリット

企業がインダストリークラウドを活用する最大のメリットは、事業に最適化したクラウド環境を利用できるという点だ。具体的には、ビジネスの形態やセキュリティ意識などさまざまなポイントに応じてカスタマイズが施されたクラウドを使用できるということだ。

例えば、金融業界の企業が業務でクラウドを利用する際は、保有する複数の口座情報や顧客情報をリアルタイムに集計することなどがほかの業種に比べて重要視されるだろう。あるいは、医療業界の業務であれば、患者のカルテや来院状況などのデータ管理が求められる。

このように、それぞれの業界固有のポイントを重視するとなると、汎用的なパブリッククラウドでは実力不足になることも考えられる。そこで、各業界の業務に最適化されたインダストリークラウドが求められるというわけだ。また、企業がクラウドを利用する際は、その所在地やデータの保存地域によっては想定外のトラブルに巻き込まれる可能性がある。

例えば、EUではGDPR(EU一般データ保護規則)と呼ばれる規則が定められている。これは、EU内国民の個人情報データを合意なくEU外に転送することを禁止するものだ。仮に日本の企業がEUに店舗を構え、そこで収集した顧客のデータを合意なく日本に転送した場合も、この規則における規制の対象となる。このような事態を避けるためには、データの利用地域を厳密に制限するようカスタマイズしたインダストリークラウドを利用することが望ましい。

インダストリークラウドの活用でビジネスの加速を目指す

最適化やトラブル防止といったメリットを得ることで、企業は効率的に成長を遂げられるだろうと言われている。まさしく、ビジネスを加速させるための技術としてインダストリークラウドに注目が集まるゆえんである。

また、インダストリークラウドの導入検討は、現状のIT機能を見直すきっかけにもなるだろう。新たなクラウドソリューション導入に際して既存のシステムやサービスを再評価することで、社内のリソースを割いていたIT業務を外注し、その分を競合他社との差別化などといったコア業務に再集中させられる可能性がある。

ただ、インダストリークラウドのような新しいソリューションの導入を、自社だけで推し進めていくというのは難しい。今後、今まで以上に外部リソースをうまく活用しようという企業が増加することが考えられるため、ベンダーとしては各企業が抱えている状況や要望を整理し、適切な提案へとつなげたい。