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現況把握のデジタル化と、3D CAD活用によるDXの取り組み

掲載日:2023/02/28

現況把握のデジタル化と、3D CAD活用によるDXの取り組み

消費者のニーズが多様化し、その変化も激しくなってきた昨今、製造業においてはこの潮流に合った生産速度が求められる。コロナ禍の影響もあってDX(デジタルフォーメーション)の実現は急務と言えるが、デジタル化をどのように進めればよいか迷い、頓挫してしまうケースも多い。そこで、オートデスクの製造業向けコレクションを用いた具体例を参考に提案していただきたい。

DXで不確実性の高い時代への対応

技術の進歩による製品の複雑化や価値観の多様化の影響により、市場のニーズが短期間で変化してしまう。製造業においては、以前のような大量生産・大量消費は成り立たず、多品種、小ロットの製品をいかに効率よく迅速に生産できるかが課題となっている。ところがコロナ禍の影響で一カ所に集まって製品開発を行うといった従来のスタイルが困難な状況がある。そのため世の中の変化に対応するためにはデジタル化の推進は必要だが、その実現に苦労しているケースも見受けられる。そこで、オートデスクの製造業向けコレクション「Product Design & Manufacturing Collection(PDMC)」を活用した、現況把握のデジタル化と、3DCAD活用によるDXへの取り組みについて解説する。

3Dスキャンで工場の点群データを取得しReCapで検討

ここでは、近年みられた「コロナ禍の需要に対応するべく、急遽フェイスシールドの製造ラインを立ち上げる」をシナリオとして、デジタル化の手順を説明しよう。顔を覆うフィルムは購入品で、頭部のベルトは自社製造。市場動向の不安定さや、多様なサイズの必要性に鑑みて、3Dプリンターを用いた多品種少量生産を行うものとしている。

既存の工場に新しく製造ラインを設ける以上、まず着手するのは現況の把握となる。紙の図面は常に最新状態へメンテナンスされているとは限らず、都度現地で確認するとなると時間と費用がかかり、決して効率が良いとは言えない。そのような状況を改善できる点からして、デジタル化の意義は大きいといえる。例えば「ReCap Pro」を利用すれば、工場の現況を3Dレーザースキャナーで測定し、取得した点群データを元に、PC上で製造ラインの定義や検討を行える。

ReCap Pro上では、工場内の設備や資材などの寸法を、取得したデータで測定可能。各データはグループごとに管理でき、具体的に「詰まれた資材をまとめて非表示にする」といった検討が容易にできる。これにより、資材を整理して空いた区画で、フェイスシールドの製造ラインを立ち上げるといった計画をスムーズに行うことが可能だ。

点群データの編集結果を元にレイアウトを配置

ReCap Proで編集したデータは、AutoCADで取り込むことが可能。2D作図機能で設備配置の基準点を打つなどの作業を行い、製造ラインの定義をより具体的に進められる。ここで有用なのが、PDMCに同梱の「AutoCAD Mechanical」と「Factory Design Utilities」だ。工場レイアウトに関するアセットを豊富に利用できるうえ、2D図面上に配置したアセットを、3Dモデリングツールの「Inventor」上で自動的に表示することが可能。2Dと3Dを調整しながら連携できるため、抜けや漏れなどのミスや、作図工数を大幅に削減できるといった、大きなメリットを得られる。

3D表示に変換し詳細にシミュレート

Inventorによる3D表示には、詳細な検証ができるメリットもある。現実に近い状況を画面上で再現できるため、2D図面だけでは困難な高さ方向の検討や、干渉チェックが可能となり、ミスを未然に防止し手戻りの削減にも貢献する。この例では、作業台や3Dプリンター、作業員のマネキンなどを、実践を想定して配置することが可能だ。「機器のインターフェースは作業員に適切な高さにあるか」「作業員間のソーシャルディスタンスを保てるか」といった、現実に起こりうる問題を事前にシミュレートできる。もしどうしても作業員同士が近くなってしまう場合は、追加でアクリル板を設けるといった仕様追加も容易。AutoCADに切り替えると、2D図面にも自動で反映されるので、間違いも起こりにくい。

全データを集めて全体検証

Inventorの3DモデルやAutoCADの図面、ReCapの点群データと、これまで複数のツールで扱ってきたデータは、「Navisworks Manage」上でひとまとめにして全体検証を行える。大規模なデータでも軽快に検証でき、より現実に近い環境でのレビューが可能だ。視認性が大幅に向上するため、意思疎通を円滑に行い、伝達ミスを軽減。検証結果は朱書きコメントなどでフィードバックできるので、スタッフ間のコンセンサス形成に役立つだろう。

VRでより実践的な検証も可能

PDMC外のツールではあるが、「VRED」を導入すれば、全体検証はより詳細に行える。これは作成したレイアウトに入り込めるVRツール。実際に作業員の視点で製造ラインを間近に見て、3D空間内で作業性を確認できる。例えば「マテリアルは手に届く範囲にあるか」「この立ち位置ではヒジが台にぶつかりやすい」といった、実際に現場へ出ないと分かりにくい使い勝手を確認することが可能だ。

製図から検証に至るまでの工程が簡便かつ迅速となり、コスト削減まで可能と、デジタル化には多くのメリットがある。この事例を参考にプロセスを確立し、効率化に役立てていただきたい。

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