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クラウド活用はDX推進のカギになる?

掲載日:2023/03/21

クラウド活用はDX推進のカギになる?

2021年に経済産業省が発表した「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究の請負」についての報告では、コロナ後の経済再生について、クラウド化による官民のDX推進が重要だと指摘されている。なぜ、DX推進においてクラウドの活用が特記されるほど重要なのだろうか。その理由と実例について紹介する。

企業におけるDX推進の現状

2022年11月に一般社団法人日本能率協会が発表した「当面する企業経営課題に関する調査」によると、DXに取り組んでいると回答した大企業の割合は80%を超えているという。一方、中小企業の場合は約36%にとどまっており、規模によってDXの浸透に大きく差が出ていることが浮き彫りとなった。

また、同調査において「DX推進の課題は何か?」という質問については、約86%が「DX人材に関わる人材が不足している(育成)」、約83%が「DX人材に関わる人材が不足している(採用)」、約56%が「経営資源の投入が十分にできていない」と回答している。実際、中小企業でDXを進めるに当たり、オンプレミスで環境を整えることは手間の面でも金銭的な面でも至難の業だろう。つまりコストの問題を解決できないことには、DX推進の実現は困難だということだ。

DXにおけるクラウド活用のメリット

このようなDX推進の現状に対し、有効な解決策として注目されているのがクラウドソリューションの積極的な活用だ。クラウドソリューションには以下のような特徴があり、中小企業のDXを大きく推進する効果が期待できる。

運用人材の少人数化

クラウドを活用したDXはその性質上、オンプレミスの場合に比べ、少人数でシステムを管理・運用できるという特徴がある。また多くのクラウドソリューションはサービス提供側が運用中のトラブルについて対応する専用のサポート体制を敷いているほか、日々のシステムメンテナンスにも対応してくれる。情報システム部門に多くの人材リソースを割けない企業にとって、このようなサポート体制は大きな助けになることだろう。

導入までの期間・手間削減

オンプレミスでDXを推進する場合、機器の選定やその設置なども企業側が取りまとめなくてはいけない。十分な環境が整備できるまでに一定の期間が必要なだけではなく、それを実現するためにほかの業務を差し置いて人的リソースを分配しなければいけないというのも難点だ。クラウドであれば、機器を取りそろえる必要がなく、またそれを設置するスペースの準備といった物理的な制約からも解放される。結果的に導入・活用までの期間を大きく削減可能だ。

コストの削減

クラウドを活用した場合、前述のようなメリットを低コストで実現できる。特に、多くのクラウドサービスはサービスの規模を自由に設定できるため、中小企業でも無理のないイニシャルコストで導入を始められる。最初は低コスト・低リターンの設定で導入し、使い勝手を確かめながら規模を大きくできるため、導入時の金銭的リスクも軽減可能だ。

クラウドの活用事例

実際にクラウドを活用し、それまで以上にDXを推進できたという事例は多数報告されている。

例えば、とある医療・健康系企業では、クラウド型グループウェアを導入したことにより社員同士のコミュニケーションをはじめとした社内外の連絡業務のDXに成功した。同社では、営業の打ち合わせ記録や顧客からの問い合わせ、クレーム履歴から社内の日報といった幅広い情報を同一のグループウェア上で管理しているという。このように多岐にわたる情報を一元管理するシステムを中小企業でも気軽に導入できることは、クラウドの強みだ。

また、とある生活用品メーカーでは、クラウド型のビッグデータ分析基盤を導入したことにより、これまでにない顧客価値創造を実現させた。全国的に商品を展開する同社では顧客の反応を収集するだけでも非常に困難だったが、大手IT企業の提供する基盤を活用したことにより、取り扱える情報量が格段に増加した。現在は全国規模の商品でも2週間ほどでデータ分析を賄える体制を構築することに成功したという。

このようにDX推進に大きな効果が期待されるクラウドだが、注意しなければいけないのがセキュリティ対策である。紙資料による情報管理は不便である半面、ある種外部と隔絶されるというセキュリティの担保につながっていた。場所や時間を問わず情報に接続できるクラウドには、外部からの不正な接触のきっかけになり得るという面も存在する。セキュリティ対策については最低限のコストを覚悟することも重要になるだろう。