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柔軟にネットワーク回線を選択できる「SD-WAN」とは

掲載日:2023/04/04

I柔軟にネットワーク回線を選択できる「SD WAN」とは

SD-WAN(Software Defined-Wide Area Network)は、2015年ごろから日本で提供され始めた技術だが、導入する企業が右肩上がりに増えたとは言いがたい状態だった。しかし、コロナ禍と働き方改革により、テレワークやハイブリッドワークが浸透するとともにSD-WANも注目されている。SD-WANの必要性やメリットはどこにあるのだろうか。

SD-WANとはどのような技術か?

SD-WANは、ソフトウェアを使ってネットワークを制御するSDN(Software Defined Networking)技術をWAN(Wide Area Network)に適用したものだ。SDNは、ソフトウェアを利用してネットワークを制御する技術の総称で、ネットワークを構成するルーターやスイッチなどの機器をソフトウェアで一括制御する。

WANは離れた拠点間のLAN(Local Area Network)を相互に接続するネットワーク。本社や支社、営業所間など点在している場所をつなぐために用いられている。WANは通信事業者が構築し、専用線やブロードバンド回線、LTE/5Gなどを用いて通信を行う。しかし、せっかく各拠点にネットワークを敷いても、テレワークをする人が増えると社内LANが使われなくなっていく。遠方にいる作業者は、直接クラウドサービスやデータセンターにアクセスすれば良いからだ。

WANを無駄なく使うための一つの技術として注目されているのがSD-WANだ。SD-WANを導入すると、回線の使用状況などをソフトウェアで可視化できる。これにより、アプリの使用状況によって通信経路をインターネット網、LTE網などで切り替えたりすることが可能になる。つまり、通信速度の最適化を図れるのだ。

また、ルーターなどのハードウェアに依存しないため、ネットワーク設計が柔軟に行えること、遠隔からでも一括で設定できることもSD-WANの特長だ。

SD-WANのメリットは、以下のようにまとめられるだろう。
● ネットワーク回線コストを低減できる
● ネットワーク管理者がWAN全体を一元管理できる
● 通信速度を最適化できる
● クラウドサービスやSaaSに安全にアクセスできる
● 拠点が増えても対応できる

そのほか、SD-WANを説明するときに覚えておきたいのが「ローカルブレークアウト」だ。全拠点からの通信を社内のネットワークにつなぐのではなく、特定のアプリやクラウドサービスは、直接インターネット回線に流すものだ。SD-WANはこれも可能にする。

例えば、Microsoft 365などのセキュリティがしっかりしていて高負荷なサービスはローカルブレークアウトを用いて、それ以外のものは本社のセキュリティゲートウェイを通すといった設定にすれば、ネットワークへの負荷が分散され、誰もが快適に業務を遂行できる。

比較されるほかの技術

SD-WANはよくVPN(Virtual Private Network)と比較される。両者とも、ネットワークを仮想化するという概念は同じだ。しかし、VPNは2拠点のみを仮想的につなぐだけであり、SD-WANがWANの集合体として相互接続しているのとは異なる。

VPNのうち、特に通信事業者が提供するIP網を用いるものをIP-VPN(MPLS)という。このIP-VPNは管理するのが通信事業者のため、SD-WANよりも管理、変更などに制約が生じてしまう。柔軟性を持たせたければ、SD-WANに軍配が上がる。

SD-WANが今またおすすめできる理由

コロナが収束してオフィスワークに戻っている企業もあるが、以前より狭いオフィスに移転して、社員の数割が常時テレワークをする前提にしたところもある。コロナが落ち着いても新たな感染症がいつまた流行るか分からないから、という理由を挙げる企業や、育児や介護でフルタイム出勤が難しい従業員でも働きやすい環境をつくるためという企業もある。

いずれにせよ、テレワークやハイブリッドワークを採用する企業は今後も拡大していくと考えて良いだろう。そうなると、在宅やサテライトオフィスなどの環境からセキュアにクラウドサービスにつなぐ方法や、専用線を用いた高額な社内ネットワークのダウンサイジング、通信トラフィックの変化に対する柔軟な対応が求められる。

その対応にSD-WANは選択肢の一つになっていくだろう。ただ、SD-WANを導入するには運用管理ができる人材が求められること、社内外のWAN回線を行き来するのでセキュリティ対策が必須になることが考えられる。

SD-WANによるネットワークの使い方を見直すのと同時に、社内の運用体制を確認しておくことが必要だ。もし、お客様がネットワーク構築で問題を抱えていて、それにSD-WANが最適解であるのなら、課題のサポートを行い、いつでも提案できるようにしておきたい。