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サブスクリプションビジネス最新事情

掲載日:2023/04/18

サブスクリプションビジネス最新事情

サブスクとも呼ばれるサブスクリプションビジネスは、定期的に料金を支払って利用するコンテンツやサービスのこと。この概念自体は特に新しいものではなく、雑誌や新聞の定期購読などで以前から行われていた。しかし、近年サブスクリプションビジネスは急激に市場を拡大している。なぜサブスクリプション(以下、サブスク)は人気があるのだろうか。その理由と最新のサービスについて解説する。

サブスクの市場規模

2019年の流行語大賞に「サブスク」という言葉がノミネートされたことから、2019年をサブスク元年とする説もあるが、実際にはサブスクビジネスが流行り始めたのは2018年頃と言われている。これはあくまでも一般的に浸透した時期であり、コンテンツをサブスクで提供する企業はこれより前から存在していた。

Office 365(現Microsoft 365)のサービス開始は2011年、Adobe Creative Cloudのサービス開始は2012年、Netflixが日本でサービス開始したのは2015年など、2010年台の前半にはサブスクビジネスは定着しつつあった。

NTTコミュニケーションズの試算によると、国内のサブスク市場規模は2020年にBtoCで8,000億円、2024年には1.2兆円になると見込まれている。BtoBも合わせると2024年には50兆円にも上ると予測されている。

IT・インターネットの進歩により拡大傾向にあったところ、コロナ禍での巣ごもり需要が大きくけん引した形だ。

サブスクが成長する理由

サブスクが成長した一番の理由として、消費者の価値観の変化が挙げられる。物の豊かさよりも心の豊かさを重視する人が増え、また、できるだけ物を持たない暮らしに憧れるようになっているのだ。サブスクなら不要になったときに解約できるため、ずっと持ち続ける必要がない。

製品・サービスを提供する企業側からすると、サブスクは売って終わりにならないため、一定期間継続的な売上が続くというメリットが見込まれる。売り切りの製品・サービスと異なり、長期的に顧客と密接な関係を続けていくことが可能になるというわけだ。

このような理由からサブスクは市場を広げてきていたが、コロナ禍がさらに追い風となった分野もある。外出自粛により自宅にいる時間が増え、動画配信や音楽配信のサービスに登録する人やオンラインで勉強をする人が増加したほか、リモートワークの普及でSaaSを導入する企業も多数ある。

今後のサブスク

サブスクで提供されているものに、動画・音楽配信、ゲーム、業務用アプリなどのSaaSがまず挙げられる。しかし、デジタルコンテンツに限らず、あらゆる分野にサブスクビジネスは広がりを見せる。

SaaS

オフィス、会計、クリエーティブ、SFA、MA、CRMほか、SaaSで提供する業務用アプリは枚挙にいとまがない。現在、ほとんどの企業で何らかのサブスクを契約していると言っても間違いないだろう。

IoT

IoTソリューションのサブスクも浸透している。IoTは導入時の人的・金銭的負担が懸念されることが多いため、環境構築などの負担が少ないサブスクサービスの需要は高い。昨年は大手電機メーカーが提供する、IoTを活用した見守りサービスのサブスクが話題になった。

動画・音楽配信

動画や音楽もサブスクの配信で楽しむ人が増えた。CDやDVDの売上減からも明らかだ。消費者庁が公表したサブスクサービス市場の調査では、動画・音楽配信サービスともに、サブスク利用者は年々増加傾向にある。

ファッション

毎月定額料金で、洋服やアクセサリー、バッグなどをレンタルできる。スタイリストがコーディネートをする付加価値をもたせている物もある。気に入った服は買い取れるようになっていて、コロナ禍で実店舗での試着が難しかった頃に人気を集めた。

家具・家電・カメラ

かつてのように高級家具を一生ものとして買う人が減り、安い組み立て式の家具が売れるようになった。ライフサイクルが変わるとサイズや色、柄が新しい家に合わなくなることがあるからだ。しかし、安い家具を使うことに抵抗があるという層も少なからず存在する。そこでフィットするのが家具・家電などのサービスだ。返却時には、次のユーザーのところに直送するという流通手段をとっている企業もあり、この方法であれば企業が在庫を持たずに済む。

自動車

車両価格に点検・整備、保険、自動車税、車検などをセットにして月額定額で提供。手数料を払えば契約期間内であってもほかの車種に乗り換えができるようになっている。自動車を買うまとまったお金がない、車両代以外の経費がその年ごとに変わるため家計が逼迫(ひっぱく)する心配がある、といった人でも利用しやすい。子どもの成長に合わせて柔軟に車種を変えられるところも人気の理由だ。

食品

野菜など食材を宅配する。レシピ付きで、そのとおりに調理すれば良い物もあり、忙しい家庭に人気だ。農家や食材を提供する側にとっては、フードロス対策にもなり、双方向にメリットがある。野菜など食材を宅配する。レシピ付きで、そのとおりに調理すれば良い物もあり、忙しい家庭に人気だ。農家や食材を提供する側にとっては、フードロス対策にもなり、双方向にメリットがある。

サブスクには無料お試し期間を経て有料になる物もあるが、その際に契約解除を忘れて延々料金を支払ってしまった、解約方法が分かりにくい、などのトラブルも生じている。
そういった問題点は解決していく必要はあるが、今後もあらゆる分野でのサブスクビジネスは増えていくだろう。

デジタルコンテンツ以外でもサブスクで提供できる物はある。売り切りで販売している製品を、サブスクに変えることを考えてみてはいかがだろうか。