ネットワーク

災害に備えたい 企業のネットワーク対策とは

掲載日:2023/04/25

災害に備えたい 企業のネットワーク対策とは

近年、大地震や大雨などによる自然災害が後を絶たない。災害に備えてBCP(事業継続計画)が大切なことは言うまでもないが、特にネットワークが利用できなくなる場合、損失が少なくないばかりか、従業員の安否確認が難しくなる可能性もある。災害が起こるとネットワークにどのような影響があるのか、それに対してどう対策すべきなのか、平時から考えておく必要があるだろう。

自治体の災害時のインターネット活用

災害時、情報の伝達を行う中心となるのは自治体だ。国や自治体が行っている対策からは、企業も学ぶことが多い。そこで、災害時に自治体がどのようにネットワークを活用しているかを、まずは見てみよう。

住民への情報発信

従来、町の至るところにスピーカーが設置され、災害発生時はそのスピーカーを通して情報が発信されてきた。しかし、豪雨で音がかき消されて、避難が遅れたというケースなどが報告されている。また、停電が起きるとテレビを通してメッセージを伝えることもできない。

より確実なのは、携帯電話やスマートフォンに「緊急速報メール」を届けることだ。そこで、各通信事業者が提供する緊急速報メールサービスを導入したり、SNSを通じて情報を提供したりする自治体もある。

安否確認

災害時は、電話がつながりにくくなり、安否確認が難しい。ここでもインターネットが活用される。自治体側、住民側双方がデバイスを持っていれば、お互いに自分の安否を登録し、それを確認できる。

東日本大震災のときには、震災発生2時間後にGoogle社によるサービスが開始され、早い段階での安否確認ができたという実績もある。また「Yahoo!」をはじめ、その他各社が運営するサイトも、避難所名簿検索などのサービスを提供している。

医療・健康相談

大災害時には医療機関も被災し、被災者へのケアが十分に行き届かなくなる。慣れない避難所や仮設住宅では体調を崩す人が少なくないため、オンラインで医療従事者が相談を受けるサービスが提供されている。

自治体の公式サイトの負荷軽減

被災者の多くは情報を集めるために自治体のWebサイトにアクセスする。アクセスが集中するとサーバー機能が停止するリスクがあるため、ミラーサイト(公式Webサイトと同様のサイトを異なるサーバーに構築するサイト)や、キャッシュサイト(一時的に検索エンジンに複製されたサイト)に誘導することで、Webサイトへの負荷を分散させる。

「Yahoo!」では、災害時に各省庁・自治体・交通機関などの公式Webサイトのキャッシュサイトを提供し、公式Webサイトで内容が更新されるとその情報を60秒以内に反映させた。また、東日本大震災のとき、岩手県は公式Webサイトをテキスト情報のみに切り替えてサーバーの負荷を軽減させている。

通信環境の確保

通信が途絶えてしまったら、いくらほかの対策を行っても元も子もない。通信環境の確保は最重要課題だろう。

自治体では、避難所の近くに衛星通信機能がある移動基地局などを設置した。インターネット衛星「きずな」(JAXA)などを活用し、災害対策のWebミーティングを実施したこともある。また、通信各社も一時的に無線LANを無料開放して対応した。

企業に求められる対策

通信の基地局が損壊したり、引込線が断線したりといった被害を受けた場合、企業では対応しきれないこともある。しかし、通信事業者側に問題がない限りは、ネットワークがつながるような対策が必要だ。また、つながらなくなったときの対応方法も事前に考えておくべきだろう。

停電対策

停電でネットワーク機器がダウンすることを避けるために、LANのハブやルーターなどにもUPSを配備するなど、災害による停電の対策は不可欠だ。

社内サイトのミラーリング

従業員向けに社内サイトで発信している場合は、サーバーが落ちた場合に備えてミラーサイトをすぐに用意できるようにしておくべきだろう。

データのバックアップ

ネットワーク関係に限らず、万が一に備えて重要なデータは常にバックアップしておく必要がある。

Wi-Fiアクセスポイントを確認

フリーWi-Fiはセキュリティの面から業務にはおすすめできないが、有事の際は人命の安全確保が最優先となる。安否の確認などで必要があれば、各自治体や事業者が提供するWi-Fiアクセスポイントの利用も検討したい。

一般社団法人無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)が提供する災害用統一SSID「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」の取り組みとして、一時的にWi-Fiアクセスポイントが一般開放される場合があることも覚えておくと良いだろう。

次にいつ大規模災害が発生するかは誰にも予測できない。そのため、できることからでも早めの対策が必要だ。お客様にはその重要性を伝え、必要なサービスや機器を提案したい。