IoT・AI

異次元の自動化技術「ハイパーオートメーション」の魅力とは

掲載日:2023/05/09

異次元の自動化技術「ハイパーオートメーション」の魅力とは

ガートナージャパン株式会社が2021年に発表した2022年版の「戦略的テクノロジ・トップ10」には、ハイパーオートメーションと呼ばれる技術がランクインしている。発表から時間がたった今でもこの技術に対する注目が高まっているわけだが、これまで一般的だった自動化技術とは何が違うのだろうか。

RPA以上に人間の介在が少ない

コロナ禍以降、必ずしも人間が現地で手を動かすことが最適というわけではないと多くの人々が気付いたこともあってか、自動化技術への注目が高まっているようだ。実際、RPAを手掛けるアスニカ株式会社の調査によると、同社の2021年度のRPAロボットの新規利用台数は、2019年度比で1.5倍に増加したという。

RPAとは、ホワイトカラー業務の自動化技術を指す言葉だ。産業革命以降、ブルーワーカーが担ってきた作業の多くは機械に置き換えられてきたわけだが、RPAはそれらの管理や分析といった「人間でなければ対応が難しい」と考えられてきた業務も代行してくれる。ただ、企業の中で人間が業務を担当する必要がなくなったわけではない。RPAはあくまで単一のホワイトカラー業務を代行する技術であるため、それをどのように分配するか、あるいは調整するかなどの分野をはじめ、大部分はまだ人間による判断が求められる。

しかし、近年は前述した理想に限りなく近づくような技術が誕生し、注目を集め始めている。それが、業務フロー全体を自動化する技術であるハイパーオートメーションだ。ハイパーオートメーションでは、RPAが担っていた業務はもちろん、人間が判断していた分野についても、AIや自然言語処理といった技術によって自動化が可能になる。

ハイパーオートメーション導入のメリットとは

飛躍的に自動化できる業務の幅が広がるハイパーオートメーションだが、それを活用する企業はどのようなメリットを得られるのだろうか。まず注目すべきは、業務効率の大幅な向上である。言うまでもなく労働できる時間は限られているが、ハイパーオートメーションは24時間365日業務を進められる。生産性の向上が期待できるだけでなく、人件費削減につなげることも可能だ。

また、作業をハイパーオートメーションに代替してもらうことで生じた人的リソースは、これまで見過ごされていた業務へ分配することも可能になる。誰がやっても同じような仕事は機械に任せ、人間はより創造的な業務へ専念するという考え方が加速することだろう。

あるいは、業務フロー全般を自動化することにより、統合的なテータ計測や分析が可能になるという点もメリットである。RPAではどうしても担当する業務を人間が仲介する必要があり、その部分のデータは収集が困難だったわけだが、ハイパーオートメーションであれば抜けもれがない。

国内のハイパーオートメーション導入事例

メリットの多さに注目が集まるハイパーオートメーションだが、実際に導入を進めている企業ではどのような効果が発揮されているのだろうか。

例えば、大手製薬会社では医薬品安全性監視(PV:PharmacoVigilance)業務の効率化を目的にハイパーオートメーションを導入したという。PVは薬品の安全性を担保するために世界中の症例や使用状況などの情報と製品を照らし合わせる必要がある複雑な業務だが、同社ではこの時間と手間のかかる作業をハイパーオートメーションに担わせることで業務時間を6分の1にまで削減することに成功した。今後はハイパーオートメーションの活用幅をさらに広げる一方、業務から解放された人的リソースをさらに創造的に活用することを予定しているという。

また、とある旅行会社では、業務フローの全国的な標準化を目的にハイパーオートメーションを導入。同社では旅行という商品の特性上、全国に分散した組織がローカルルール的にそれぞれの業務フローを作り上げており、企業全体として足並みをそろえた業務進行や効率向上が難しいという問題を抱えていたという。そこでハイパーオートメーションを導入し、属人的な状況の解消から問題の解決を目指すこととなった。結果的に同社では月間稼働時間が4,000時間を超えるほどハイパーオートメーションの活用が浸透したほか、手作業では発生しやすかった単純作業での抜けもれが減少するなど、副次的な効果も実感できているという。今後はハイパーオートメーションのクラウド化にも注力し、さらに稼働を推し進めることで問題解決を目指すと報告されている。

効果的な活用のために

より一層の浸透に期待がかかるハイパーオートメーションだが、実際に効率的な活用を目指すとなると根本的な業務プロセスの見直しが欠かせない。24時間365日稼働させることが可能だからこそ、あらかじめ不要な業務を省いておかなければ、余分な業務を発生させることになりかねないためだ。すぐにハイパーオートメーションの活用が難しいと感じる企業も、将来的な導入に向けて今のうちから組織改革を進めておくことには意味がありそうだ。