IoT・AI

AIと雇用の関係性を探る!

掲載日:2023/05/23

AIと雇用の関係性を探る!

近年、業務の多くがAIに奪われる、いわゆる「AI失業」が増えていくのではないかと言われている。本当にそうなる可能性は高いのだろうか。また、AIが人間に取って代わる業種はどのようなものだろうか。現時点で予測されていることを見ていこう。

人間の仕事の47%を機械が行うようになる?

オックスフォード大学のカール・ベネディクト・フレイ氏とマイケル・オズボーン氏が2013年に発表した論文「The Future of Employment: How susceptible are jobs to computerisation?」に、アメリカの現在の雇用のうち47%がコンピューターに取って代わられる可能性があることが述べられている。

この論文は、いまだに世界中に大きなインパクトを与え続け、AIと雇用の関係を語る際にも参考にされる。これを基にすると、AIの発達で約半数の仕事がなくなり、失業率が増大する可能性が高いということになる。

しかし、この論文には異論もある。マサチューセッツ工科大学のデイビッド・オーター氏は2015年に発表した論文「Why Are There Still So Many Jobs? The History and Future of Workplace Automation」で19世紀から技術の発展とともに多くの職業が奪われると言われてきたが、実際にはそうではないと論じている。

オーター氏によれば、プログラム化が可能なルーティン業務は機械に代替されてきている。しかし、対人関係の業務や、企業コンサルタントやアナリストなどのスキルが必要な(オーター氏の論文中では『高スキル』と表現されている)業務は、その増加速度は減少しているものの労働者の数自体は増加しているというのだ。同じような傾向がAIと雇用の関係でも見られるのではないだろうか。

TVニュースや新聞におけるAIでの試み

最近では、TVのニュースの一部がAIによって読み上げられている。また、とある新聞社ではAIが新聞記事の文章を言葉に自動変換してアナウンスするサービスや、AIが決算データを基に文章を作成し、要点をまとめて配信するまでを完全に自動化したサービスも始めている。

このような、文章や画像などのデータを認識し処理する業務は、人間からAIに取って代わるものだと言える。スピード面で人間より優れているほか、人間が書く記事のようなバイアスがかからないこともメリットになる。

しかし、TVニュースを見る人や内容に合わせて口調を変えたり、臨機応変に内容を変更したりすることは、AIにはまだ難しい。災害時にアナウンサーが「命を守るため、一刻も早く逃げてください!」と声を大にして訴えることがある。このように見る人の感情に訴えかけることは、生身の人間の方が得意だろう。

また、インタビュー記事をAIに書かせると仮定する。インタビュイーが理路整然と話す人なら、AIでもまとめあげることができるかもしれないが、話の焦点が定まらない人、話が飛躍する人の音声を読み取ってまとめることは難しいと考えられる。

AIの発展でなくなるとされている業種

諸説あるのだが、AIが人間に取って代わるだろうと言われている職種には以下のようなものがある。

デスクワーク系の業種

AIは数字を扱う作業や分析が得意なため、経理や総務などのいわゆる「事務職」はなくなる可能性が高いとされている。 また、将来的にAIがもっと確立されてくると、プログラマーやエンジニアなどの職も減る可能性がある。さらに公認会計士や司法書士なども、AIが取って代わるという説を唱える者もいる。

そのほかの形態の業種

自動運転が可能になると、電車の運転士やタクシーの運転手がいなくなるかもしれない。製造業でも、AIの担う部分は増えるだろう。

レジ打ちの仕事も不要になると言われている。薬剤師も、薬歴管理や調剤業務などが不要になる可能性がある。服薬指導は人が行う方が良いため、薬剤師という職業がなくなることはないが、減少することはあり得る。

警備員や清掃業も、AI+ロボットで取って代わることは可能になるかもしれない。

AIに影響を受けない業種は?

一方、医療関係者や裁判官、航空機操縦士などの専門業種はAIの影響を受けにくいだろう。また心理療法士やカウンセラーのように、人間の心の機微を読み取る必要のある業務もAIには難しい。創造性の高い業種も同様だ。

AIは具象的な概念なら理解できるが、抽象的な芸術・哲学などの理解に至るには相当の進化を要するのではないだろうか。

AIをうまく使いこなすことが大切

AIが人間に取って代わる業種は明確には判断できない。ただ、どの業種でもAIの導入が進んでいくと予測されるため、AIの技術については常に最新情報を仕入れておきたい。

今まで時間を取られていたルーティン業務をAIに任せて、上位工程を人間が行うことや、新規事業の立ち上げができれば、今までにないサービスを生み出せる可能性も出てくる。

AIで仕事を奪われるというネガティブな要因よりも、AIを使いこなして、より良い仕事を生み出すことを考えていければ理想的だ。