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DXへ一歩前進! デジタル人材育成のコツ

掲載日:2023/05/30

DXへ一歩前進! デジタル人材育成のコツ

一口にDXと言っても、それは機材や環境を整えるだけで実現できるものではない。どの企業でもDXを実現するために不可欠な要素と言えば、社内のデジタル人材だ。しかし、「自社のデジタル人材は充足している」と言える企業はどれほど存在するだろうか。日本企業がなぜデジタル人材の確保に難航しているのかを説明し、その解決につなげるための方向性について紹介する。

国内デジタル人材不足の現状

近年、国内のデジタル人材不足を嘆く声をよく耳にする。総務省が2022年に発表した「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負成果報告書」によると、「デジタル化に関する現在認識している、もしくは今後想定される課題や障壁」という質問に対し、「人材不足」と回答した割合は約68%で設問中最高の数字となった。同様の調査を行った諸外国と比較すると中国が約56%、ドイツが約51%と低く、アメリカでは約27%と日本の割合よりも大きく下回っている。この結果からも、日本においてデジタル人材不足が深刻化していることが分かる。

この状況を踏まえ、経済産業省はデジタル人材育成を目的としたヒアリング調査と対策の検討会を複数回実施している。2021年に開催された「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」の資料によると、「ビジネスモデルやDX戦略が異なるが故に、企業によって人材確保・育成アプローチに大きな差があること」が人材不足の原因であり、その遠因として「そもそもビジネスモデルの変革が進まないことやDX戦略不在の企業が多いこと」が影響していると分析された。経済産業省はこの分析に対し、企業への変革を促す政策インセンティブをかけることや、人材が継続的に学び続けられる環境の整備などが重要だとしている。

なお、経済産業省は2022年よりデジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」を開設した。これは、社会人を対象にデジタル知識・能力を身に付ける実践的な学びの場として機能することを目的としたポータルサイトであり、「AI」「データサイエンス」といったカテゴリごとの講座を習得難易度別に設けていることが特徴である。先の検討会資料で挙げられていた「学び続けられる環境」の一環として機能することに期待がかかるところだ。

デジタル人材確保のために見定めるべきポイントとは

しかし、全国的にDX化の波が押し寄せている中、省庁の取り組みを待っているだけでは企業が必要なIT人材の確保は難しい。自力で確保に動きたいところだが、その中で多くの企業が頭を悩ませている問題と言えば「どこから手を付ければ良いのか分からない」ということだろう。

ここで重要になるのが、求めるデジタル人材がその企業にとってどのような事業を達成するために必要なのかを見定めることだ。一人の人材にあらゆる技能を習得させることはキャパシティ的に無理があり、効率も悪い。長期的なビジョンを定め、習得した知識や経験を発揮できる実践機会まで見据えて計画を立てることが重要である。

先進企業のアプローチ事例

では、実際にデジタル人材の育成に成功した企業ではどのようなアプローチをかけているのだろうか。例えば、とある大手IT企業では、将来的な新規事業の立ち上げを目的として社内に「DX本部」を発足し、もともと営業などを担当していた社員を呼び寄せてIT知識のリスキリングを行った。これは、リスクの大きい新規事業の立ち上げを見据えた場合、確実かつ低コストでの優秀な人員の確保が必要になったためである。同社では新規事業をリードする人材を「事業プロデューサー」と定義し、「事業開発」「プロジェクト運営」などミッションを細かく設定することでリスキリングの方向性を明確化するなど効率的な育成を心掛けたという。

とはいえ、このように社内で専門部署を立ち上げて集中的な育成を進めるという方法は、従業員数が少ない中小企業では難しい。そのような中、とある中小飲食企業では新型コロナウイルスの影響で客足が遠のいた店舗を休業し、コロナ禍期間を使ってその従業員にITリテラシーを学ばせる研修を実施した。研修の結果、同社は来店者数をAIで予測するシステムなどを自社で開発することに成功し、営業を再開した店舗の業務に生かしているという。このように、現状では貢献の難しい事業の人員を大胆に休ませ、将来のデジタル人材として集中的に育成するという手段もある。

また、しばしば中小企業のデジタル人材育成において耳にするのが「経営者が積極的にIT知識を身に付けることで、従業員が学習のモチベーションを上げた」という体験談だ。実際、とある中小小売企業では、全社的なデジタル人材確保に先んじて社長がITスキルを身に付けたところ、それが影響して社員の意欲を向上させたという事例を報告している。同社は業種柄、社員のDXへの関心はもともと高くなかったというが、現在はITを活用した業務改善やライブコマースの実施などのアイデアが現場から上がるようになり、意識の変革に成功したという。

今後のデジタル人材不足に向けて

データの利活用をはじめとした産業構造の変革は、すぐそこまで来ている。数年後までに確保すべきデジタル人材の数はこれまでの比ではないだろう。企業としては効率的かつ低コストに人材育成を進めたいところだ。

そこで必要となるのが、人材育成ツールなどを含む最新のソリューションである。ベンダーは、企業全体のITリテラシー向上を目指す足がかりとして、まずは基礎的なアプローチとして適切なソリューションを紹介することからビジネスにつなげていきたい。