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ChatGPT なぜこんなに注目?

掲載日:2023/05/30

ChatGPT なぜこんなに注目?

2023年4月、「ChatGPT」の開発で知られるOpenAI社CEOのサミュエル・H・アルトマン氏が来日し、AIの利活用について岸田文雄首相と意見を交換した。OpenAIは日本市場に高い関心を持っており、新たに東京へ事業拠点を設けることも検討しているという。これにより、近い将来日本でのさらなる利活用の拡大が予想されるChatGPTだが、どのような魅力を持つ技術なのだろうか。

ChatGPTとは?

ChatGPTとは、OpenAIが2022年11月30日から無料公開している対話型AIである。GPT-3.5と呼ばれる大規模言語モデルをベースに設計されており、従来のチャットボットに比べはるかに自然な会話が可能であることが特徴だ。自然な会話が可能な理由は、ChatGPTがWeb上に存在する膨大なテキストを学習しているためである。言語モデルの精度に直結すると言われるパラメーター数を比較した場合、ChatGPT以前に公開されていたとある日本語言語モデルは390億個だったのに対し、GPT-3.5は3,550億個と、はるかに上回っている。

ChatGPTは個人がAIとの会話を楽しむことに使えるだけではなく、テキストの生成や要約、翻訳などにも活用できる性能を有している。また、自然言語以外に、多様なプログラミング言語を取り扱えることも特徴だ。そのため、資料を読み込ませて必要な内容を抽出させることや、具体的な活用ケースを伝えることによりプログラムコードを書かせることなども可能である。すなわち、従来は人間が頭を使って創造しなければいけなかった業務の大半をChatGPTに代行させることも可能というわけだ。

ただし、ChatGPTの出す回答にはたびたび間違いがあることも報告されており、今すぐにビジネスにおける人間の働きを、広く代行するには正確性が欠けていることも指摘されている。また、現在公開されているChatGPTは2021年9月までの情報しか学習していないため、直近の出来事を反映した回答が出せない。だが、これらの欠点はChatGPTの新モデルで改良されると予想されている。

さらに進化したGPT-4への期待

実際、OpenAIが2023年に公開した最新の言語モデルであるGPT-4は、GPT-3.5に比べてさらに高性能であることが発表されている。GPT-4のパラメーター数は非公開ながら5,000億~100兆個と予想されており、GPT-3.5の比ではない。OpenAIの発表によると、GPT-3.5にアメリカの司法試験を解かせたところ下位10%のスコアを記録したのに対し、GPT-4の場合は上位10%のスコアをたたき出したというのだから、性能の差は一目瞭然である。

メリットは人間をはるかに上回るタフさ

ChatGPTをビジネスで活用する場合に得られる最大のメリットは、人間と異なり、何時間でも好きなだけ働かせることができるという点だ。難解な作業でも文句を言わず対応してくれるChatGPTは、人材難を解決する際に大きな効果を発揮してくれる。

また、ChatGPTはAIであるが故に、ハラスメントの問題を考慮する必要がない点もメリットだ。例えば顧客対応業務においては、カスタマーハラスメントにより、従業員が精神的負荷を抱える事例がしばしば報告されているが、ChatGPTに対応を代行してもらえばこのような問題は発生しなくなる。

ChatGPTのビジネス活用事例

OpenAIはChatGPTのAPIを有料提供している。企業はこのAPIを取得し、各々のサービスに組み込んで活用することが可能だ。ChatGPTは既にビジネスの世界で活用されており、多くの企業にメリットを与えている。例えば、とある金融コンサルティング企業では、非上場企業の企業情報をChatGPTが調査し、自動的に要約するサービスを提供している。非上場企業は一般に公開する企業情報が少ない。そのため企業情報を人間がWebから検索してまとめることは困難だが、ChatGPTを用いることで負担なく極めて高精度に情報を得られると発表されている。

また、とある人材サービス系企業では、土日や深夜帯における問い合わせ窓口をChatGPTが代行するシステムの実証実験を進めているという。このような条件下で人間が応対する場合は休日出勤手当や残業代がかさむうえ、担当者の負担も大きくなる。しかし、ChatGPTであればこのような問題が丸ごと解決されるだけに、代行システムの効果は大きい。

さらに、とある海外の大学では、ChatGPTを使ってプログラムのバグを発見する研究を進めている。同大学によると、現在一般的にバグの発見・修正に用いられるAPRシステムに比べ、ChatGPTを使った場合はコスト・時間の両面で優れた結果が期待できるという。

ウィズChatGPTに向けて

このように利便性が高いからこそ心配になるのが、ChatGPTによるプライバシー保護の問題だ。実際、カナダにおけるプライバシー保護の当局は個人情報の活用方法についての苦情を受け、OpenAIに対する調査を始めたと報道されている。ChatGPTが必ずしもプライバシーを脅かすとは言えないものの、今後AIがより社会に浸透した場合、望まない情報を読み取られる、また第三者が不正に利用するきっかけになり得るといった可能性も拭いきれない。

場合によっては日本でも政治レベルの対応が求められ、法規制などの動きが加速することもあり得るだろう。将来的にAIによる恩恵を最大限受け取るためにも、プライバシー保護の問題や情報流出などのデメリットが最小限に抑えられるような社会を構築することが重要だ。