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コンテンツ制作の新トレンド! バーチャルプロダクションの実態を探る

掲載日:2023/06/06

DXへ一歩前進! デジタル人材育成のコツ

バーチャルプロダクションとは、バーチャル(仮想空間)な背景と、実際の人物などの被写体を同時に撮影し、その場で合成する映像制作の方法である。従来のロケ撮影や映像加工に比べて、ローコストなうえ制作期間が短縮できると注目を浴びている。

バーチャルプロダクションの仕組み

バーチャルプロダクションは、高度なデジタル技術を用いた撮影方法の総称だが、特にその技術の一つ「インカメラVFX」を指していうことが多い。

インカメラVFXは、LEDウォールと呼ばれる、映像やCGIを映し出すLEDディスプレイをバックに、被写体(人物や小道具など)を置いて同時に撮影し、リアルタイムで合成する。

従来のロケなどでの撮影では、被写体となるキャストや撮影スタッフが機材を持って移動する必要があり、コストも時間も膨大なものだった。さらに、現地で天候が急に変わって撮影延期・中止といった事態も生じていた。

クロマキー合成の場合は、グリーンやブルーバックの背景で撮影し、別の映像と合成させるが、後処理が必要。リアルタイムで合成する技術もあるが、毛先などが背景とうまくなじまなかったり、肌や洋服に背景の色が映り込んだりするなどの問題が生じることもある。

しかし、バーチャルプロダクションなら、スタジオでの撮影のため移動の時間や経費が抑えられ、天候による制約がなくなる。また、合成の後処理も不要で、現場で監督が仕上がりまでチェックすることが可能だ。

バーチャルプロダクションの技術の核になっているのは、カメラトラッキング、LEDウォール、レンダリングの3点と言えるだろう。

バーチャルプロダクションに必要な手順として主に挙げられるのは、まず被写体を撮影する実写カメラのリアルタイムでのトラッキング。そして、そのトラッキング情報と仮想空間(背景)を撮影するCGカメラとの同期がある。実写カメラを動かすとCGカメラも同時に動くので、仮想空間が現実の世界であるかのように撮影可能。撮影した映像はCGカメラでレンダリングする。

TVドラマやCMでの利用の拡大

バーチャルプロダクションが大きな話題になったきっかけは、2019年に公開された世界的なエンターテインメント企業のTVドラマシリーズだったが、日本のTVやMVなどでも既に取り入れられている。

NHKの大河ドラマでは、合戦をはじめとしてあらゆるシーンでインカメラVFXが用いられている。また、その撮影の様子もTVで放映された。まだ全てのドラマに取り入れられるまでには至らないが、Music VideoやCMなどでバーチャルプロダクションは徐々に広がりつつある。

日本におけるバーチャルプロダクション施設の現状

現在、日本に設置されている代表的なバーチャルプロダクションの施設や、そのための機材を見ていこう。

代表的なバーチャルプロダクションの施設

とある映像コンテンツの制作会社は、最先端技術の撮影が行えるバーチャルプロダクションスタジオを2022年にオープン。横15.2×縦5.4m(解像度9,600×3,456ピクセル)の高画質LEDディスプレイに、ソニーのCineAltaカメラ「VENICE」を常備している。

また、大手映画制作・配給会社では、バーチャルプロダクション部を発足。実証試験を行って、撮影所のステージを、横30×縦5mのLEDウォールを持つスタジオとしてリニューアルした。

大手光学機器メーカーは子会社として映像・コンテンツ制作会社を設立。被写体を3次元で動画のように撮影・計測するボリュメトリック映像やバーチャルプロダクションなど、最先端の撮影技術を活用した企画・制作を行う。また、ボリュメトリック・バーチャルプロダクション撮影を行えるスタジオも開設した。

多種多様な媒体での活用も

バーチャルプロダクションは、主にロケ撮影の代わりや、空想世界の撮影手法として用いられているが、オンラインイベントなどにも活用されている。

また映画、ドラマ、ミュージックビデオなどの制作を行う業種だけのものだけでなく、CM制作・イベントにも関わってくるとなるとさまざまな企業で活用される可能性はあるだろう。映像撮影の最新技術をぜひチェックしていきたい。