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メタバースで可能になる?「バーチャル不死」とは

掲載日:2023/06/13

メタバースで可能になる?「バーチャル不死」とは

メタバースやAIなどデジタル技術の発達で、人間が仮想世界で生き続けたり、蘇ったりということが可能になってきている。バーチャル不死の可能性はどこまで広がるのだろうか。

バーチャル不死とは

死後も、その故人のデジタルレプリカが生き続けている状態のことを、バーチャル不死という。

2019年紅白歌合戦で、1989年に亡くなった美空ひばり氏がAIで蘇り、新曲を披露したことは記憶に新しい。動きに多少不自然なところはあったものの、ディープラーニング技術を用いて合成した歌声は、生前の美空ひばり氏が残した音源だといえば信じる人も多かっただろう。

美空ひばり氏の姿は、モーションキャプチャーを用いた3Dホログラム映像によって制作された。死者の映像データから特定の人物を再現する方法は「デジタルクローン」、「デジタルヒューマン」などとも呼ばれている。

平野啓一郎氏は小説『本心』で、亡くなった母親とのバーチャルな再会を描いた。主人公が亡くなった母親のバーチャルフィギュアを制作依頼し、再現されたAIの母親との生活の中で母親の本心を知ろうと試みる、という内容だ。フィクションではあるが、このようなことも近い将来、現実になる可能性は高い。

バーチャル不死を実現する技術

バーチャル不死は、人間の生前のデータを用いてバーチャル世界で再生し実現する。そのための技術の柱は、メタバース、AI、Web3 (Web3.0) だ。

メタバース

仮想的世界にアバターを作成するメタバースであれば、生きている人と同様に死者であっても存在できる。故人のデータを用いて本人によく似たアバターを作れば、仮想空間の中でいつでも故人と会えるのだ。

AI

生前の動画や音源を、ディープラーニングで学習させ声や姿を再現する。美空ひばり氏の再現で音声部分を担ったヤマハの『VOCALOID:AI』では、録音データから伴奏を取り除き、歌声だけを抽出したうえで学習データを生成している。

また、マイクロソフトは、個人のSNSへの投稿や画像、音声データ、テキストメッセージなどから、その人物の会話型チャットボット作成に関する特許を取得している。

いずれも故人の性格や癖を分析し、本人が言いそうなことを実現させ、あたかも本人がその場にいるような感覚で会話することが可能になるかもしれない。

Web3 (Web3.0)

故人を再生させる場所として、特定のメタバースサービスなどを用いると、サービス終了と同時にバーチャルな生も終わってしまう。分散型ネットワークであるブロックチェーンなどのWeb3 (Web3.0)なら、永続性を持たせることができるのではと期待されている。

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ドバイのスタートアップ企業「Stonses」は、ブロックチェーンを利用した追悼プラットフォームを立ち上げた。故人の思い出がある物にQRコードを貼り、その情報を読みとることでデジタルレプリカを立ち上げる。故人の思い出をNFTとして永続的に保管すること目指している。

バーチャル不死が向かう先とは

前述した以外にも、バーチャル不死を実現しつつある企業が出てきている。

家系図プラットフォームを提供しているイスラエルのMyHeritageは、写真上にいる亡き親族の顔を動かせるディープフェイクツール『Deep Nostalgia』を開発。

ハードウェアの開発企業でもあるアメリカのPositronは、映画館の4DX上映などで用いられるVR用モーションチェア『Voyager』を手がけている。この技術も、その動きや香りで故人を想起させる装置になりそうだ。

ヴァーチャルプラットフォームを展開しているメタバース企業Somnium Spaceの「Live Forever」モードでは故人の表情や会話の癖などを、生存中のデータを用いて「デジタルクローン」化できる。

コロナ禍でリアルなイベントができなかった時期に、バーチャルイベントが注目され、資金を集めている企業が多い。バーチャル不死に関しては、まだ本格的に始まったとはいえないが、プライベートでも用いられるようになれば、今後広がっていく可能性はある。