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「Web3(Web3.0)」最新事情

掲載日:2023/06/20

「Web3(Web3.0)」最新事情

2021年後半から話題になっているWeb3(Web3.0)。ブロックチェーンの技術などを用いてデータの分散型管理を行うため、セキュリティリスクを低減できると期待されている。しかし、現在Web3は冬の時代とも言われている。その理由とは何か。Web3は現在どのような状況にあるのだろうか。

Web3が注目されたきっかけ

Web3を簡単に言うと、「ブロックチェーン技術で実現した分散型インターネット」だ。特定の管理者が不在で、特定のプラットフォームにも依存しない。Web3、Web3.0の二通りの表記があるが、Web3とするのが正しいという主張と、Web3.0とほとんど同義だとする説がある。

Web3を正しいとする主張には理由がある。コンピューターシステムはWebサイトの内容や意味を理解できない。Webサイトの内容に、メタデータを付加し、コンピューターシステムやソフトウェアが自律的にWebサイトの内容を収集したり、加工したりできるようにする構想があり、これをセマンティックWebという。Web3.0というのは、このセマンティックWebを指す言葉としても使用されるため、Web3とWeb3.0は明確に分けるべきだという主張につながるのだ。

しかし、Web3.0をセマンティックWebだと定義することはほとんどなくなり、現在はほぼ同義ととらえられている。政府・経済産業省でも、分散型インターネットのことを「Web3.0」と表記している。

Web3が注目されるようになったのは、NFT取引やDeFi(分散型金融)の影響が大きい。
デジタルアートやコミック、トレーディングカード、音楽など、コピーが容易で所有者を明確にできなかったものが、NFTとひも付けることで、所有者の証明が可能になる。DeFiは、ブロックチェーン上に構築された金融アプリである。管理者不在で、金融資金管理が行えるサービスだ。

また、Web2.0では、GAFAMなどのプラットフォーム事業者に情報が集中しているが、Web3では個人の判断で情報管理が可能であるというメリットがある。

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Web3の現状

新サービスとして期待され、順調に広がるかのように見えたWeb3だが、現在は停滞気味で、冬の時代とも言われている。

その理由の一つがFTXの経営破綻だ。
FTXは2019年に香港で設立し、2021年にバハマに拠点を移した仮想通貨取引所だ。2022年5月には、日本人向けのFTX Japanもサービス開始がされ、扱う金融商品が多いことで人気を集めていた。

そのFTXが2022年11月に100万人以上の顧客を抱えたまま破綻。その後、2023年2月に、日本法人では認証済みアカウントに引き出しの再開を許可し、暗号資産と現金の引き出しのみ可能になっている。

しかし、このようなこともあり投資家が仮想通貨取引に慎重になったため、Web3は順調に進んでいるとは言いがたいのが現状だ。

Web3を見据えた企業の動き

とはいえ、Web3が衰退したわけではない。さまざまな企業が、Web3に向けて準備を進めている。

大手通信会社は、2023年3月にWeb3やメタバースの新サービスを始動した。自由視点でのバーチャルライブなどを視聴できるサービスやNFTアートの売買ができるサービス、リアル店舗と連動した仮想空間上の店舗でショッピングができるサービスなど、五つのサービスを展開するようだ。

さらに大手印刷会社では、2023年4月にNFTでWeb上のファンコミュニティに参加できる認証技術を開発。メタバース空間でのイベントにおいて、NFTアート作品の購入者特典の付与を行う認証システムとして採用された。これは、一般ユーザーは原則として無料で利用できるようになっている。

また、大手通信会社はクレジットカード決済や暗号資産(ETH)で決済して売買できるサービスを、大手電子書籍取次会社はネットワーク会社と連携してデジタルトレカ、デジタルフィギュアなどのデジタル上のファン向け収集品の売買・収集・鑑賞・共有ができるサービスをオープンした。大手飲料会社でも、アメリカ・ニューヨークにDX推進を担う部署を設立。Web3、NFT、ブロックチェーンなどの技術を吸収して事業に生かすことが目的だ。

推進に向けた動きと今後の可能性

内閣官房の新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議では、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中で、NFT利用などのWeb3の推進に向けた環境基盤を挙げている。

ブロックチェーン技術を基盤としたNFT、DAO(分散型自律組織)などは、従来のインターネットの在り方を変えて、社会変革につながる可能性を秘めているとし、Web3に向けた環境整備について検討を進める方針だ。

Web3はまだ発展途上だが、今後拡大していく可能性があると言われている。新サービスの情報を見逃さないように、常にアンテナを張っておきたい。