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2045年問題「シンギュラリティ」解説!

掲載日:2023/07/11

2045年問題「シンギュラリティ」解説!

「シンギュラリティ」とはAIが人類の知性を上回る時点のことで、日本語では技術的特異点と訳されている。AIが進化し続けると、人類が生み出したAIよりも賢いAIをAI自身が作り上げるのだという。シンギュラリティ到来によって、我々の仕事や生活はどのように変化するのだろうか。

シンギュラリティ説を取り巻く状況

シンギュラリティ(技術的特異点)の概念は、アメリカの発明家・思想家・未来学者・実業家であるレイ・カーツワイル氏(以下、カーツワイル氏)の著書『The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology』が出版された2005年頃から、徐々に浸透しはじめた。この著書の中で、カーツワイル氏が「2045年に技術的特異点が来る」と提唱していることから、シンギュラリティが起こった未来のことは、2045年問題と呼ばれている。

2007年には、NHK出版から同書の邦訳版が出版。ただその時点で「シンギュラリティ」という言葉はほとんど知られておらず『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』という邦題が採用されている。

シンギュラリティが注目され始めたのは2008年。カーツワイル氏と起業家のピーター・ディアマンディス氏が「シンギュラリティ・ユニバーシティ」というシンクタンク兼教育機関を設立し、シリコンバレーのIT企業が研究教育プログラムに参加したことがきっかけだとされている。

さらに2012年頃にディープラーニングが登場し、第3次AIブームが起こると、シンギュラリティはさらに注目を浴びるようになる。2015年にNRI(野村総合研究所)とオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授、カール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究で「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」と題するレポートを発表。このレポートでは、10~20年以内に、日本の労働人口の約49%が従事する職業をAIで代替可能になる、という試算があり、AIが人類に追いつく未来が現実的なものになってきた。

ここ数年でまた大きく取り上げられるようになってきた理由には、シンギュラリティが到来するとされている2045年が近づいてきたことや、生成AIの浸透などでAIの進化がより一層注目されるようになったことがあるだろう。

なぜシンギュラリティが起こるのか

カーツワイル氏は、さまざまなシンギュラリティの原則を挙げており、宇宙の中に人類の知能が飽和するという「宇宙の運命」にも言及している。

また、指数関数的なIT能力の成長の傾向でよく知られているのが「ムーアの法則」だ。これは1965年、集積回路の発明者で、後のインテル会長となるゴードン・ムーア氏が、集積回路上に積み込める半導体は18~24カ月で2倍になると提唱したものだ。ムーアの法則が有効だと考えると、半導体の性能は指数関数的に上がっていくため、コンピュータの能力が人類を上回る可能性を示唆される。

しかしながら、2000年過ぎにはムーアの法則は限界があることも指摘されるようになり、ムーア氏自身も長くは続かないとしている。ただカーツワイル氏は、ムーアの法則の先に「収穫加速の法則」があると提唱した。これは対象を半導体にとどめず、物理と化学、生命とDNA、脳、テクノロジーなど幅広い分野で適用できるとするものだ。

シンギュラリティが到来すると

2045年にシンギュラリティが到来するとカーツワイル氏をはじめとする研究者たちは言うが、その前段階として2030年にはプレ・シンギュラリティが到来するという説もある。

一方で、シンギュラリティの考えそのものを否定する意見もある。カーツワイル氏は「2015年頃にはスーパーコンピューターが人間の脳の性能に達し、2020年にはパーソナルコンピューターがそうなる」と予測していたが、実際にはそこまで至っていない。

ただAIや機械の性能がすさまじい勢いで進化しているのは確かで、シンギュラリティが起こらなくても近い状況になる可能性はある。そうなると、一部の職業の仕事はAIが代替するようになるだろう。また、カーツワイル説にあるように、ナノテクノロジーが人間の体の一部を人工化できるようになるかもしれない。

現時点で、シンギュラリティが本当に到来するのか、またそれがいつなのかは誰にも分からない。しかし、AIの進化によって我々の日常が変わっていくことは間違いないだろう。AIをはじめとする最新技術の進化についての情報は広く、早めに収集しそのときが来たときに慌てないようにしておきたい。