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高齢化社会の課題を解決!? エイジテックとは

掲載日:2023/08/01

高齢化社会の課題を解決!? エイジテックとは

高齢化社会が進み、市場の拡大が予測されるのが「エイジテック(Age Tech)」だ。高齢者×テクノロジー、つまり高齢者自身や高齢化社会の抱える問題をIT技術で解決するというサービスや製品のことをいう。高齢化が進む日本で求められているのはどのようなテクノロジーなのだろうか。

高齢化社会の現状と課題

日本の総人口が年々減少傾向にあるのと対照的に、65歳以上の高齢者は増加している。2022年9月のデータによると、高齢者人口は前年に比べて6万人増加し、過去最多の3627万人となった。総人口1億2,471万人に占める割合が29.1%に当たる。

2023年4月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、2056年には人口が1億人を下回り9,965万人に、2070年には8,700万人になると推計されている。一方で高齢者の増加傾向は続き、2037年には日本人口の3分の1が高齢者になり、2070年には高齢者が38.7%を占めるとされている。

高齢化社会の到来で、労働力の不足や社会保障の問題が取り上げられることが増えた。また、身近でも高齢者家族の介護について話を聞いたり、自治体の放送で高齢者の行方不明の案内を聞いたりすることがあるのではないだろうか。

こうした問題をIT技術で解決しようというのがエイジテックだ。エイジテックのサービスや商品はこの先需要が増え、2025年には世界で2.7兆米ドルまで膨れ上がるだろうといわれている。

エイジテックサービスの種類

生活レベルでの高齢者問題は、大きく3つに分けられる。1つ目は、高齢者自身が病気や衰えから生活が困難になること。2つ目は、高齢者を抱える家族に負担がかかること。3つ目は、高齢者を支える介護サービス業者や自治体の人材や財源が不足することだ。

エイジテックではそれぞれの問題の解決に役立つようなサービスが開発されている。

高齢者自身が利用するサービス

お金の管理に関して苦労している高齢者は多いのではないだろうか。いわゆる振り込め詐欺も、高齢者に被害が多いのは認知能力が低下して、正常な判断がつかないことにも起因する。また詐欺ではなくても、あえて高齢者をターゲットにして高額商品を買わせたり、不要なリフォームを契約させたりといった業者が存在する。

さらに、認知症という診断を受けると特殊詐欺防止のために金融資産が凍結されることもある。凍結は、成年後見制度を用いて解除できるが、家庭裁判所に申し立てるなどの手間が生じる。これを解決するサービスとして、家族間で円滑に財産を信託できるクラウドサービスが開発されている。

高齢者は健康問題も多く抱える。一人で病院に行くことが困難な場合や、医療機関が遠くて移動が大変などといった事情がある場合、定期的な通院ならオンライン診療が便利だ。

また、日ごろの体調を管理するIoT機器も登場した。スマートウォッチなどのウェアラブル機器で血圧や脈拍のデータを取り、それをスマホなどに連携するサービスや、便器にセンサーを取り付け、尿で健康状態をチェックする機器、就寝中の脳波を測定する機器なども開発されている。

高齢者の家族が用いるサービス

高齢な親が遠くに住んでいる場合や、同居していても仕事中は親だけを家に置いておかなければならない場合は、親の様子を把握するのが困難だ。このケースに対しては、カメラを設置し、親のことを遠隔から見守るシステムがある。またカメラで異常を検知すると人材が派遣されるサービスも行われている。

逆に、高齢者が孤独に陥らないように、スマホやタブレットを使えない人でも、テレビを通して遠くにいる家族から送られた写真や動画を視聴できるサービスの実証実験も行われている。

介護サービス業者・自治体が用いるサービス

徘徊を防止するために、鍵を簡単に開けられないようにする機器や、GPSを用いた位置把握のシステム、ベッドから離れたことを通知する離床感知器など次々と新サービスが登場している。これは、自治体のほかに家族も用いることができる。

介護職の人材不足が常態化しているうえに、介護人材自身も高齢化しつつある。体力を使う仕事だけに、ロボットやパワースーツなどの補助が入るメリットは大きい。

エイジテックの普及のために

高齢者にとって、新しい機械を使うことはかなり面倒なことだ。分かりやすいUIなら問題ないというものでもない。「年寄り扱い」をされることを嫌がり、家族が薦めても高齢者用機器であるというだけで使いたがらない高齢者もいる。

その機器を使うことで本人にメリットが大きいこと、あるいは自分の衰えを感じずに楽しく使用できる工夫が必要になるだろう。

現在、多くの新興企業がエイジテック分野に参入している。また、既存メーカーもエイジテック関連部署を設けて新たなビジネスに乗り出している。エイジテックはこの先急速に拡大していくことが見込まれる。新しい技術に注目していきたい。