SDGs
社会問題の解決に役立つ金融活動! 「サステナブルファイナンス」とは?
掲載日:2023/08/29
現在、SDGsという言葉が広く浸透し、世界中が持続可能な社会の実現を目指して取り組みを進めている。ただ、そのために必要なコストの問題を無視することはできない。そこで注目を浴びているのが、金融面でのスキームである「サステナブルファイナンス」だ。
持続可能な社会の実現に必要な資金の不足
「持続可能な社会」の実現に向けて、国や自治体から多額の資金が供給されている。しかし、気候変動や格差拡大などといった問題の解決が急がれる中で、行政の資金だけでは対処しきれないというのが現状だ。
そこで必要となったのが、民間の資金を社会問題の解決に流すためのスキーム整備だ。このスキームを「サステナブルファイナンス」と呼ぶ。
サステナブルファイナンスと混同される概念としてESGが挙げられるが、ESGとは、「環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの視点でビジネスを行うべき」という考え方を表した言葉であり、この概念に基づいた投資をESG投資と呼ぶ。サステナブルファイナンスとは、このESG投資を含む企業の資金活用スキームを指す言葉だ。
サステナブルファイナンスの取り組み事例
サステナブルファイナンスは近年世界的なトレンドとなっており、実践に向けた取り組み事例も多数報告されている。
例えばEUでは、2018年に「サステナブルファイナンスアクションプラン」が採択された。この取り組みでは、「環境面で持続可能な経済活動」を判断する基準を制定し、それを満たすプロジェクトへの投資を支援する方法の検討などが行われている。2021年にはこの取り組みに加え、持続可能な経済への移行に向けた金融セクターの支援に必要な行動を示した「サステナブル経済への移行に向けたファイナンス戦略」が採択された。
また、東京都ではグリーンボンド(環境問題の解決に貢献する事業において、資金を調達するための債券)の発行支援を行う事業や、サステナビリティ・リンク・ローン(環境的・社会的に持続可能な経済活動および経済成長を促進し、支援することを目指すローン)の融資を受ける中小企業などに対し、補助金を交付するなどの取り組みが行われている。
企業イメージアップへの効果
企業がサステナブルファイナンスに参画するメリットは、まず持続可能な社会の実現に対しての意識をアピールできることにある。2022年にソーシャルアクションカンパニー株式会社が発表した調査では、SDGsに取り組む企業に対し、実に8割以上の消費者が「応援したい」と回答している。同調査によると、特に若い世代ほど「応援したい」と回答する割合が増える傾向にあるため、中長期的な企業のブランドイメージ改善に効果が期待できるとも読み取れるだろう。
また、グローバル市場においてもESG投資に対する注目が集まっている。日本でも2015年に年金積立金管理運用独立行政法人が、国連責任投資原則(投資にESGの視点を組み入れることなどを原則として掲げるガイドライン)へ署名したことで飛躍的に注目度が上がった。持続可能な社会の実現に前向きな企業であるとアピールすることは、非常に効果が大きい施策だと考えられる。
サステナブルファイナンスの課題
重要性を増すサステナブルファイナンスだが、その影響で苦しい立場に立たされる企業も存在する。特に、大企業に比べると資金的に劣る中小企業は、ESGに対し早急なアクションを起こすことが困難だろう。ESGに重きを置く投資家の中には、中小企業に対してダイベストメント(投資撤退)を決断する者も出てきた。ダイベストメントによってアクションを起こす可能性が失われることは本末転倒であるため、行政によるトランジションファイナンス(脱炭素社会の実現に向けて、長期的な戦略に則り、着実なGHG削減の取組を行う企業に対して、その取り組みを支援することを目的とした新しい手法)が必要ではないかという議論も起こっている。
もちろん、不適切な資金供給を防ぐため、トランジションファイナンスの前提として企業に対する十分な審査や基準策定も不可欠になる。企業のポテンシャルを生かすためにも、行政にはスピード感とバランス感、両方を重視した施策が求められている。