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対話型AIはビジネスの味方になるのか?

掲載日:2023/08/29

対話型AIはビジネスの味方になるのか?

対話型AIというのは、人とコンピューターとの間で自然言語を用いてチャットで会話するシステムだ。2022年末から、ChatGPTやBard、Bingチャットなどの対話型AIが注目を集めている。対話型AIは現代のビジネスでどのように活用できるのだろうか。

AIはどう発展してきたのか

対話型AIは、生成AI(ジェネレーティブAI)の一種である。生成AIには画像や動画を生成するもの、音声を文字起こしするもの、そしてチャットで質問をすると回答を生成する対話型AIがある。

AIの歴史をひもとくと、第1次AIブームは1960年代にまでさかのぼる。マサチューセッツ工科大学のジョセフ・ワイゼンバウム氏により初の自然言語処理プログラム「イライザ(ELIZA)」が開発された。

当時のAIは、迷路やチェスといった特定の問題を解くことはできたが、現実世界の複雑な問題を解決するには至らなかったためAI人材の需要が減少し、1970年代からAI業界は冬の時代に突入してしまう。

第2次AIブームの到来は1980年代。コンピューターに知識を蓄積させ、それを元に問題を解決する「エキスパートシステム」が研究・開発された。これにより専門的な知識を持たずとも専門家と同等の推論や結論を導けるようになった。しかし、この時代でもまだコンピューターが自ら学習することはできず、人間が大量の知識をコンピューターにインプットしなければならなかった。

そして、現在に続く第3次AIブームは2000年頃に起こった。AIが自らインターネット上にある膨大な量の情報を学習・推論する「ディープラーニング」など、技術的なブレークスルーによって、AIは飛躍的に進化を遂げた。

対話型AIの仕組み

チャット形式で質問をすると、人間が考えたような自然な文章で回答が来る対話型AI。2022年11月にOpenAIの「ChatGPT」が登場すると、瞬く間に世界で注目されるようになった。

それ以前にも、SiriやGoogleアシスタントなど、質問に対する回答をくれるバーチャルアシスタントは存在していたが、仕組みは大きく異なる。Siriなどは事前にQ&Aの内容が想定された「ルールベース」で会話を構成する仕組みで、答えには限りがある。

一方、ChatGPTなどの最新対話型AIは、ルール化されていない新たな回答を生成できる。機械学習による自然言語処理モデルの一種である「大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)」の技術がこれを実現させた。

仕組みとしては、膨大な量のテキストデータから、各単語に結びつく可能性の高い単語を予測して文章を生成するようになっている。AI自身が意味を理解しているわけではないので、一見まともな文章であっても誤りが含まれていることも少なくない。

ビジネスへの活用

対話型AIはどのようにビジネスへ取り入れられるのだろうか。

自然な文章が生成できるということで、Web記事の作成や広告のコピーライティングが期待されている。現時点ではまだ正確性に欠けるため、そのままの文章を使用することはできないが、骨子を対話型AIで作成し、それに人間が肉付けしていくような使い方をする活用方法などが考えられる。

短いキャッチコピーは製品の説明文を入力して、そこからAIで生成する方法もあるだろう。謝罪文やお礼の文章などある程度定型があるものは、生成型AIが得意とするものである。カスタマーサービスの部署で用いることもできそうだ。プログラミングやExcelの関数・VBAにも使用できるとされている。ただし、自然言語での回答同様、100%正しいとは限らないため注意が必要だ。

日常のオフィスワークでは、社内の報告書や議事録の作成、文書の要約などに使用することで作業時間の軽減が期待できる。 また、インターネット上の検索でも役立つ。Microsoft Edgeのサイドバーに組み込まれたBingチャットでは、自然文で質問をすると出典付きで回答文を生成する。

プロンプトの作成が大切

現状ではまだ誤りもあるため、知識がない分野で使用するとリスクが生じる。ビジネスで使用する場合は、対話型AIで生成した文章の内容をチェックできる要員や体制を用意しておくべきだろう。

対話型AIでは、できるだけ具体的に質問(命令)をしないと、求めている回答が生成されないことがある。そのため、質問文(AIプロンプト)には工夫が必要だ。AIプロンプトに求められるのは、簡潔・具体的・明確な文章。必要に応じて、背景などを付け加えると良い。

このAIプロンプトの工夫を「プロンプトエンジニアリング」と言い、プロンプトエンジニアという専門職も生まれている。

MM総研が2023年6月に発表した「日米企業におけるChatGPT利用動向調査」(2023年5月末時点)によると、日本企業でChatGPTをビジネスで使用しているのは7%にとどまり、逆にChatGPTを知らないと回答した企業が46%だった。

同調査では、ChatGPTの問題点として、回答の精度やプライバシー、著作権などが挙げられている。

対話型AIが浸透するまでにどれほどの時間がかかるのかは現時点では明言できない。しかし今後、精度が上がってプライバシーや権利関係の問題がクリアになれば、一気に需要が拡大する可能性もある。最新情報をチェックしていきたい。