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意図せず批判の対象に⁉ 他人事ではないグリーンウォッシュ

掲載日:2023/09/05

意図せず批判の対象に⁉ 他人事ではないグリーンウォッシュ

環境やエコに配慮する施策は、企業のイメージアップにつながる。しかし、地球に優しい取り組みに見えても実態が伴わないケースがあり、問題視されている。また企業としては真摯に取り組んでいるつもりが、実際には環境のためになっていないと批判の対象になる場合もある。環境保全のために、企業はどのように動くべきなのだろうか。

グリーンウォッシュとは? 現状とその問題点

「グリーンウォッシュ(Greenwashing)」という言葉は、エコなイメージがある「グリーン」と、ごまかす・うわべを繕うという意味の「ホワイトウォッシュ」を掛け合わせた造語である。つまり、環境に配慮した取り組みに見えても、実際にはエコな施策ができていないことを指す。

この言葉ができたのは1986年だが、SDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりやESG(環境=Environment、社会=Social、ガバナンス=Governance)の観点を投資分析に取り入れる企業が増えていることから、再び注目を集めている。

グリーンウォッシュの7つの罪

カナダのマーケティング・エージェンシーTerrachoice社は、2010年に「グリーンウォッシュの罪」というレポートを発表した。このレポートによると、グリーンウォッシュは主に7つの手法で行われるという。

1. 隠れたトレードオフの罪
環境へのメリットを狭い範囲で主張し、他方でより大きな環境負荷がかかっている事実を公表しない。

2. 証拠なき罪
環境に良いとうたいながらその根拠を示さない。

3. あいまいさの罪
定義があいまいで、具体的な効果を示さない。

4. 偽りのラベルを表示する罪
あたかも第三者機関から評価を受けたように偽装する。

5. 無関係の罪
環境負荷とは直接関係がない、重要度が低いことでも、過度に伝える。

6. 誇大に強調する罪
ほかの商品やサービスとの比較を誇大に宣伝する。

7. 虚偽の罪
誤った情報を宣伝する。

グリーンウォッシュの主な事例

日本では2020年にレジ袋が有料化され、エコバッグを持つ人が増えた。それに伴い景品などでエコバッグを配る企業もあるが、過剰に供給されるとゴミが増える一因となる。素材によっては、マイクロプラスチックを生み出すことにもつながる。

また、プラスチック削減のために紙ストローを用いるファストフード店やコーヒーショップが増えているが、カップはプラスチックのままであるケースも散見される。紙ストローの分、プラスチック使用量は減るが、どれほど環境負荷軽減に貢献できているのだろうか。

紙ストローは原材料が二酸化炭素を吸収する植物であるため、プラスチック製に比べ温室効果ガスを約5割低減していると言われている。しかし、紙ストロー導入のきっかけとなった海洋ゴミの問題に目を向ければ、基本的な原因はポイ捨てにある。ゴミとして正しく処分すればどの素材を使っても問題はない。実際に世界的な大手ファストフードチェーン店では紙製ストローが導入されたが、厚すぎてリサイクルができず廃棄していたことが発覚し、グリーンウォッシュだとして非難された。

そのほかにも、衣料品メーカーH&Mがオーガニックコットンやリサイクルポリエステルを使用した製品を環境に優しいとうたって販売した。しかし具体的な根拠が示されなかったことやポリエステルのリサイクルの製造過程で大量の水を使用することなどが指摘され、意図しないグリーンウォッシュとされてしまった。また、アディダスはスニーカーの広告に50%リサイクルと表示したが、これもあいまいであると指摘を受け、表示を変更した。

意図せぬグリーンウォッシュをしないために

サステナブルやエコを意図的な虚偽でうたう企業はないだろう。しかし視野狭窄(しやきょうさく)に陥ってしまうと、環境に良いとして販売した製品が実は環境により大きな負荷を与えており、効果的ではない場合がある。エコ製品を作るなら、環境への影響がどれくらいあるのか具体的な数値をもって示す必要がある。

日本では指針が定められていないが、イギリスでは「グリーン・クレーム・コード」というガイドラインが制定されている。フランスでは消費者コードを改正し、グリーンウォッシュとみなされた場合は80%の罰金を科すとした。

海外の例ではあるが、日本の企業もこういった指針や、過去の事例を参考にすることで意図せぬグリーンウォッシュを防ぐことにつなげられるだろう。

せっかくの取り組みがマイナスにならないようにグリーンウォッシュには気を付けていきたい。