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自治体DXは進展しているのか?

掲載日:2023/09/12

自治体DXは進展しているのか?

2020年に総務省と関係省庁で支援施策などを取りまとめ、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」が策定された。「自治体情報システムの標準化・共通化」の目標時期は2025年度と目前に迫っている。自治体のDXは順調に進んでいるのだろうか。

自治体DXを推進する意義とは

地方自治体は全国に約1,700ある。その情報システムを標準化・共通化するという動きが本格化したのは2022年8月。対象業務20の標準仕様書がリリースされた。同年10月には、「地方公共団体情報システム標準化基本方針」が決定されている。

デジタル庁の「地方公共団体情報システム標準化基本方針の概要」によると、地方公共団体情報システムの統一・標準化の意義および目標として、以下の2点が掲げられている。

移行期間:「2025年度までに、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへの移行を目指す」
情報システムの運用経費等:「平成30年度(2018年度)比で少なくとも3割の軽減を目指す」

全国の自治体でシステム標準化の動きが進んだ理由は、従来の基幹系情報システムに問題が起きていたことにある。住民記録システムなどの情報システムは、事務処理の大半が法令で定められていたが、各自治体で利便性などを求めて機能のカスタマイズを行っていた。そのためシステム改修などの際に個別の対応を迫られ、各自治体の負担が増大していた。また情報システムの差異を調整する必要があり、クラウドへの移行が進まないなどの問題も生じていた。

自治体DXの導入によって、このような問題の解決が望まれている。

ガバメントクラウドとは

自治体DXの一つのキーとなるのがガバメントクラウドだ。これは、国の全ての中央省庁などの行政機関と地方自治体が、共同で情報システムをクラウドサービスとして利用できるようにするものだ。

ガバメントクラウドにシステムを集約させると、状況の変化により情報システムを変更する必要が出てきた際、柔軟・迅速な対応が可能になるほかクラウドサービスが提供する強固なセキュリティや可用性なども期待できる。また、各自治体でのサーバー導入・運用コストも削減が望める。

当初、ガバメントクラウド対象のクラウドサービスとして、AWS、Google Cloud、Microsoft Azure、Oracle Cloud Infrastructureが挙げられていたが、デジタル庁がクラウドの提供事業者の選定要件を緩和したことで国産クラウドの導入も期待されている。

各自治体の取り組み

自治体のDXはシステム標準化にとどまらず、各自治体で基幹システムに関わらないところでDX施策が行われている。

東京都

都内の市区町村でデジタル活用に優れた取り組みを表彰する「Tokyo区市町村DX賞」を創設。2022年に発表された各賞の1位は次のような点を評価されている。

実装部門(区・中核市、市・中核市を除く、町村で各1)
港区:スマートフォン、タブレット、Webサイトで利用できる、子育て支援アプリ「みなと母子手帳アプリ」を導入。

町田市:メタバースを活用し、市民向けポータルサイトや職員採用PR動画を制作。アバターとAI音声を活用した公開型のオンライン会議「町田市デジタル化推進委員会」など、「みんなにやさしい」行政DXを行った。

利島村:人口300人の離島で、島内各世帯にタブレットを無償配布。防災や暮らし、交流に係る情報を配信することで、住民サービスの向上を図っている。

アイデア部門
板橋区:デジタル地域通貨「いたばしPay」を板橋区商店街振興組合連合会が実施した。板橋区内限定で利用できる、スマートフォンのキャッシュレス決済。

広島県

市町と連携し、「DXShip(デジシップ)ひろしま」と名付けた行政DXの取り組みを行う。中国地方ではデジタル人材が不足しているため、県が一括で採用し、DX人材を県職員として市町に派遣するほか、システム最適化などの情報を共有する。

福岡県直方市

住民基本台帳のデータとGIS(地理情報システム)を用いた位置情報をひも付けた「住基ポイントデータ」で、市民約2万7,000人の居住場所を地図上で把握できるようにした。災害時の避難支援のほか、空き家調査など幅広く業務に活用が可能。

島根県益田市

「書かない 行かない まわらない」をコンセプトに、利用者に書類を書かせない取り組みを2024年1月に導入する。窓口で職員が名前や住所を聞いて入力するほか、スマートフォンの専用アプリで住民票などを交付申請可能にする予定だ。

さまざまな企業の参入も

自治体のDXといっても、自治だけで進めることは難しい。ソフトバンク社は100以上の自治体のDXを支援している。コニカミノルタ系列は自治体の業務1万件を可視化させた。また、西日本とマイクロソフト社は、協業で自治体のDXやクラウドサービスの支援を行うことを2023年5月に発表した。

人材不足でDXが遅れている自治体も少なくないため、IT企業にとっては商機であると言われている。まだまだ参入できる企業は限られているが、支援を必要とする自治体は数多く存在するため、そこを見極めビジネスにつなげていきたい。